2012-11-13 18:47:05
【質問】いつも大変参考にさせて頂いてます。今日の記事に関連して伺いたいのですが、父がステージ4の再発大腸がんで、xelox+アバスチン療法を6ケ月以上しています。最近、手足のしびれがひどいようで、休薬した場合のリスクと中止した場合、次の療法はどんなものが残っていますか?
阪神の桜
【回答】
FOLFIRI療法、KRAS遺伝子野生型では抗EGFR抗体薬が使える。しかしまず、TTP (time to progression)とTTF (time to treatment failure)は区別すべき
【解説】
TTPは無増悪生存期間と訳され、治療開始して(注: 本当は無作為化からだが)腫瘍が増悪するまでの期間を指します。
TTF(治療成功期間)は似ているようですが、腫瘍増悪だけでなく、治療毒性による中止も含みます。
通常抗がん剤の臨床試験ではTTPが一つの評価項目としてよく使われますが、TTFは何のためにあるのでしょうか?
専門用語を使った解説で申しわけありませんが、以下にかみ砕いた説明に切り替えます。
抗がん剤は副作用で中止となるケースは珍しくありませんが、治療を止めたからと言ってすぐに腫瘍が増殖するとは限りません。
副作用の強い治療ほどTTPとTTFが乖離してもおかしくないと思いますが、消化器がん領域では大腸がんに対するXELOX, FOLFOX療法は(どちらもオキサリプラチン、商品名エルプラットを併用)その傾向が顕著だと思います。
今では分子標的薬のベバシズマブ、商品名アバスチンを併用する事が多いのですが、エルプラットは総投与量が増えるにつれて増悪する有痛性神経障害や6~7回目投与で出現しやすいアレルギー反応でずっと継続出来る人はそれほど多くはありません。
その場合XELOXではゼローダ、FOLFOXでは5FU+アイソボリンで治療を継続することが多いです。
エルプラット無しとなると抗腫瘍効果が不足するように思えますが、意外と腫瘍増殖を抑制し続けることができます。
特にアバスチンを併用しているときはその傾向が強いです。
XELOX, FOLFOX療法は初期の腫瘍縮小効果が非常に強く、その効果は最初の3ヶ月以内に発揮されやすいようです。
実際施設によっては副作用を懸念して全例エルプラットを6回目までの投与で中止している所もあります。
またエルプラット無しで6ヶ月治療を継続し、その後に再導入すると有痛性神経障害の頻度を抑えられるという臨床試験も報告されています(Stop and Go戦略という)。
大腸癌も肝転移だけなら、当初切除不能でも抗がん剤治療で切除可能まで腫瘍縮小効果が得られる場合もありますが、多くの場合手術不能のまま、がんとの共存をはかる治療戦略を選ばざるを得ないのが現状です。
となると抗がん剤による副作用でQOLが低下するのは極力避けるべきで、特に後遺症として残りやすいエルプラットの神経障害は早めに主治医に伝えて、減量中止を検討してもらった方が良いと考えられます。
なぜなら患者さん本人しかその切実度はわからず、中止タイミングが遅れると本人があとあと非常に苦しむからです。ひどい場合は回復に数年以上かかります。
あと一歩で治癒切除出来るのなら、多少がんばるケースもあるでしょうが、癌の圧迫症状で苦しんでいるのでない限り、QOLを犠牲にしてまで癌を縮小させることに執着しない方がいいでしょう。
大きくならなければ癌による症状は悪化しませんし、命に関わらないので、判定勝ちとしてもいいと思います。
ゼローダ+アバスチン療法だけでも腫瘍増大抑制はそれなりの期間期待出来ることも多いですが、再増大を来した場合はFOLFIRI療法、大腸癌KRAS遺伝子が野生型であればアービタックスやベクティビックスなどの抗EGFR抗体薬が残っています。
大腸癌は昔と違い長期生存が望めるほど薬物療法が発展しましたが、その分先を見越して、体力低下とQOL低下を来さないような長期戦略の視点が必要となってきています。
こういった治療原理もしっかり学習することがこれからの患者さんには必須だと思います。
阪神の桜
【回答】
FOLFIRI療法、KRAS遺伝子野生型では抗EGFR抗体薬が使える。しかしまず、TTP (time to progression)とTTF (time to treatment failure)は区別すべき
【解説】
TTPは無増悪生存期間と訳され、治療開始して(注: 本当は無作為化からだが)腫瘍が増悪するまでの期間を指します。
TTF(治療成功期間)は似ているようですが、腫瘍増悪だけでなく、治療毒性による中止も含みます。
通常抗がん剤の臨床試験ではTTPが一つの評価項目としてよく使われますが、TTFは何のためにあるのでしょうか?
