日常生活上のどのような注意が必要かは,それぞれの患者さんによって違います.このパンフレットはすべての患者さんに心掛けてもらいたい一般的な注意特定の症状をもっている人だけに心掛けてもらいたい注意について述べました。

一般的な注意

  • タバコは絶対にやめてくだい.血流を悪くしたり,肺の症状を進行させたりする作用があるからです.

  • 手足を暖かく保温することを心掛けてください.とくに外気温が低い場合は,手袋や厚手の靴下などを必ず身につけてください.

  • 大部分の患者さんは通常の日常生活を送るのに問題はありません.でも,激しい運動や疲労を残すような無理な活動は避けてください.何ごともマイペース,マイペース!

  • 大部分の患者さんは家庭の主婦で特定の仕事をもっていないと思います.新しく何か仕事を始めたいという場合には必ず相談してください.勤務時間の不規則な仕事,化学薬品を扱う仕事,冷たい温度に手をさらす仕事などはよくありません.

  • 特別な趣味(例えば水泳,エアロビクスダンス,テニスなどのスポーツや薬品を扱うような陶芸など)を始めようとする場合も相談して下さい.強皮症の症状に対して悪い影響がないかどうかそれぞれの人によって異なりますので,よく相談しましょう.

  • 強皮症とは関係がないと思われる病気でほかの病院・医院を受診する場合でも,強皮症の診断で通院していることと,現在どのような薬を飲んでいるかを申し出るようにしてください.現在内服している薬はできるだけ持参して見せるようにしてください.強皮症と関係があるかもしれない場合や,われわれのところでの検査データ等が必要な場合は詳しいご依頼状を書きますので申し出てください.

  • 逆にほかの病院で新たに投薬を受けたり,特別な治療を始めた場合には,その由を次回来院時に申し出てください

  • 強皮症の患者さんに対して知人,友人のかたが,特殊な治療や健康増進法などを勧めることがあると思います.漠方療法,運動療法,自然食品,特殊なマッサージ,新興宗教と関連した治療などさまざまです.われわれはこれらのすべてがまったく意味のないものとは考えていませんが,営利を目的としたインチキなものが混じっているのも確かです.「○○病院での治療をまったくやめて,自分のところの治療をすればなおる」と言われても信用しないでください.漢方薬には副作用がないというのは誤りですし,特殊な運動療法で膠原病が悪化して入院した例もあります.強皮症はきわめて特殊な病気なので,この病気のことを本当に理解している医師にしか,この病気の患者さんの治療や管理はできないと思います.われわれのおこなっている治療と平行して試みることが可能な治療であれば試みてみることも考えてみましょう.

  • 一般に強皮症の患者さんは,手足の末梢の血流に障害があることが多いので,小さな傷がなおりにくいという問題をかかえています.たとえほんのちょっとした傷でも消毒をきちんとするようにし,さらに状況に応じてわれわれに相談するようにしてください.抗生物質の入った軟膏での処置や抗生物質の内服が必要な場合もあります.

  • 食事については,一般に消化のよい食べやすいものを選んで十分な栄養をとってください.例外として治療で副腎皮質ホルモンを内服している人は,副作用で体重が増えすぎることがあるので,カロリーを計算してバランスのよい食事をとってください.

  • 消化器症状のない人に限っては,少量のアルコールは血行を良くするので,間題はありません.もちろん,飲み過ぎはダメ!

  • 入浴は血行を改善したり.精神的緊張をときほぐす作用があるので有用です.小さな傷や潰瘍がある場合でも入浴後すぐにきちんと消毒すればOKです

特定の症状をもつ人の注意

  • 消化器症状のある人

    胃酸の分泌を刺激するような食事(アルコール類,とくに脂こい食べ物,コーヒー,スパイスの効いた食べ物)は避けてください.飲み込みが悪い場合やものがつっかえる感じのある人は,軟らかいものを少しずつよくかんでゆっくりと食べるようにしてください.症状の程度のひどい場合は1回の食事量を減らして,食事の回数を1日4~5回にしてください.食べた後にすぐに横にならないようにしてください.(食べた物が重力によって食道を通過するのを助けるため).寝る前2~3時間の間にたくさん食べないようにしてください

  • 肺症状,心症状のある人

    心臓や肺に負担のかかるような動作,作業を避けるようにしてください.階段を休みながらしか昇ることのできない人は,必ずエレベーターを使うように心掛けてください.息切れしやすい人は長時間歩いたり,急に走ったりしないようにしてください.重い物を持ち上げるような動作や全身に力を入れて何かを引っ張るような動作も避けてください.

  • 関節が曲がったままになっている人

    関節が曲がったままで十分に伸びなくなる症状を拘縮といいますが,この症状ははゆっくりと進行します.従って,毎日少しずつ手足の関節を曲げ伸ばしすることによって,関節の変形進行を遅らせることができます.曲がったままの関節の部分に皮膚潰瘍が生じやすい場合がありますので,このような場合はあらかじめ関節をガーゼや軟らかい布で保護することも必要です.

  • 皮膚硬化の強い人

    皮膚硬化が高度な場合には,体の運動が制限され,前述のような関節の変形を悪化させる要因となります.体に負担のかからない程度の運動(軽い体操や散歩など)がその防止に有用です.

    また皮膚が乾燥してカサカサする場合や,痒みを生じた場合には,適切な軟膏やクリームを塗る必要があります.われわれに相談してください.

  • シェーグレン症候群で眼の乾燥のある人

    定期的に点眼薬を使用すること必要です.