最終更新日 2006年12月26日

まずフィーリングの前に、ボールの硬さと、飛びに影響するスピン量の関係を見てみましょう。ドライバーなどロフト(クラブフェースの傾き度合いを表す角度で、球の打ち出し角を決める)が少ないクラブの場合、軟らかいボールの方が余計なスピンが減り飛びに有利となります。軟らかい方がスピンが増えると思われる方が多いと思いますが、実は逆で、軟らかいボールの方がインパクト時の“クラブとの接触時間”が長いからなんです。インパクトの瞬間は約1万分の5秒。その僅かな間に、ボールは「ぐにゃ」と変形したあと元の形に復元して飛ぶ。インパクトの間、ボールはクラブのロフトによって、バックスピンが掛かる方向にねじれが加えられ、インパクト最中のある時点から逆にねじれを戻そうとする力が働くことが分かっています(リコイル現象)。下のグラフを見てもらうと分かると思いますが、赤い点線と青い点線を比べると、初期スピンが全然違う。理由はボールの外側にねじれが生じると、中側はある瞬間から元に戻ろうとする、“ねじり戻し”の現象が起きるからです。例えると、人間の腕を「ギュッ」とねじると中側までねじれないですよね。「痛い」と感じたところで止まり、中側が元に戻ろうとする。それと同じことがボールにも起きる。つまりインパクトの終了を遅らせてあげた方が、ねじり戻しが多くなり、球離れ時点のスピン量は減る。つまり“接触時間の長い軟らかいボールの方がスピンが減る”ということ。ただしこのリコイル現象は、ドライバーなど低ロフトのクラブによるショット時に影響が大きく、ウェッジなど高ロフトのクラブによるショットでは、ボール表面とクラブフェースの摩擦によりスピン量が決まるので、注意が必要です。
「硬いボールがほしい」、「軟らかいボールほしい」と思ったとしますよね。その選択基準で大事なのが“アプローチでの打感なのか、ドライバーでの打感なのか”という点です。第3話でもお話したようにドライバーショットの場合、ボールはコアまで変形します。一方、アプローチやパッティングではカバーやミッド部分までしか変形しない。だから、コアまでつぶれているドライバーショットで感じる「硬さ」というのは「ボール全体の硬さ」になる。一方、アプローチやパッティングでは「カバー・ミッドの硬さ」を感じているということです。例えば「ディスタンス系」の場合、コントロール系に比べてカバーが硬くなっているので、アプローチショットでは硬く感じ、コアまで変形するドライバーでは柔らかく感じる。一方、コントロール系はディスタンス系に比べてカバー・ミッドが軟らかいので、アプローチでは柔らかく感じる。つまり「硬い、軟らかい」というフィーリングはドライバーショットとアプローチでも違うんですよ。
ボールの硬さの指標のひとつとして以前からあるのが、コンプレッションという数値です。硬めのコンプレッション100を黒。90が赤色、80は青といった数値はボールにある負荷を掛けて押しつぶし、その変形の度合いに応じて決めています。つまり止まった状態のボールの「静的な硬さ」にすぎません。また様々な素材・構造の組み合わせが可能となった現在のボールでは、コンプレッションという指標では、フィーリングを表すのに限界にきています。例えば、先ほどお話したコントロール系はアプローチではディスタンス系より軟らかく感じますが、コンプレッションの数値的にはディスタンス系よりも総じて硬めなボールが多い。フィーリングをデジタルに解析すると「衝撃力」、「接触時間」、「接触面積」の組み合わせになります。衝撃力が大きければ硬く感じる。小さければ軟らかく感じる。接触時間は「フィーリングを感じ取れる時間」なので、長ければ「くっつく感じ」、短かければ「弾く感じ」になります。あとは「フェースとボールがどれくらいの面積で接触しているか」という接触面積。それが大きければ一般的に重く感じ、小さければ軽く感じる。それらはひとによっても感じ方が違います。例えば、弾く感じを「硬い」と表現する方もいるでしょうから。また、打球音によってもフィーリングは左右されますね。
今回で最後になるのですが、アドバイスをひとつ。アマチュアのひとほどボールを選んだ方が得だと知ってください。初心者の方は「ボールの違いがわからないから安いもので十分」と思うかもしれません。ですが、ボールの性能・打感の違いを選べるのは“ゴルフの楽しさ”のひとつです。ボールを選べるスポーツは、ゴルフとボウリングぐらい。「弘法筆を選ばず」ではないですが、プロは打ち方を変えることでどんなボールでも使い分けすることが出来ますが、アマチュアの場合打ち方とマッチしていないボールを使うことで、ドライバーの場合約15ヤードくらい飛距離をロスすることもあります。だから、クラブを変える前にボールを変えることで、自分のスイングやクラブ本来の性能をより生かすことができる可能性があることを是非知ってほしいと思います。
 「リコイル現象」を表すグラフ。インパクトの開始から終了までの間(約1万分の5秒)にスピン量はいったん増え、その後減少する。それだけインパクト時は「どのタイミングで球離れさせるか」によって球離れ時点のスピン量が変わる。「赤の点線」と「青の点線」を比較した場合、青の方がスピン量が少ない。つまりボールとクラブの接触時間が長いほどスピン量が減らせる。よって軟らかいボールほど「低スピン」になる。 
平野 敦嗣
SRIスポーツ(株)ゴルフ営業部 販促・宣伝担当
1999年から2002年までダンロップゴルフボールの販売企画に携わり、その後「もっとエンドユーザーの方にゴルフボールの魅力を広めたい」との理由から2003年“ボールのソムリエ"として店頭販売の仕事に就く。

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