ザ・ゲインズボロ・

バース・スパ

The Gainsborough Bath Spa

世界遺産の街で、いい湯だな。

マレーシアを中心に世界7か国にラグジュアリーリゾートを所有するYTLホテルズが、世界遺産登録都市、英国バースに天然温泉施設を備えた英国初のクラシックホテルを開業。英国唯一の温泉地・バースに現れた新ホテルの魅力とは。

ナビゲーター(文と写真)・Ciel

Navigator: Ciel

イラストレーション・いとう瞳

Illustrations by Hitomi Itou

その都市で最も素敵なホテルを探す――今の時代、そんなことは簡単だ。まずは、料金が高いホテルから順に調べ、次にトリップアドバイザーの順位を見ていけば、ある程度「泊まりたい」と思うホテルは絞られてくる。よって、初めて行く都市で、たとえその地域の知識がなくとも、どのホテルに滞在したらベストなのかは容易に想像がつくし、実際に滞在しても“外す”ことは滅多になく、素敵なホテルに巡り合えていると思う。

 けれども最近は、「素敵なホテル」というだけでは、また次に訪れようという決定打にはならない。それは、それなりの金額のするホテルであれば、そもそも素敵で当然だと思っているから。だから、それ以外の「お! やるな」というプラスアルファや、「あっ」というサプライズが欲しい。

 気に入っているホテルには何度も訪れたいから、私にとって“価格に見合っているか”ということは大切であり、だからこそもし価格以上の満足感を得られた時は、とっても嬉しくてみんなにおすすめしたくなる。それはホテルに限らず、モノだってレストランだって同じこと。

 最近訪れた中で感銘を受けたホテルは、コストパフォーマンスの高さが際立ったイギリス・バースにある『ザ・ゲインズボロ・バース・スパ』だ。ロンドンから列車で約1時間半、イングランド西部に位置するバースは、街全体が世界遺産に登録されたイギリスでも有数の観光地で、「エレガントシティ」とも呼ばれる美しい街。また、お風呂の“bath”という言葉の由来にもなったといわれ、スパ好きなら一度は訪れておきたい場所である。

天然温泉施設を備えたイングランドで唯一の宿泊施設『ザ・ゲインズボロ・バース・スパ』は、2015年秋、この地にオープンした。3つの歴史的建築物から成り立ち、グレードⅡ(英国保護登録建築物。1から3までのランクでグレード1は日本の国宝建築に相当)に認定されたジョージ王朝風の外観だけではなく、ロンドンの『ドーチェスター』やニューヨークの『ザ・カーライル』を手掛けたデザインチームによる内装も美しく、歴史的な趣を感じさせつつも現代的でシックなデザインが絶妙に絡み合っていた。

古代ローマの公共浴場をモチーフに、自然光が注ぐアトリウムに3タイプの天然温泉プールを配置したホテル内のスパ施設『スパ・ヴィレッジ・バース』は、総面積約1300㎡を誇る。宿泊者はいつでも自由に利用できるが、トリートメントを受ける前には、特に効果が引き出されるようにと、地域に基づく“バース風”とブランドのルーツである“マレーシア風”が融合されたホテル独自の温泉入浴法のレクチャーを受け、体を温めて施術に臨む。

 今回私は、代表的なトリートメントである「マグネシウム・ラップ」を体験した。実は、普段スパでは、特別におすすめされない限りはラップやスクラブは受けない。理由は、ラップをされている時は、特にその場で気持ちよさを得られないから。だったら、その分の時間を大好きなマッサージに費やしたほうがいいじゃない、という短絡的な考えを持っていた。ところが今回のトリートメントでは、身体のむくみの原因となる余分な水分が排出されただけでなく、メタボリックバランスも回復し、単なるボディマッサージだけでは得られないデトックス効果を初めて実感した。これは「ラップ」そのものの効果に加えて、オリジナルの温泉療法などとの相乗効果によって生まれたものだと思う。

 イギリスの中でもロンドンはズバ抜けてホテルの価格が高い。確かに素敵なホテルはたくさんあるけれど、ハード面・ソフト面共に価格に見合う、心から満足できるホテルに出合えるかといえば、なかなか難しい。

一方でロンドンから鉄道で約90分、バースまで足を延ばすと、駅から徒歩5分という立地に街随一のラグジュアリーホテル『ザ・ゲインズボロ・バース・スパ』が佇んでいる。こんなに気軽にアクセスが可能なうえに、ロンドンの相場の半分ほどで世界遺産の街並みも、スパ&温泉も堪能できるホテルがあるなんて! ロンドンを訪れたら、バースにデトックスの旅へ――これからはこれが定番化しそうだ。

 3年前、ウィンブルドンのマナーハウスに滞在していた時のこと。朝食メニューを眺めていると、Omelette、Eggs Benedict、Pancake――と定番メニューの後に「Kipper」という文字を発見。「キッパー?」……尋ねてみるとニシンの燻製で、イギリスの代表的な朝食のひとつらしい。早速オーダーしてみると、ホッケの干物のような1尾の中型のお魚が運ばれてきた。まるでそこだけ、日本の朝の和定食か? という姿にテンションが上がったところで、合わせる主食はライスではなくパンというオチ。もちろんお味噌汁もなければ、お箸もなし。なんだか裏切られた気分になりながらもいただいてみると、これが意外にも美味しい! 以来、気に入って、キッパーの文字を見つけるたびに注文をしていた。

 そして今回、このホテルの朝食でもキッパーを発見。ひとかたまりのバターが添えられたキッパーは、身がふっくらと軟らかくて、溶けだすバターとの相性も最高。今までで一番美味しいキッパーに出合いました。でもやっぱり日本人としては、キッパーのお供は、パンではなく、ご飯がいいよな~。

Ciel(シエル)|livedoor公式ブロガー。海外旅行カテゴリでのランキング1位を誇る人気ブログ「月に一度の世界スパ&ホテル巡り」を運営。世界のラグジュアリーホテルを趣味で巡る。いままでに46か国以上を訪問。国際線の年間搭乗回数は50を超える。2015年1月に個人のメディアとして初めて、フランスルポルタージュ大賞を受賞。同年7月に初の旅行記『月に一度の世界スパ&ホテル巡り』(KADOKAWA)を出版。

2016.09.12