お知らせ

兼城副院長のコラム

2016.06.27

疥癬(かいせん)について

皆さん、こんにちは、季節の移り変わりは早いもので、桜もあっという間に終わり、ハナミズキやつつじ、藤の花と花が美しい時期も済んで、新緑がまぶしい初夏の季節になりましたが、皆様には、お変わりなくお過ごしでしょうか。災害は忘れた頃にやってくるとよく言われますが、5年前の東北大震災の記憶もまだ覚めやらないうちに、またまた、震度7という、とてつもなく大きな地震が立てつづけに発生して、1000回以上も超える余震の発生が熊本地方の人々を不安に落としいれています。科学の発達した現代でも、地震の予知がまったく出来ないもどかしさを感じている今日この頃です。幸いにも、我々のいる各務原地区は、災害の少ない地域だと常づね感じていますが、まったく油断のならないものですので、常に、防災を心がけて過ごしていきたいものです。さらに、一日も早い熊本の地震からの復興を願ってやみません。さて、今回は、当老健施設で経験した疥癬という皮膚疾患とそれにまつわる最近の話題についてお話したいと思います。
疥癬は、ヒゼンダニと呼ばれるダニが皮膚の表面の角質層に寄生して起こる皮膚疾患です。ヒゼンダニは、体長0.2~0.4㎜の小さなダニで、肉眼ではほとんど確認できず、雌成虫は皮膚の角質層内に潜り込んで長さ数ミリの坑道(疥癬トンネル)をつくり、その内で産卵して、2週間ほどで成虫になります。疥癬は肌と肌が直接触れることで起こる感染症です。近年、高齢者の施設内で、介護行為を介して感染し、集団発生することもあるため、注意が必要です。
疥癬の症状は、手や体幹の皮膚の発疹(皮疹)で、かゆみが強く、夜間に増強するのが特徴です。顕微鏡や拡大鏡を用いた検査でヒゼンダニの虫体や卵が見つかれば診断は確定です。この疥癬の治療には、ストロメクトール(イベルメクチン)と言う薬が使われ、とても有効です。このイベルメクチンを発見した人が、昨年12月にノーベル生理学、医学賞を受賞された北里大学特別栄誉教授の大村 智先生です。このイベルメクチンと言う薬は、疥癬だけでなく、沖縄県のような亜熱帯地方にみられる糞線虫症やフィラリア症(象皮症を起こす)にも有効で、とくに、アフリカの風土病といわれるオンコセルカ症(河川盲目症)の特効薬にもなっていて、3億人ものアフリカ人の失明の危機を救っていると言われていて、このイベルメクチンの発見が、ノーベル賞受賞の理由になっているのです。その大村先生の研究における苦労話や人となりを知るにつけて、自分が子供の頃に読んで感動した野口英世物語(アフリカの黄熱病の研究に一生を捧げた野口英世の子供の頃の話)と重なって、人知れず、人のために、努力している、とても謙虚な、すばらしい日本人が居ることに、久しぶりに感動を覚えています。あらためて、医学、医療は、患者に始まり、患者とともにあり、患者に終わると言う名言を思い出して、常日頃の自分の戒めにしたいと考えています。

偽膜性大腸炎について

皆さん、こんにちは、またまた暑い季節がやってきました。
暑くなると心配になるのが熱中症やノロウイルスによる胃腸炎の院内感染などです。最近では、お隣の韓国で発生している死亡率の高いMERS(中東呼吸器症候群)というコロナウイルスによる感染症(肺炎)がとても心配です。幸いにも、日本での発生の報告は、まだまだありませんが、数年以上も前に、起きた新型インフルエンザの時の厳重な対応を忘れず、油断のないようにしたいものです。
また、我々をとりまく政治(国会)の場でも、安全保障法制における憲法解釈の不一致など、武力を使わないで済む、絶対に戦争を起こさせない、歴史を繰り返さない法案づくりにエネルギーを費やしてほしいものです。
さて、今回は、正接で発生する下痢症の中の、偽膜性大腸炎について簡単にお話ししたいと思います。
偽膜性大腸炎は、抗生物質を長期間投与された場合に、大腸内の細菌叢の変化(菌交代現象)が起こり、クロストリジウム・デイフィシルという芽胞をもった菌(嫌気性グラム陽性桿)が異常増殖することにより、大腸粘膜が、傷害されて起こります。この菌は、健康な人の便からも検出されますが、とくにセフェム系抗生剤やリンコマイシン系抗生剤を投与され菌交代現象が起きた高齢者や基礎疾患を有する方に多く見られます。
受けた後に発生する下痢症状などが長く続いた場合には、偽膜性腸炎を疑うことが大切です。偽膜性大腸炎の原因となるディフィシル菌は、トキシンAとトキシンBという二つの毒素を産生することが知られていて、このトキシンが細胞障害や下痢を引き起こします。
偽膜性大腸炎の診断ですが、この毒素(トキシン)の検出や便の培養によるデイフィシル菌の確認などが有用です。大腸の内視鏡検査でも粘膜に偽膜(黄白色調の半球状の隆起、白っぽいふわふわしたもの)という見られる特徴な所見もあり診断は容易です。次に、偽膜性大腸炎の治療についてお話します。まず、原因となった可能性のある抗生剤があれば、中止することで症状は軽快しますが、改善がない場合には、メトロニダゾールやバンコマイシンなどの抗生剤の投与が一般的です。
つぎに予防法についてですが、偽膜性腸炎の原因となるディフィシル菌は芽胞を持つため、アルコールでは全く消毒されません。よって通常の消毒薬ではなく、殺菌力の強いグルタールアルデヒドうあ塩素系の薬剤を使って消毒することが大切です。長期施設入所者での発生は、院内感染の感染源ともなりえますので、施設内環境の清掃や消毒、介護職員の糞便の処置での、デイスポの手袋による清潔管理や手洗いの迎行がディフィシル菌感染予防にはとても重要になります。

兼城 賢明


経歴:
経歴:
名古屋大学医学部卒
高山久美愛病院
東海中央病院 内科部長
東海中央病院 副院長

資格:
日本内科学会認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医