歯がずきずきと痛む理由とは

    こんにちは。
    歯科医師の森です。

     

     

    平成23年が始まり、早いもので約1カ月が過ぎました。
    皆様、いかがお過ごしでしょうか。

     

     

    まだまだ寒い日が続きますので、
    風邪などひかぬよう、体調にはお気を付けください。

     

     


    さて、今回のメルマガは...
    「歯が痛い」時のひとつの病態である、
    「歯髄炎」について、お話していきたいと思います。

     


    長文になりますので、リラックスした時にお読みください。

     

     

     


    「歯が痛い」と一言でいっても...
    キーンと水に冷みて歯が痛くなったり、
    食べた後ズキーンと歯が痛くなったり、
    急にズキン・ズキンと歯が痛くなったりと
    いろいろあると思いますが...

     

     

    ズキン・ズキンと脈を打つように歯が痛くなったら、
    歯髄炎、つまり歯の神経(歯髄)が
    感染してしまっている場合が多いです。

     

     


    では、歯髄炎はどうして起きるのでしょうか?

     

     

    一つは虫歯によるものです。
    他には打撲などによって歯が破損して、歯髄が露出した場合、
    打撲によって歯根尖の歯髄が断裂してしまった場合、

    さらには歯周病が進行して、
    歯根の先のほうまで歯槽骨の炎症が広がり、それによって
    歯の根の先から歯髄のほうへと、炎症が波及したような場合
    (逆行性歯髄炎)などがあります。

     

     


    次に、歯髄炎が起きることによって、
    歯が痛くなるのはどうしてでしょうか?

    主には細菌が関与しています。

     

    つまり、虫歯が深く象牙質にまで達して細菌が象牙細管を通り、
    歯髄内に侵入し、歯髄に感染して、そこに炎症を起こします。

     

     

    歯髄は硬い組織に囲まれているため、内圧が高まることで
    神経を圧迫し、歯が痛くなるわけです。

     

     

    さらに、ズキン・ズキンと歯が痛くなり、
    激痛が走るようになるのは、細菌だけではなく、
    "神経"自体も関与しているからです。

     

    前述のように、刺激が歯髄に伝わると、刺激によって、
    神経細胞に含まれる神経ペプチドが出現し、
    これがまず局所的に血管を拡張させ、
    血管の透過性を亢進させます。

     

     

    つまり炎症が起こることになります。
    血管透過性が高まると血液成分が血管から外へ出て
    (炎症性滲出)、その結果圧が高まります。

     

    なぜ圧が高まるかといえば、細菌感染による炎症と同様に、
    歯髄は硬い組織に囲まれているためです。

     

     

    そして、圧が高まれば細静脈を圧迫して血流が悪くなり、
    血栓ができたり血圧が低下したりします。
    血栓ができたり血圧が低下すれば、
    その先の組織は酸素不足になりますから、
    結果として「壊死」が起こります。

     

     

    そして組織が壊死すると、組織内には破壊産物がたまり、
    その蓄積により血管の拡張と滲出が起こり、
    内圧はもっと高まります。

     

     


    このような歯髄壊死に、さらに細菌感染が起これば、
    組織は当然のように「壊疽」になります。

    壊疽すればガスも発生しますから、一層内圧は高まります。
    歯髄炎になると、ズキン・ズキンと、
    どうしようもなく歯が痛いのはそのためです。

     

     


    歯髄炎の治療にはどのようなものがあるのでしょうか?

    歯が痛い症状が比較的軽く、持続性ではない場合は
    歯髄充血の可能性もあるので、

    その場合は感染した象牙質だけを取り除き
    虫歯の穴に仮のセメントを詰めて経過観察し、

    歯が痛い症状が出現しない場合は歯髄を残します。

     


    しかし、歯が痛い症状が激しい場合は
    歯髄を取り除いて根管治療をします。

    ただ、ここで注意しなければならないことは、
    歯髄がなくなれば枯れ木みたいに歯はもろくなるので、
    歯髄を抜かなければならないとき以外は、
    できるだけ残す治療をします。

     

     


    そして、「根管治療」とはどのようなものなのでしょうか?

    歯髄を取る(抜髄)ことから始まって、
    根管拡大・清掃、根管充填にいたるまでの一連の作業を
    いいます。

     

     

    これは体験した方ならご存知のように、
    歯科医も患者さんも双方が大変で、
    手間と時間のかかる治療です。

    細菌感染した歯髄を根管内から徹底的に取り除く
    作業(抜髄)は、根の形態が複雑なため、
    かなり難しいものがあります。

     

     

    そのため、根管の形、方向、長さ、湾曲の有無、
    歯槽骨との関係や根周囲の歯槽骨の状態を知る必要があるので、
    レントゲン撮影をしてその様をよく観察します。

     

     

    そして抜髄、根管清掃、根管充填のしやすい形をつくるために、
    針のような器具(ファイル)を使って根管の拡大を行います。

    無菌状態になったと判断した時に、
    ゴムを細い針状にして硬くしたもの(ガッタパーチャポイント)
    を使用して根管充填をします。

     

     

    この時、根管に何本もポイントをつめこんで、
    根管の根元までびっしり"根栓"します。

     


    最後に、歯髄炎を放置するとどのようになるのでしょうか?

     

    歯髄炎は根管内に起こり、そこで発生した膿やガスは
    何とかして外へ出ようとし、
    根尖から骨を破って外へ出てきます。

    つまり、根管内に起こった炎症は直ぐに
    根尖周囲に波及して、根尖性歯周炎を併発します。

     

     

    そのメカニズムとしては、根尖周囲の骨組織に、
    壊死し感染した組織(抗原)が根管内から出てくると、
    免疫反応(抗原?抗体反応)が起きて、
    その結果として周辺の骨は破壊され空洞が生じます。

     

     

    そして、さらに膿の出口として内外に向かって骨破壊が進行し、
    歯肉を貫通して外へ膿が放出されます。

    この進行には急性と慢性があり、
    歯肉や頬の腫れを認める他、急性の場合には、
    歯が痛いという症状を伴うことになります。

     

     


    皆様、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
    そして、ご苦労様でした。

     

     

    「歯髄炎」については、大体お解りいただけたでしょうか?

     


    解らない点がございましたら、お気軽にご質問ください。