競馬入門
▲黒鹿毛や青鹿毛の馬は、日が当たることで毛ヅヤの善し悪しが一目瞭然。
▲白と黒が入り交じった芦毛はくすんで見えるため、判別しにくい。
これは馬を近距離で観察すれば一目瞭然。逆にテレビだと少し分りづらく、だからこそ競馬場まで足を運ぶ意味がある。毛ヅヤが冴えないと「やぼったい」印象を受けるし、皮膚が厚く馬体に張りがないと覇気が感じられない。
では、「毛ヅヤが良い」とはどんな意味があるのか? 犬や猫と同様に馬にも季節によって毛の抜け替わりがある。新陳代謝の悪い馬はそれが円滑に行われず、要する期間も長い。つまり、安定して毛ヅヤが良い馬は新陳代謝が活発で内臓が健康・丈夫といえる。内臓が健康ということは、飼葉からの栄養素を効率よく吸収し、それだけ厳しい調教やレースにも耐えられるわけだ。そして、皮膚の薄さと能力の高さに関する医学的な根拠が存在するわけではないが、このタイプは感覚を鋭く勘が良いといわれ、名馬の多くはこのパターンに当てはまる。初心者に皮膚の厚さを見分けるのは少々難しいかもしれないが、サンデーサイレンス産駒で重賞を勝つレベルの馬はすべからず薄く張りがある(菊花賞、有馬記念・天皇賞・春を勝ったマンハッタンカフェは特に素晴らしかった)。それをよく観察し、自分なりに基準を決めて他馬を比較すれば、徐々に見分けがつくようになるはずだ。
ちなみに黒鹿毛や青鹿毛は、その色彩効果によって引き締まった馬体に映るので、見栄えのする馬が多い。逆に芦毛の毛ヅヤの判別は難しく、見栄えのしない馬が多い。
▲2人の引き手をぐいぐいと引っ張る「2人引き」の状態。
▲汗のかきすぎで毛色がまだらになっている。
「気合」とはレースに対する馬のやる気。一般的にスプリンター・マイラーは気性が激しく、中距離型・ステイヤーは穏やかといえる。短距離戦ではスタートで後手を踏んだり、エンジンの掛かりが遅いと致命傷となり、特に、初めてレースではある程度スタートが速く、レースの流れに乗るスピードがなければ後方に取り残されたままゴールを迎えてしまうパターンが多い。
では、具体的に気合乗りの見極め方をあげると、首を小刻みかつリズミカルに振り、自ら厩務員を引っ張りながら周回している馬は好ポイントを与えていいだろう。「二人引き」と呼ばれる状態では特に気合が乗っている。短距離戦なら少しくらい入れ込み気味でも問題はないはず(特に牝馬)。ただし限度もある。夏場では、ゼッケンの下に白い粉を吹いている馬を見かけることがあるはず。これは気合乗りが早すぎて、装鞍所(馬具を取り付ける場所)から入れ込んで大量の汗をかき、それが乾燥したものである。こういう場合はレース前に体力を消耗したと判断して間違いない。また、ごくまれに気合が入りすぎて、入れ込みを通り越してパニック状態に陥る馬もいる。
逆に芝の中距離型・ステイヤーは、ゆったりとリラックスして歩いている方が望ましい。ただし、「落ち着きがある」と「元気がない」状態は紙一重。このタイプで理想的なのは、「落ち着きがあり内面に闘志を秘めている」状態である。スランプに陥り連敗中の馬は自信を失い歩き方に元気がなく、逆に連勝中の馬は威風堂々とパドックを周回していることが多い。また、調子が良いと実際の馬体重よりも体を大きく見せ、競馬評論家風に表現すると「はちきれそうな」状態となる。やや抽象的な表現で初心者には分かりづらいかもしれないが、これも時間をかけて根気強く観察を続ければ徐々に理解できるようになるはずだ。
▲尻尾と臀部(尻)がどれだけ離れているかでもチェックできる。
これも初心者には少し難しいチェックポイント。テレビのパドック解説でも頻繁に「トモの踏み込みが力強い」「前脚のさばきが硬い」「コズミ(筋肉痛のようなもの)がある」などのコメントが登場するが、多くの場合は“言われてみれば”のレベルでしか理解できないだろう。そこでここでは、ごく初歩的なチェックポイントに留める。
好調馬の歩様はリズミカルで力強く、脚の捌きが非常にスムーズ。これを判別する最もシンプルなヒントとして、関係者が「状態は最高」「ピークの出来」などと強気のコメントしている馬は、パドックでこのような状態で歩いていることが多い。逆に体調の悪い馬は歩様に勢いがなく、脚捌きも硬い。
「踏み込みが力強い」状態とは、後ろ脚が地面に着地後、トモの筋肉が自動車のサスペンションのよう“ぐいっと”沈み込む状態をいう。また、ほかの馬よりもパドックの外側をぐいぐいと歩いている馬は好調で、さらに尻尾が臀部から離れているとより素晴らしい状態といえる。一方、パドック周回中に盛んに尻尾を振っている馬は、集中力に欠いた状態といえる。
距離の適性に関係なくオープン級の競走馬に共通するのは、筋肉の質が柔軟な点。調教師や厩務員のコメントで「全身がバネ」という表現を聞くことがあるが、単純に筋肉が発達していれば良いという訳ではない。筋肉は本来硬いものであり、そこに柔軟性が加わらなければバネにはならない。ただし、これは天性のもので、調教で得られるものではない。また、競走馬は年齢を重ねると筋肉のバネを失い、全体的な動きが硬くなっていく。パドックで筋肉の質を見分ける明確なマニュアルは存在しないが、丹念に一頭一頭をチェックしていけばその違いに気付くはずだ。これもやはり重賞レベルのサンデーサイレンス産駒を基準とするといいだろう。