患者さんが終末期から臨死期に入ると、ご家族の方にそろそろお別れの準備をなさってくださいとお伝えします.
しかし、ご家族は療者の説明をすべて受けとめることができないことが多いようです.
そのようなときには今から死に至る経過のなかでどのような体の変化が起こり得るか、またそのときにご家族はどの様に対応したらよいかを文書にしたものでお渡ししておくと、いつでも読みかえしてご理解いただけるのではないでしょうか.
患者さんご家族の求めにはいつでもお答えするつもりでおりますが、お話の理解を深めていただくために「おわかれのパンフレット」を用意しており、ご利用いただいた方からよい評価をいただいております.
臨終間近のケア
患者さんに死が近づいてくると、普段と違ったいろいろな変化がでてきます。 ご家族の方はそれらの変化に遭遇したとき、不安と悲しみでどう対処してよいか戸惑われることと思います。しかし落ち着いて患者さんの手を握り、亡くなるまでの自然の経過として受けとめ、これらの変化に対処してください。
- 手足が冷たくなったり、冷汗でじっとりしたり、手足の末端が紫色になったりします。 この変化は血液の循環が悪くなったためですので、湯たんぽなどで暖めたり、さすってあげたりしてください。
- 眠っている時間が多くなります。ご家族の方は会話ができずに淋しい思いをするかもしれません。またしばしば目覚めが困難になったりします。これは、新陳代謝が悪くなってきたためですから無理に起こしたりせず眠らせてあげてください。
- 時間や場所、名前、時として家族の人のこともわからないようなことを言ったりします。 これも新陳代謝が悪くなったためで自然の経過ですので、頭がおかしくなってしまったと嘆かずに見守ってあげてください。
- 尿や便を洩らしてしまうことがありますが、尿道や肛門を閉じる筋肉の働きの低下によるものです。 柔らかい紙やウエットティッシュなどでやさしく拭き取ってください。
- 口からの分泌物が多くなったり、痰があがってきて喉の奥でゼロゼロという音がしてきます。この症状は体力が低下して、自分で咳をして出せなかったり、身体の水分が呼吸器にたまることによるものです。 綿棒でぬぐってあげたり、拭いてあげ、清潔にしましょう。看護師の判断で吸引器が必要な場合は、使い方を指導いたします。
- 五感の働きが鈍くなっても、最後まで聴力は残ります。眠っているからといって、患者さんの前で病気のことや聞かれてはいけない話は慎んでください。
- 身体がだるくて身の置き場がなくなると、じっとしていられず、始終手足を動かしたり落ち着きがなくなります。そういう時は背中をさすってあげたり、手足をさすってあげてください。下肢がだるいときは膝の下やふくらはぎの下に座布団を折って入れたりして、少し高くすると楽になります。
- 食欲は低下し、ほとんど物を口にしなくなります。氷や冷水、さっぱりした物が好まれます。 食べないからといって、無理にカロリーの高い物を食べさせたり、すすめたりすると、患者さんにとってはそれだけで苦痛になります。
- 寝ているとき、急に呼吸が止まったようになり、驚くことがあります。 呼吸が不規則になり、10~30秒くらいの無呼吸状態が起こります。これは死が近づいたときに起こる呼吸です。 あまり長い間止まって心配なときは、胸をさすってあげると、呼吸が回復することもあります。
死亡時のケア
亡くなるまでの患者さんの過程はさまざまです。ご家族の方がおやすみになっている間に亡くなっている、ということもありうることです。 そのようなときは、決してご自分を責めたりしないで、患者さんは苦しまずに安らかに亡くなられたと思ってください。
死亡時に確認すること
- 声をかけ身体に触れてみても反応せず動かなくなります。
- 眼を開いてみて瞳孔(黒い瞳の部分)が大きく拡がっているかどうか確認しでください。
- 息が止まり、心臓が止まります。胸に手をあてて(胸が)動いていないかみてください。 鼻に手を当てても結構です。そして首の動脈を触れてみて触れなければお亡くなりになったと判断してください。
上記のことが確認された時間をみておき、看護師が傍らにいないときは電話をしてください。眼が開いているときは、手でまぶたを抑え閉じてください。口が開いてるときは、枕をやや高めにし、あごの下にタオル1枚丸めて入れておくと口が閉じます。そしてそのまま医師と看護師が来るまでお待ち下さい。
死後のケア
患者さんは亡くなられても生前と同じように、ご家族の方にとっては大切な存在です。身体を清めて、お化粧をして、みなさんとお別れできるようにします。看護師もお手伝いしますが、ご家族の方だけでなさりたい場合には、次のようにしてください。
- 手足をまっすぐにしてください。(ただし関節が硬くなって伸びない場合にはそのままで結構です)
- 下腹を軽く押して、たまっている尿や便をまず出してしまいます。
- タオルを2枚準備してください。お湯で身体を拭いてきれいにします。よくしぼってから顔から拭きます。
- 胃内の停滞物が出てこないように口に中と鼻の穴に脱脂綿を詰めます。2cmくらいに細く切って、割箸で顔の形が変わらない手程度に詰めます。
- 肛門がゆるんで便が出てしまうことがありますので、肛門にも綿を詰めます。たくさん入りますが、2cm幅で20cm位で結構です。
- お召しもの(着衣)は生前患者さんが好んだものでも、家族の方が準備したものでもよろしいと思います。ただし、袖口の狭いものやかぶりものは死後身体が硬くなると着せづらくなりますので避けたほうがよいでしょう。
- 女性の方は、生前と同じようにお化粧をしてあげてください。男性の方はヒゲを剃り、ファンデーションとほほ紅、それに口紅をうすく塗ってあげると顔色も良くなります。