最近は、歯磨き粉のCM等でも歯周病というワードをよく耳にするようになりましたよね。しかし、実際にどんな病気なのかは、知らない人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、ホワイトエッセンス銀座の統括院長でもある歯科医師の岡本真理子先生に、実は私たちの身近にある歯周病トラブルについて、分かりやすく教えていただきました。
歯周病は、「骨を溶かす」病気
—先生、よろしくお願いします。まず、「歯周病」とは一体どんな病気なんでしょうか?
岡本:歯周病は虫歯と同じく、菌による感染症です。虫歯は虫歯菌、歯周病は歯周病菌がそれぞれ原因となります。口移しやキスなど、保菌者から何らかの形で口の中に歯周病菌を移されることにより、歯周病になると考えられています。
簡単に言うと、歯周病は歯周病菌が出す毒素によって、歯を支えている骨が溶けていく病気ですね。歯についたプラーク(歯垢)が固まって歯石になると、やがてそこにいる細菌たちが毒素を出し始めます。それが歯を支えるアゴの骨を溶かしていくのです。
—てっきり、歯茎が腫れたりするのが歯周病なんだと思っていました。実は、骨が溶ける病気なんですね。
岡本:でも、すぐに骨が溶けるわけではありません。おっしゃる通り、最初に現れる症状は、歯茎の腫れです。歯茎が赤くなって盛り上がった状態は、すでに初期の歯周病の可能性大。それを放っておくと、熟れたトマトのようにプニプニの状態になってきます。それがさらに進行すると、今度は歯茎が下がり、歯の根元が見えてきます。そうすると、「ちょっと歯が長くなってきた気がする」と感じたり、歯磨きをすると根元がしみたりするようになるわけです。
その状態を放っておくと、だんだん歯と歯茎の結合が緩んで、歯並びが悪くなったり歯がグラグラしたりしてきます。そして最終的にはもう歯を支える骨がなくなって、歯が抜け落ちてしまうのです。
歯周病には、自覚症状がない
—なんとも恐ろしい病気ですね。でも、その割にはあまり歯周病に危機感を覚える人って少ない気がしますが…。それは一体なぜなのでしょう?
岡本:それはズバリ、歯周病は自分では気付きにくい病気だからです。現在、日本人は成人のうち85%以上が歯周病にかかっているというデータが出ているのですが、実はそのうちの70%は自覚症状がないと言われています。
中には、「何となく歯茎の腫れているな」とか、「ちょっと歯が長くなってきたな」とか、そういう変化に気付く人もいますが、ごく少数派ですね。歯周病で歯茎が腫れてきても、痛みを感じないんですよ。歯周病菌が痛みを麻痺させる毒素を出しているので。
—その毒素のせいで、自分が歯周病だと気付かない人が多いんですね。
岡本:そうなんです。「血が出てきた」とか「最近ちょっと歯がグラつく」とか、そうした自覚症状が出る頃には、かなり歯周病が進行している恐れがあります。
また、虫歯と歯周病では菌の種類が違うので、虫歯がないからと言って歯周病にならないとは限りません。むしろ、「私は虫歯もないし、歯はすごく健康なの!」と自信を持っていて、歯医者に行く習慣がない人ほど、知らないうちに歯周病が進んでいる可能性があります。「毎日10分歯を磨いているから大丈夫」と思っている人も、決してそれだけで安心できるわけではありません。
歯周病ケアは、「クリーニング」が一番
—もし歯周病になってしまったら、歯科医院ではどんな治療が行われるのでしょうか?
岡本:残念ながら、歯周病を完治させる方法はありません。抗生剤を使えば、一時的には歯周病菌を殺して口の中を無菌状態にすることはできますが、保菌者との接触によりまた元に戻ってしまうこともあるからです。
歯の表面は、「バイオフィルム」という細菌とたんぱく質の膜に覆われています。例えるなら、排水口のヌルヌルのような感じです。排水口って、一度キレイに掃除をしても、しばらく放っておくとまた菌が繁殖してヌルヌルになってきますよね。それと同じで、2〜3ヶ月に1度はバイオフィルムを取り除き、口内を定期的にキレイにする必要があるんです。
—具体的な方法としては、歯医者さんで「歯石取り」をしてもらえばOKですか?
岡本:実は、それだけでは足りません。歯石を取るだけではバイオフィルムはなくならないので、菌が減らないんですよ。菌を減らすには、歯科医院で2〜3ヶ月に1度を受けることが最も有効な方法ですね。専用の機械を使ってキレイにすることで、歯磨きでは取り除けないバイオフィルムまでしっかりと除去できますから。
大切なのは「予防歯科」という考え方
—どうしてこんなに恐ろしい病気なのに、世間的にはそこまで注目されていないのでしょうか?
岡本:歳をとってからでないと、歯に危機感を覚える人は少ないのだと思います。実際、若いうちは歯周病になったとしてもまだ症状が軽く、健康な歯の人との差もほとんど出ません。しかし、年齢を重ねると確実に差が見えてきます。定期的にケアをしてきた人と比べて、何もしてこなかった人は、80歳になると歯の本数が半分以下になってしまうんですよ。歳をとって自分の歯がどんどんなくなっていき、そこで初めて事の重大さに気付くわけですね。
—「自分の歯がなくなる」なんて、確かに若いうちは想像しにくいですよね。でも、そんな未来を考えるとゾッとします…。
岡本:そうですよね。だから今、美意識の高い女性を中心に、「歳をとってもキレイなままでいたい」と予防歯科にお金をかける人が増えてきているんです。歯周病で抜けてしまった歯は、2度と元に戻りません。ボケ防止などの健康面を考えても、外見の美容面を考えても、歯科医院での定期的なケアは絶対に必要だと思います。
(編集・執筆:サムライト)