美濃の国 清流木曽川のほとり
木沢記念病院 形成外科 から
女性医師 高木美香子が
乳房再建などの形成外科情報を発信します! 

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少し前のこと、乳癌の抗癌剤治療によって顔が真っ黒く色素沈着をきたしてしまった患者さん(Iさん)が、何とかしてほしいということで来院されました。

それまでも同様の患者さんの相談を受けたことがありました。抗癌剤が終了して時間がたてば改善することが分かっていましたが、より早い改善を希望される方には、ビタミン導入などを行うことで御満足頂いた経験があります(もっとも、治療しなかった場合と比較することができないので、どのくらい効いていたかの証明はできないのですが…)。

ところで、抗癌剤で色素沈着がおこる仕組みですが、抗癌剤によって表皮基底層に存在するメラノサイトが刺激され、メラニン色素産生がこうしん(増進すること)するために起こると考えられているようです。有効な予防・治療法は無く、抗癌剤の中止により軽快するようです。この抗癌剤で色素沈着が起こる仕組み、何かに似ていると思いませんか?

そう、肝班です。肝班も同様に、メラノサイトが何らかの刺激を受け、炎症を起こし、メラニン産生がこうしんされるために起こります。テレビCMで見かける肝班の治療薬「トランシーノ」は炎症を抑える薬なのです。なので、風邪をひいたときにも病院で出されることがある薬です。メラノサイトを刺激する要因としては、外的な要因に紫外線・乾燥・誤ったスキンケア(洗顔や化粧の際に擦る習慣)などがあり、内的要因には女性ホルモン(妊娠・ピル)・ストレスなどがあると言われています。

肝班といえば、最近、「レーザートーニング」という新しいレーザー治療が登場しています。レーザー治療では、どのレーザーであっても少なからず炎症を起こすものです。そのため炎症が原因となる肝班では、レーザーを照射すると悪化してしまうことから、レーザー治療は禁忌とされてきました。この「レーザートーニング」というのは、炎症を起こさせない設定で照射し、沈着しているメラニンの排出を促すという方法です。これまでの治療法ではなかなか改善しない難治性の肝班の患者さんも、より早く改善することができるケースが増えてきています(実際に治療していると、改善が難しいケースやすぐに再発するケースもあります(これは私自身のことです)。まだまだ新しい治療法なので、確実に効果をお約束できる、というものでもないのが実感です。今後さらに症例を重ねる必要があります)。
詳しくはホームページにも掲載していますのでご覧ください→こちらをクリック

この「レーザートーニング」、色素沈着にも有効と言われています。抗癌剤によって顔に色素沈着をきたしてしまったIさんと相談した結果、「ならば!やってみましょう、レーザートーニング!」ということになりました。

「そんなことしても、抗癌剤治療が続けば意味が無いんじゃない?」と疑問に思われるかもしれませんが、Iさんの場合は抗癌剤治療も後半に入っていましたし、何より御本人が一刻も早く改善することを希望されていました。抗癌剤が終われば改善すると言われても、それまでただただ待つことが耐えられない、毎日鏡を見るのが苦痛でたまらない、改善させる手段があるのならやってみたい、と。









(左)開始前 (右)治療4回後
写りが分かりにくいかもしれませんが、
これは、週1回のレーザートーニングとトランサミン導入4回終了時の写真です。

劇的な改善とはいえませんが、明らかに薄くなっており、何よりもそれを御本人が自覚され、とても喜んで頂きました。Iさんは、もともと肝班があったそうで、4回終了時のこの写真の状態が、抗癌剤治療を始める前の肌の状態に近いとおっしゃっていました。もともとこのくらいの肝班があったということは、抗癌剤という刺激によって色素沈着をきたしやすい肌質であったことが考えられます。ちなみに、この4回のレーザートーニング中も抗癌剤の投与は継続されていましたので、抗癌剤治療による新たなメラノサイトへの刺激によるメラニン色素産生のこうしんに打ち勝って色素沈着を薄くできた、と言うことが出来そうです。そうだとすれば、抗癌剤治療が終わってからも治療を継続したならば、もっと大幅な改善ができたのではないかと推測できます(Iさんの場合は、4回終了のこの時点で抗癌剤治療前ぐらいに戻ったことに満足され、それ以降様子を見られることを希望されたので、実際には追加治療は行っていません)。

Iさんは「今までいろんな人にこの顔の黒ずみを相談してきたけど、誰一人、形成外科で相談できるということを教えてくれた人はいなかった!」と私に何度もおっしゃいました。常日頃から地域の皆さんに形成外科を認知して頂かなければと考えてブログなどで情報発信に努めているつもりの私ではありましたが、Iさんのこの言葉には、改めて深く反省させられました。地域の皆さんにお伝えしなければならない情報がもっともっとあるようです。

写真の通り、劇的な改善とまでは言い切れないので、改善度については色々な御意見があろうかと思いますが、相談できる専門家がいたこと自体がIさんにとってプラスになったことは間違いのないことだったと思っています。

今回も、Iさんにはブログで紹介させて頂くことを快く御了承頂きました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。


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