閉鎖病棟
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閉鎖病棟(へいさびょうとう)とは、精神科病院で、病棟の出入り口が常時施錠され、病院職員に解錠を依頼しない限り、入院患者や面会者が自由に出入りできないという構造を有する病棟である。
開放病棟でない病棟という意味では、病棟の出入り口が施錠されない時間がおおむね8時間未満、または自由に出入りできない病棟も閉鎖病棟とされることがある。
対象とされる患者
閉鎖病棟への入院患者は、原則として精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく措置入院や医療保護入院などにより、強制的な入院形態で入院するものとされている。このため、任意入院の患者は、原則として開放病棟に入室するものとされている。ただ、訪問者に対して不安が強い場合などで特に希望の書面を差し入れた場合は任意入院でも閉鎖病棟への入院が可能である。また、病床数が少ない総合病院の精神科の場合は閉鎖病棟しかないこともあり、その場合は予め患者の同意を得た上で入室することとなる。
閉鎖病棟の入院患者の外出は病院や病棟によりさまざまである。患者に個別に単独での外出を認める病院は、病状が安定しつつある患者に対してであっても少ない。外出中に事故が生じた場合に責任追及されることを恐れて一切認めないとしているところがほとんどである。一時外出の際に事件を起こすこともあり、また、家族同伴での外出の場合は「自分をこんな場所に入院させた家族」に対しての怒りを外出時に露わにすることもあるため、病院にとっても、外出の受け皿となる家族にとっても、任意入院ではない閉鎖病棟の患者の「外出」には慎重にならざるを得ないのが現状である。
その他の問題として、病院内の規則はすべて公立、私立問わず病院の裁量で決められており、なかには、閉鎖病棟の入院患者、またはその家族から、「患者の所持金を預かる金庫代、または「口座管理費」として1日数千円以上を患者や家族に請求するなど、法外かつ、患者にとっても理不尽な規則が多く存在する病院もある。これらの問題について、病院と患者は、在監者と同様、特別権力関係に立つとする立場を取る自治体、病院も多い。
患者が自らの環境の改善を訴えることでさらに、「まだ病院に慣れていないようだ」、「まだ落ち着いていないようだ」、「反抗的だ」と医師に判断されてしまうこともあり、健康で文化的な最低限の生活を送れないようなケースもあるが、そのような場合、行政書士、弁護士などに、法的な面で病院の環境に瑕疵がないかなど判断を仰ぐことも効果的である。
精神科入院患者に対する行動制限の一つとして「隔離」がある。隔離とは厚生省告示第129号の定義により「内側から患者本人の意思によっては出ることができない部屋の中へ一人だけ入室させることにより当該患者を他の患者から遮断する行動の制限をいい、12時間を超えるものに限る。」と定められている。隔離の対象となる患者は、主として次のような場合に該当すると認められる患者であり、隔離以外によい代替方法がない場合において行われるものとする。
ア 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合
イ 自殺企図又は自傷行為が切迫している場合
ウ 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合
エ 急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合
オ 身体的合併症を有する患者について、検査及び処置等のため、隔離が必要な場合
隔離は精神保健指定医しか行うことができないと定められており、(12時間を超えない場合は一般の医師でも可能である)あくまで患者の保護や医療を保証するために行うやむを得ない制限であり、制裁や懲罰的に行われることは認められていない。
精神科病棟には保護室(または隔離室)と呼ばれる個室がある。保護室は内側にドアノブのない出入口、ベッド、便器といった簡単な構造である。患者がトイレを詰まらせることのないよう水を流すレバーやボタンは保護室外側の前室にあるか、外側からのスイッチ操作で保護室内部から流せられなくする設定にできるところもある。また保護室の外側には観察室があり、複数の保護室を外側からガラスや鉄格子越しに患者を観察できるようになっている。また観察室から食事トレイを入れることができる小さな窓が備えてある。
保護室に入室した患者に対しては医師は少なくとも1日1回の診察が求められ、定期的な観察も必要である。 また保護室に入院している患者であっても信書の発受の制限・入院処遇に対して不服を訴える機関(都道府県の精神医療審査会など)や人権擁護に関する職員(弁護士など)との電話や面会を制限することはできないことになっている。
反精神医学では、閉鎖病棟の必要性を認めず、閉鎖病棟の存在が精神病者を生み出すとされる。
ドイツでの15年にわたる約35万人の自然観察研究では、自殺企図や失踪に対する閉鎖病棟への隔離は、自殺や失踪のリスクが増加しなった開放病棟と比較して、それらを防止することができなかった。
呼称をめぐって
- 三宅[2013:118-138]
- Huber, Christian G; Schneeberger, Andres R; Kowalinski, Eva; et al. (2016). “Suicide risk and absconding in psychiatric hospitals with and without open door policies: a 15 year, observational study”. The Lancet Psychiatry 3 (9): 842–849. doi:10.1016/S2215-0366(16)30168-7. PMID 27477886.