| ○○ 太りすぎに注意して ○○ 「おなかの赤ちゃんの分まで食べなくては」と言われたのは、栄養状態がよくなかった昔の話。 現在はむしろ体重が増えすぎないように気をつけなければなりません。必要以上の体重増加は、妊娠中毒症などにつながる危険があります。また、骨盤の内側や産道のまわりに脂肪がついて、お産のときいわゆる「難産」になることもあります。 しかし、体重増加を心配して、あるいは産後の体型を気にして、必要な栄養までとらないことも危険です。赤ちゃんの発育のために、母体の健康を守るために、妊娠中、特に必要な栄養素もあります。たいせつなのは、バランスの良い食事によって栄養を十分にとりながら、太りすぎないように注意することです。 |
| ● 体型に応じた目安 ● 一般に、妊娠中の体重増加は7~ 10kg程度が理想と言われます。しかし、この数字も、その人の妊娠前(非妊娠時)の体型によって違lってきます。 自分の体型を知り、そこから妊娠中の理想体重を割り出す目安として、BMI(体格指数)という数値があります。BMIは「体重(kg)÷ 身長(m)の二乗」で求めます。体重58kg、身長160cm人なら、58÷(1.6×1.6)=22.65625≒ 22.7、つまり22.7となります。この数字をもとに自分の体型(やせ型、標準型、肥満型のどれか)を知り、それに応じた妊娠中の増加を目安にしましょう。 |
BMIの数値 →妊娠中の体重増加の目安 18.5未満(やせ) →9~ 12kg 18.5~25未満(標準) → 7~ 12kg 25以上(肥満) →おおよそ5kg | |
| ● 妊娠中の体重増加の内訳 ● 生まれるときの赤ちゃんの体重は、平均で3 kgくらいです。妊娠中の体重増加が7~ 10kgだとすると、ほかの重さは何の分でしょう.たとえば10kg増加したときの内訳は、次のように考えられます。胎児が3 kg、胎盤や羊水、胎児を育てるための血液や水分の増加量が3~ 4 kg、出産や母乳分泌などに必要なエネルギーの蓄え脂肪)が3~4 kgです。 妊娠前からやや肥満体型の方ですと、蓄え分の3~ 4 kgがもともとあるので、妊娠による増加分は胎児や胎盤や羊水の増加量などの分(5~ 7 kg)だけでよいというわけです。 |
| ● バランスのとれた食事を ● 体重は増えすぎないように、しかも必要な栄養を十分とるために、食事の内容に気をくばりましょう。 それには次のことが大切です ①1日3食きちんととる ②栄養バランスを考えて食べる ③塩分を取り過ぎない ④タンパク質、鉄分、カルシウムを意識してメニューに組みこむ 現代人は、朝食は軽く夕食をたっぷり食べる傾向があります。おやつや夜食にスナック菓子やインスタント食品を食べる事も多いでしよう。こうした食習慣は見直したいものです。朝・昼をしっかり食べれば、間食や夕食の食べすぎを防げます。きちんとした食習慣は、将来の生活習慣病(高血圧や糖尿病などの予防にもなります。 体重の増加を防ぐには、甘いものや脂肪分をひかえましょう。ゆでる、網で焼く、蒸すなど、油を使わない調理法を工夫してください。 |
| ● 塩分のとりすぎに注意 ● 塩分のとりすぎはむくみや高血圧の原因になり、妊娠中毒症にもつながります。 塩分は1日10g未満におさえましょう。 ポイントは次の通りです。 ☆ラーメンやうどんの汁は残し、五日ごはん、ピラフなど味のついたごはんはひかえる。 ☆味つけには、塩・しょうゆのかわりに酢、レモン、薬味、香辛料などを使う。煮物・汁物はだしをしっかりとると、おいしくいただけます。 |
| ● 貧血の予防には鉄分をとる ● 妊娠中に積極的にとりたい栄養素は、良質のタンパク質、鉄分、カルシウムです。とくに鉄分は、妊娠中に多い貧血の予防にたいせつです。鉄分が多く含まれる食品のほか、ビタミンB6、B2、葉酸、銅を多く含む食品も、貧血の予防に役立ちます。 |
| ●ふだんより多めにとりたい食品● ☆タンパク質 胎児のからだをつくるのにもっとも大事な栄養源。肉・魚・豆や大豆製品(豆腐、納豆など)を偏らずにしっかり食べましょう。 ☆カルシウム 牛乳や乳製品(低脂肪牛乳や無糖ヨーグルトがおすすめ)を合わせて1日400~500g。小魚、大豆、海藻類、緑黄色野菜。 ☆鉄分 貧血予防に欠かせません。豚レバー、卵、まぐろ、かつお、カキ、あさり、しじみ、 ほうれん草など。 ☆ビタミン類 毎日いろいろな種類をたっぷりと。中でも葉酸の多く含まれている野菜は積極的に食べましょう。ほうれん草、ブロッコリー、しゅんぎくなどです。 ☆食物繊維 便秘予防に。豆。大豆製品、きのこ類、じゃがいも、さといもなどのいも類、大根やごぼうなどの根菜類、こんぶなど。 |
| ●つわりを乗りきる工夫● 妊娠の初期に、気持ち悪くなったり吐き気がしたり食欲がなくなったりするのがつわりです。個人差が大きく、ふだん嫌いなものが無性に食べたくなる人もいます。食べられないと赤ちゃんが育たないのでは……と心配する人が多いですが、妊娠初期(12週ごろまで)は女性のからだに蓄積されているエネルギーで十分に育ちます。 ○つわりの時期は次のような工夫をしましょう○ *空腹になるのを避ける …朝起きたとき、すぐに□に入れられるよう、枕元に食べものを用意しておく。職場ではアメなどを持参する。 *少しずつ何回も …時間にこだわらず、何回にも分けて。規則正しい食事を心がけるのは、つわりが終わってからでOK。 *環境を変える……たまには外食で気分転換を。 |
| ●動作や姿勢にも気をつけて● おなかが大きくなるにつれて、からだの重みが前のほうに移るため、バランスを取ろうとして、そり身になりがちです。背中をそらせた姿勢は、腰に負担をかけます。腰痛予防のためにも、姿勢や動作に気をくばりましよう。 |
| ● 健康な毎日のために 妊娠は病気ではありませんが、からだにはいろいろな変化が起きます。自分のからだの調子に合わせながら、「ふだんより少し大事に」「ふだんより少しセーブして」を心がけ、無理せず毎日を過ごしましょう。 |
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| 参考文献:財団法人 母子衛生研究会 |