進行・再発胃がんの化学療法 ASCO-GI2013の成果を中心に

SOX療法の有効証明で、広がる進行・再発胃がん治療の選択

監修●山口研成 埼玉県立がんセンター消化器内科科長兼部長
取材・文●町口 充
(2013年9月)




「進行・再発胃がん治療の選択肢は広がっていきます」と話す山口研成さん

SP療法vsSOX療法

■図1  療法と療法の比較試験

進行・再発胃がんのファーストラインの治療法として、TS-1とオキサリプラチン併用の療法が有効との報告があったのは、2013年1月に開催された、米国臨床腫瘍学会の消化器がんシンポジウム(ASCO-GI2013)。北里大学東病院の樋口勝彦さんが第Ⅲ相試験の結果として発表した(図1)。

この試験結果について、埼玉県立がんセンターの消化器内科科長兼部長の山口研成さんは次のように語る。

「オキサリプラチンは、日本を含め世界中で大腸がんの標準治療として用いられています。しかし日本では、進行胃がんに対する治療薬としては未承認の薬です。今回の試験の結果、現在の標準治療である療法と、オキサリプラチンを使った療法とでは、()はどちらもほぼ同じであることが証明されました。つまり同等の効果があるというわけで、そうであるなら、シスプラチンを使った治療の場合は副作用対策のため入院が必要なのに対して、オキサリプラチンは外来で治療ができてより簡便に使えるので、患者さんにとってのメリットは大きいと考えられ、早期承認が望まれています」(図2)


■図2  ()の比較

この試験は、手術不能進行または再発胃がん患者さんを対象に、群と群に無作為に割り付けて実施。

2011年1月から10月までに日本人の患者さん685人(群343人、群34 2人)が登録。群は3週間を1サイクルとしてTS-1 40mg/m3を1日2回14日間投与し、オキサリプラチンは治療1日目に100mg/m3を投与。

群では5週間を1サイクルとしてTS-1 40mg/m3を1日2回21日間投与し、シスプラチンは8日目に60mg/m3を投与した。

結果は、は群が5.5カ月に対し群は5.4カ月でほぼ同等の成績だった。(RR)は群が55.7%、群が52.2%だった(図3)。


■図3  (RR)の比較
 318 2 175 94 40 7 55.7% 85.2%
 324 4 165 96 52 7 52.2% 81.8%

DCR(病勢コントロール率)=(CR+PR+SD)
完全=すべての標的病変が消失し4週間持続 部分=標的病変の長径和30%以上の縮小が4週間持続










TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム オキサリプラチン=商品名エルプラット 療法=TS-1+シスプラチン ()=治療後、がんが進行せず安定した状態の期間 シスプラチン=商品名ブリプラチンランダ =がんの大きさに50%以上の縮小がみられた割合

欧・韓ではすでに標準治療

かつて胃がんは、抗がん薬が効きにくいがんの1つといわれた。とくに、進行・再発がんに有効な薬はないとまでいわれたが、TS-1など新薬の登場で、がんの進行を遅らせたり、縮小・消失させることも可能になってきた。

「臨床試験をベースにして、標準治療として日本のガイドラインに明記されるようになったのが療法です。その点でこの治療法の登場は非常に大きな意義があり、さらに新しい選択肢として出てきたのが療法です」(図4)

なぜオキサリプラチンなのかというと、1つには、同じ消化器のがんである進行・再発大腸がんの治療薬としてすでに承認され、効果が出ていることがあげられる。

また、イギリスとドイツで、オキサリプラチンとシスプラチンの比較試験が行われ、今回と同様の結果が出ており、進行・再発胃がんに対する治療では、すでにシスプラチンはオキサリプラチンに置き換わっている。

さらに、韓国でも、進行・再発胃がんに対してオキサリプラチンを使った治療法が標準治療となっているという。

米国でもオキサリプラチンが使われるようになっている。ただし、アメリカでは大腸がんの治療法である療法*が進行・再発胃がんでも使われていて、この療法は5-FU*とロイコボリン*、それにオキサリプラチンの3剤を併用する治療法。療法で用いるTS-15-FUの効果を高めた薬であり、療法と療法はほぼ同じ治療法といえる。

つまり、世界の進行・再発胃がん治療の流れは、シスプラチンからオキサリプラチンへと変わりつつあるのだ。


■図4  これまでの国内での臨床試験と治験成績
試験名 症例数 (%) 無増悪期間(月) P値(危険率)
JCOG9912 5-FU 234 9 10.8
TS-1 234 28 11.5 0.023
カンプト/トポテシン*+シスプラチン 236 38 12.3 0.019
SPIRITS1 TS-1 150 31 11.0
TS-1+シスプラチン 148 54 13.0 0.037
GC0301/TOP-002 TS-1 162 27 10.5
TS-1+カンプト/トポテシン 164 42 12.8 NS

TS-1+シスプラチン療法は、現時点で進行再発胃がんの初回治療として標準治療となっている。オキサリプラチンは、胃がんに対する保険適用未承認














療法=5-FU(商品名)+ロイコボリン(商品名)+エルプラット(商品名) 5-FU=一般名フルオロウラシル ロイコボリン=一般名レボホリナート