「子宮筋腫」のほとんどは良性の腫瘍で、命にかかわるものではありません。しかし、発生場所によっては不妊の原因になったり生理不順を招いたりすることもあるため、早期発見が大切です。「子宮筋腫は食事療法で改善できる」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それは本当なのでしょうか?今回は、食べ物・栄養素と子宮筋腫との関係についてまとめました。
子宮筋腫にはエストロゲンが関係している?
日本産科婦人科学会によると、子宮筋腫は婦人科疾患の中で最もよく発生する病気で、30歳以上の女性の20~30%に見られます(※1)。
ほとんどの場合、悪性化する危険性はありませんが、筋腫が大きくなるにしたがって、生理時の出血量が増えたり、貧血になったりするほか、月経痛がつらくなったりします。
また、筋腫が他の臓器を圧迫していると、下腹部痛や排尿痛、便秘、腰痛などの症状が現れることも。
子宮筋腫を放置してしまうと、不妊につながる恐れもあるので、早めに治療することが大切です。
子宮筋腫ができる原因は、まだはっきりと分かっていません。しかし、初潮を迎える前の女性には見られず、閉経後には筋腫が小さくなっていくことが多いことから、女性ホルモンの「エストロゲン」が子宮筋腫の発生・増大に関係しているのではないかと考えられています(※2)。
子宮筋腫には食事療法が効く?食べ物で小さくなるの?
「食事の取り方によって子宮筋腫を小さくできる」という医学的な根拠はありません。しかし、毎日の食事は体に大きな影響を与えるものなので、子宮筋腫と食べ物との間にまったく関係がない、と言い切るのも難しいところです。
先ほどご説明したように、子宮筋腫にはエストロゲンの分泌が関係していると考えられています。そのため、薬物療法では、卵巣で作られるエストロゲンの量を少なくすることで子宮筋腫の発育を抑えることもあります(※3)。
これにならい、「食べ物でもエストロゲンの分泌をコントロールできれば、子宮筋腫を改善できるのではないか」という考えで食事療法を実践する人もいます。
ただし、食生活(食べ物)や生活習慣を見直すことももちろん大切ですが、子宮筋腫の状態によっては、西洋医学的な治療も必要だということも覚えておきましょう。
子宮筋腫で食べ物を気にしたいときは?
食事療法について、子宮筋腫に対する有効性を裏付ける科学的根拠は報告されていません。治療が必要だと医師から診断された場合は、「食事で子宮筋腫の症状をやわらげたい」「子宮筋腫を小さくしたい」と考えず、医学的な治療も検討しましょう。
そのうえで、「食事にもできるだけ気をつけたい」と考える人に、エストロゲンの分泌を調整してくれる栄養素をご紹介します(※4)。
ビタミンB・ビタミンE
ビタミンBやビタミンEを含む食品は、肝臓の働きを良くし、 エストロゲンのレベルを下げるのに役立ちます。
特にビタミンB6は、炎症を鎮め、 筋肉をリラックスさせるタイプの「プロスタグランジン」を体内で作り出すのにも必要とされる栄養素で、月経痛をやわらげてくれます。
ビタミンB6は、レバーやカツオ、マグロなどの動物性食品のほか、バナナ、にんにくにも多く含まれます。ビタミンEを摂るなら、サーモンやカレイなどの魚介類のほか、かぼちゃやアーモンド、玄米や豆類がおすすめです。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、大豆の胚芽部分に含まれるポリフェノールの一種です。体内でエストロゲンと似た働きをすることから、植物性エストロゲンのひとつとされています。
イソフラボンは、更年期症状の改善など、エストロゲンが足りなくなってしまったときに役立つ一方で、エストロゲンが過剰なときに摂取することによって、分泌を適度に抑える働きもしてくれます。
大豆イソフラボンは、納豆・きなこ・豆腐・油揚げ・味噌など大豆由来の食材に多く含まれる栄養素です。
子宮筋腫のときに限らず、「体を温める」食べ物を
冷えは万病の元といわれるように、冷えによる血行不良は様々な問題を引き起こします。体が冷えると免疫力が低下してホルモンバランスが崩れやすくなるため、エストロゲンの調整がうまくいかなくなる可能性もあります。
血行不良による冷えは、子宮の働きを鈍らせてしまいます。冷え性を根本から改善するためには、栄養バランスのとれた食事を心がけ、特に血行促進効果のあるビタミンEをしっかり摂取することが大切です。
子宮筋腫と診断されたときに限らず、次に挙げるような「体を冷やす」食材の摂りすぎに注意し、「体を温める」食材をバランス良く取り入れましょう(※4)。
× 体を冷やす食べ物・飲み物
きゅうり、なす、トマト、にがうり、わかめ、昆布、バナナ、オレンジ、コーヒー、緑茶
○ 体を温める食べ物・飲み物
たまねぎ、にんにく、しょうが、にんじん、小松菜、ごぼう、さくらんぼ、桃、紅茶
子宮筋腫でもまずは、バランスの取れた食事を心がけて
今回ご説明したとおり、「これを食べれば子宮筋腫に効果がある」という医学的根拠はありません。
しかし、動物性脂肪の量が多いと、エストロゲンが過剰に増えてしまうことは分かっています。肉類や乳製品といった動物性脂肪をなるべく控え、栄養バランスの取れた食事を第一に心がけて過ごしましょう。
また、エストロゲンの分泌抑制に効果的な栄養素はありますが、特定の食べ物ばかり気にしすぎてストレスをためてしまったり、栄養バランスが偏ったりしてしまうと、かえってホルモンバランスを乱してしまう可能性もあります。
エストロゲンの分泌を抑えることで、子宮筋腫を完全に失くすことができるわけではありませんが、食事療法は子宮筋腫を改善するひとつの考え方として捉え、できることから取り組んでいきましょう。