こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。

今月のJAMA誌に掲載された、
新規の骨粗鬆症治療薬アバロプラチドの、
骨折予防効果を検証した論文です。

骨粗鬆症の患者さんは、
背骨の圧迫骨折や大腿骨頸部骨折に受傷して、
初めて骨粗鬆症と診断されるというケースが多く、
そうした場合には骨折受傷から1年間が最も再骨折のリスクが高く、
その後も5年間はリスクの高い状態が持続することが知られています。
初回骨折後の骨折のリスクは、
そうでない場合の2倍に達します。

それでは骨折後に、
最も再骨折の予防に有効な骨粗鬆症の治療は何でしょうか?

骨粗鬆症の治療薬として、
今最も頻用されているビスフォスフォネートは、
基本的に骨吸収を抑える薬で、
骨形成を促進するというタイプの薬ではありません。

骨折後には、
理屈から言って骨吸収を抑える薬より、
骨形成を促進する薬の方が、
より理に適っているのではないかと思われますが、
そうした薬剤はこれまであまりありませんでした。

唯一副甲状腺ホルモン(PTH)の注射薬があり、
テリパラチド(商品名フォルテオ)と、
テリパラチド酢酸塩(商品名テリボン)があります。
テリボンは週1回の注射なので、
日本ではこちらが多く使用されています。
この副甲状腺ホルモンは、
特に皮質骨の骨形成を強力に促進する作用を持っています。

さて、まだ日本では発売されていない新薬として、
これ以外にアバロパラチドという注射薬があります。

このアバロパラチドは、
副甲状腺ホルモン(PTH)ではなく、
副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の誘導体です。

PTHrPというのは、
PTHの受容体の1型に結合する、
PTHとは少し構造の異なる物質で、
生体内にも微量は存在しますが、
特に癌細胞で多く産生され、
癌の合併症として生じる高カルシウム血症の、
主な原因として想定されている物質です。

2型のPTH受容体にはPTHrPは結合せず、
1型のみに結合してその作用を現しますが、
その結合はPTHよりも強く、
かつ持続は短いという特徴があり、
こうした性質からは、
PTHよりもむしろ骨粗鬆症の骨折予防には、
向いているという見解もあります。

そこで今回の研究では、
アバロパラチドの第3相臨床試験として、
5年以内の背骨の骨折の既往のある、
閉経後骨粗鬆症の患者さん2463名を、
世界10カ国の28の専門施設で登録し、
くじ引きで3つのグループに分けると、
第1群は毎日偽薬の注射を行い、
第2群は毎日アバロパラチド80μgの注射を行い、
第3群はテリパラチド20μgの注射を行なって、
18ヶ月の経過観察を行います。
このうち偽薬やアバプラチドかは、
本人にも主治医にもどちらかは知らされませんが、
テリパラチドの効果は明確であるため、
その使用については伏せられていません。

その結果…

偽薬では4.2%に背骨の再骨折が生じたのに対して、
アバロパラチド群では0.6%、
テリパラチド群では0.8%の再骨折に留まり、
明確に薬剤の使用により再骨折は予防されていました。
アバロプラチドは偽薬と比較して、
背骨の骨折の再発を86%有意に抑制していました。

一方で背骨以外の骨折については、
偽薬群で4.7%に認められたのに対して、
アバロパラチド群では2.7%、
テリパラチド群では3.3%と、
こちらは背骨ほどではなく、
有意差はありませんでしたが、
薬剤の使用により骨折は抑制される傾向を示しました。

このように、アバロプラチドがテリパラチドに匹敵する、
骨粗鬆症の患者さんの再骨折予防効果を示すことは間違いがありません。

ただ、今回の研究ではテリパラチドの使用は伏せられていないため、
テリパラチドと比較してアバロプラチドがより骨折予防に有効、
という結果は得られておらず、
今回のデータを観る限りは、
差はあるとしてもそれほどのものではなさそうです。

アバロプラチドとテリパラチドをどのように使い分けるべきかについては、
今後の検証を待たないといけないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(15) コメント(3) トラックバック(0) 

nice! 15

    コメント 3

    前回の健康教室の内容ともリンクしていて、興味深く拝見いたしました。いつもわかりやすく解説してくださりありがとうございます。健康教室もとても良かったです。骨粗鬆症のことが基礎からわかりました。また、骨密度の測定法などへぇそうだったのかと目から鱗のことがいっぱいありました。来月は仕事で行けないのですが、また参加させていただきたいのでどうぞよろしくお願いいたします。
    by ゆき(2016-08-25 10:48) 

    ゆきさんへ
    健康教室への参加ありがとうございました!
    またご都合が合えば是非ご参加をお待ちしています。
    骨代謝は大学で一時研究していたのですが、
    奥が深く一般の臨床との間には、
    結構な乖離があるようにも思います。
    もう少し科学的な診療が出来ればとはいつも思います。
    by fujiki(2016-08-28 22:25) 

    土曜日は基本的に仕事は休みなのですが、時々入る仕事が第三週が多いのが悩みです。
    骨代謝を研究されていたんですか。
    先生のお話で印象的だったのは、骨粗鬆症の薬は骨を健康にするものではない、というところでした。骨も新陳代謝してるんだなあ、細胞は作られて壊されて、ということがセットなんだなあ、壊されなくするのは不自然なんだ、どこかひずみがでてくるんだろうなあ、って思いました。ありがとうございました。
    by ゆき(2016-09-02 00:36) 

    コメントを書く

    お名前:[必須]
    URL:
    コメント:
    画像認証:
    下の画像に表示されている文字を入力してください。

    トラックバック 0

    この記事のトラックバックURL:
    ※言及リンクのないトラックバックは受信されません。