犬猫の花粉症(アトピー)
犬猫の花粉症(アトピー)の概要
アトピー
花粉症とは、花粉の吸入によって起こるアレルギー性の病気で、花粉の飛ぶシーズンだけ症状が現われ、治すことはできなくても症状を防ぐことはできる病気です。人と同様に、犬と猫とニホンザルなどにも花粉症があり、最も代表的な花粉症はスギ花粉症です。人では花粉症の約80%がスギ花粉症です。日本特有の病気で外国ではまず見ることがないのは、日本以外の国にスギはほとんど生えていないからです。それぞれの地域に生育する植物により、花粉症の原因は違ってきます。人間の4大症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみですが、犬の花粉症では人と異なり、鼻炎・くしゃみなどの呼吸器症状の発生はあまりなく、アトピー性皮膚炎症状が見られます。1995年に犬のスギ花粉症の存在が確認され、アトピー性皮膚炎の犬の10~20%程度がスギ花粉アレルギーに感作されていると推測されています。猫においては、最近になってスギ花粉症が発見されました。くしゃみ・鼻水といった症状を示し症状がより人間に似ており、アトピー性皮膚炎症状(掻痒感・自己誘発性脱毛・好酸球性プラーク・粟粒性皮膚炎)も見られます。またスギ花粉症のニホンザルでは、人間と同じ症状が見られます。
スギとヒノキ(アスナロ・サワラ・コノテガシワ・カタヒバなどのヒノキ科も含む)は1つの花粉症と考えられています(抗原交差性)。スギ花粉症の犬でも、ヒノキアレルゲンに強く反応し、ヒノキも重要なアレルゲンであることが分かっています。花粉飛散時期は、スギでは2月上旬~4月下旬、ヒノキでは3月中旬~5月下旬です。
イネ科花粉症は、スギ花粉症の次に重要です。代表的なものは、カモガヤ・オオアワガエリ(チモシー)・イタリアンライグラス・ホソムギ・ギュウギシバなどのイネ科植物です。日本のアトピー犬は、イネ科花粉アレルゲンに感作されているそうです。同じイネ科であれば抗原交差性が強いので、1つのイネ科花粉に感作されると他のイネ科花粉でも発症する可能性があります。花粉飛散時期は、5月~10月(5月~7月・8月下旬~9月上旬)です。キク科のブタクサとオオブタクサも、イネ科に次ぐ重要な原因植物です。世界的に犬のアトピー性皮膚炎が認識され始めたのは、米国のブタクサ花粉症犬の発見がきっかけです。日本のアトピー犬もブタクサ花粉アレルゲンに感作されています。ブタクサと共通抗原をもっているものは、セイタカアワダチソウ・ヨモギ・キクなどのキク科植物です。花粉飛散時期は、8月~11月(9月上旬)です。
またシラカバとハンノキとオオバヤシャブシの花粉症は、カバノキ科花粉症と総称されています。シラカバ花粉症は、今では北海道で最も重要な人の花粉症になっています。4月に開花し5月に飛散の最盛期になります。北海道の犬も、感作されている可能性が高いです。カバノキ科花粉症の特徴として、バラ科果実(リンゴ・ナシ・モモ・イチゴ・サクランボ・ビワ・梅など)を主とした果物(野菜)過敏症がみられます。この花粉症と果物過敏症の合併は、口腔アレルギー症候群といわれ、ある特定の果物や野菜を食べることで、口腔・咽頭粘膜の過敏症状(痒み・刺激感・浮腫など)がおきることです。食物と花粉との間に共通する抗原があると考えられています。犬のスギ花粉症において口腔アレルギー症候群を発症した報告があるので、アトピー犬に果物や野菜を与える時は、注意する必要があります。
犬猫の花粉症(アトピー)の症状
| 症状 | |
|---|---|
| くしゃみ・鼻汁・ 咳鼻腔狭窄音 | アレルギー性鼻炎・気管支炎発症することはあまりない(5%以下) |
| 顔面 | 顔の掻きむしり・掻痒感(猫→頭部・眼周囲・頚部・耳の前方部 脱毛・紅斑・表皮剥離) |
| 結膜炎・眼瞼炎 | 漿液性あるいは粘液性眼漏(両側性)眼周囲の脱毛(パンダ様脱毛)・色素沈着 |
| 外耳炎 | 発赤・浮腫(猫はまれ) |
| 鼻吻・口唇 | 脱毛・紅斑・ビラン・痂皮 |
| 腋下・肘前部 頚部腹側 | 皺襞(ヒダ)・脱毛・紅斑・苔癬化プラーク(斑)・痂皮 |
| 肢端舐性皮膚炎 | 下肢・指間腹側部(足裏) |
| 鼠径部・腹部 | 舐性・もつれた被毛・掻痒・紅斑 |
| 肛門嚢炎 | 肛門周囲・尾根部・臀部を噛んだり舐めたりするお尻を床に擦り付ける紅斑・脱毛・色素沈着・肥厚・皺襞(ヒダ) |
| 細菌性皮膚炎 マラセチア皮膚炎 脂漏性皮膚炎 | 二次的 |
| 好発犬種 | ゴールデン・ラブラドール・Gシェパード・シーズー・ダックス・マルチーズ・プードル・ミニピン・柴犬・ビーグル・コッカー・スプリンガースパニエル・ウェスティ・Fブルドッグ・キャバリア・シェルティーなど |
対策
①花粉情報(飛散総量・開始時期・毎日の予測)に注意する。花粉飛散量は、都心部より郊外の方が多いのに都市環境(大気汚染・固められた地表・気密性の高い住環境など)が誘因になって、有病率は都心部の方が上回っています。
②花粉飛散の多い日や多い時間帯の散歩を控える。雨が降らず・風の強い・晴れて気温の高い日。一日のうちでは、昼前後(14時)と夕方(18~19時)に花粉が多く飛びやすい。
③花粉飛散の多い日には、なるべく窓を閉めて花粉の侵入を防ぐ。外に干した洗濯物や布団は、花粉を払い落としてから室内に入れる。
④犬および人の体と足や服についた花粉を室内に持ち込まない。散歩後ついた花粉を、ブラシやタオルなどで徹底的に落とす。
⑤室内を舞う花粉を減らすには、空気清浄機が効果的です。床に落ちた花粉は、掃除機や雑巾がけをしましょう。当院ではアレルギー性鼻炎犬に、アロマオイル(ユーカリ)で鼻水の軽減が認められました。
⑥花粉症と果物過敏症(果物と野菜)との関連が注目されています(抗原交差性)。
特にアトピー犬には、以下の食物を与えないようにしましょう。
リンゴ・ナシ・モモ・イチゴ・ビワ・サクランボ・柿・梅・キウイ・バナナ・メロン・スイカ・オレンジ・ニンジン・キュウリ・ナス・ピーマン・セロリ・パセリ・トウガラシ・ニンニク・大豆・クルミ・アーモンド・ピーナッツなど