専門用語を使った解説で申しわけありませんが、以下にかみ砕いた説明に切り替えます。
抗がん剤は副作用で中止となるケースは珍しくありませんが、治療を止めたからと言ってすぐに腫瘍が増殖するとは限りません。
副作用の強い治療ほどTTPとTTFが乖離してもおかしくないと思いますが、消化器がん領域では大腸がんに対するXELOX, FOLFOX療法は(どちらもオキサリプラチン、商品名エルプラットを併用)その傾向が顕著だと思います。
今では分子標的薬のベバシズマブ、商品名アバスチンを併用する事が多いのですが、エルプラットは総投与量が増えるにつれて増悪する有痛性神経障害や6~7回目投与で出現しやすいアレルギー反応でずっと継続出来る人はそれほど多くはありません。
その場合XELOXではゼローダ、FOLFOXでは5FU+アイソボリンで治療を継続することが多いです。
エルプラット無しとなると抗腫瘍効果が不足するように思えますが、意外と腫瘍増殖を抑制し続けることができます。
特にアバスチンを併用しているときはその傾向が強いです。
XELOX, FOLFOX療法は初期の腫瘍縮小効果が非常に強く、その効果は最初の3ヶ月以内に発揮されやすいようです。
実際施設によっては副作用を懸念して全例エルプラットを6回目までの投与で中止している所もあります。
またエルプラット無しで6ヶ月治療を継続し、その後に再導入すると有痛性神経障害の頻度を抑えられるという臨床試験も報告されています(Stop and Go戦略という)。
大腸癌も肝転移だけなら、当初切除不能でも抗がん剤治療で切除可能まで腫瘍縮小効果が得られる場合もありますが、多くの場合手術不能のまま、がんとの共存をはかる治療戦略を選ばざるを得ないのが現状です。
となると抗がん剤による副作用でQOLが低下するのは極力避けるべきで、特に後遺症として残りやすいエルプラットの神経障害は早めに主治医に伝えて、減量中止を検討してもらった方が良いと考えられます。
なぜなら患者さん本人しかその切実度はわからず、中止タイミングが遅れると本人があとあと非常に苦しむからです。ひどい場合は回復に数年以上かかります。
あと一歩で治癒切除出来るのなら、多少がんばるケースもあるでしょうが、癌の圧迫症状で苦しんでいるのでない限り、QOLを犠牲にしてまで癌を縮小させることに執着しない方がいいでしょう。
大きくならなければ癌による症状は悪化しませんし、命に関わらないので、判定勝ちとしてもいいと思います。
ゼローダ+アバスチン療法だけでも腫瘍増大抑制はそれなりの期間期待出来ることも多いですが、再増大を来した場合はFOLFIRI療法、大腸癌KRAS遺伝子が野生型であればアービタックスやベクティビックスなどの抗EGFR抗体薬が残っています。
大腸癌は昔と違い長期生存が望めるほど薬物療法が発展しましたが、その分先を見越して、体力低下とQOL低下を来さないような長期戦略の視点が必要となってきています。
こういった治療原理もしっかり学習することがこれからの患者さんには必須だと思います。
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コメント
2 ■便乗質問ですみません
今まで、23回のFolFoxとアバスチンの治療を受けました。
期間は16か月に渡っています。
途中、腸閉塞で4か月治療をしていない期間があります。
先月のCT検査でポートの管の周りに血栓が認められ血栓の治療を終えてポートを抜去しました。
これにより、治療がアービタックスとXELOXに変わりました。
はっきり言って足の痺れはかなりありますが辛いとは思っていません。
冷たさや熱さも痛いと感じますが辛くはありません。
色々なところで痺れを侮ることなかれ、との記事を見ます。
我慢してるつもりではありませんが、この位の副作用あって当たり前じゃないかと思うのです。
知らず知らずのうちにやせ我慢してるんでしょうか。
それと、私は重度の腸閉塞で手術を繰り返し短腸症となっています。
残す治療はイリノテカンだけじゃないかと思うのですが、短腸症の私には使えない可能性が高いと言われています。
今回のXELOX療法を出来るだけ長く長く続けたいと思ってはいますが、もう他には治療法はないのでしょうか。
もう治療できないと言われる日を覚悟はしています。
1 ■ありがとうございました
sho先生、詳細なご説明ありがとうございました!
少し説明不足でしたけど、一度手術し、UFT+LV+アバスチンの抗がん材後、二度目の手術後のXELOX療法だったので、次の手はそんなにないのではと思っていただけに少し安堵しました。また、TTP>TTFということなら、一度、エルプラット減量できないか、主治医に相談してみます。ありがとうございました。
3 ■Re:便乗質問ですみません
>QPmamaさん
一言しびれと言っても、内容はさまざまで、また切実度もずいぶん個人差があります。しびれがあってもつらくないのなら、それはそれでかまわないと思います。
ただ機能障害まで来すとQOLと予後に直結しますので、無理はしすぎない方が良いと思います。
短腸症ではイリノテカンは使えないと言うより、そういう患者さんでの使用例の報告が少なくて、安全性が担保出来ないと言う意味ではないかと思います。後日また記事で回答します。