ずいぶん昔のことになりますが、NYに住んでいた知人が休暇でパリに来ていたときのこと、「フランス人って、なんでこんなに臭い人が多いの?」と聞かれました。

彼曰く、NYだろうとどこだろうと、ホームレスの人間の近くに行けば当然臭気を発している、でもパリでは、一見普通の、社会的にも問題なさそうに見える一般的な身なりの人で、臭い人がいる、あれは何なのだ、フランス人の風呂嫌いというのは本当なのか?と。

実はわたしも、長い冬が終わって春が訪れが来たなぁ、と感じるのは、他でもない、「臭い」なのです。体を露出する服装の季節になればなるほど、その「臭い」が充満していっている気がします。

では、

1)フランス人は本当に風呂嫌いなのか?
2)あるいは風呂に入っても、体そのものが臭いのか?
3)そしてその臭いを隠すために香水が生まれ、みんな過剰につけているのか?

について、ちょっと考察(というほどでもないが)してみました。

(ちなみに、ここでいうフランス人とは、フランス国籍を持つ、アフリカ出身の人たちは含めないことにします。彼らはの生活様式は詳しくないし、体臭というのは食生活も大いに関係していると思うのですが、よく知らないので・・・。)

1)の風呂嫌いについては、わたしの知る限り、彼らはシャワーは一応浴びてはいるようです。ただ、夜寝る前に体を綺麗に洗って寝具に入ろう、という発想はあまりないのか、夜はそのまま(昼間の生活臭を持ったまま)寝てしまい、朝、浴びるケースが圧倒的。わたしは絶対に体を洗わないとシーツに上がれないタイプなのですが、フランス人に「寝る前にシャワーなど浴びたら、体が刺激されて眠れなくなるではないか」と言われたことがあります。わたしにとって、大好きなお風呂は沈静作用があるものなのですが、彼らにとっては刺激物ゆえ、就寝前にはふさわしくない行為のよう。

また、シャワーオンリーでオーライ、という人がほとんどで、バスタブに浸かりたい、という欲望はあまりないようです。まあバスタブとシャワーで臭いの差が出るわけではないので、この論争は今回は脇に置くことにしましょう。

しかし、シャワーを毎日という習慣は、おそらく最近の、若い世代の話。日本人の友人は30年前にフランス人結婚したとき、義理のお母さんに「毎日シャワーを浴びるなんて、娼婦みたいね」と言われた、と言っていました。その義理のお母さんというのはおそらく第一次大戦後くらいの生まれの人、その世代のフランス人にとっては、毎日シャワーを浴びるなんて「特別の職業の人以外は考えられないこと」だったのでしょう。その頃、浴室のないアパルトマンは普通でしたし、フランス人にとってお湯は高いもの、というケチケチ精神もありましたから。(今でもお湯を張るのは「高くつく」ゆえに、バスタブがあってもほとんどシャワーしか使用しないのです。)

(ドガのパステル画「Le Tub」- 19世紀末でもこんな湯浴みだけ!?)



2)では、シャワーを毎日浴びているのに、なぜ臭いのか?もちろん全員が臭いわけではなく、臭い人がいる、ということなのですが、まずは食生活。チーズや肉などの動物性たんぱく質を常に摂取している人は、やはり動物的な臭いがします。よく「大韓に乗るとキムチ臭い、JALに乗ると醤油臭い」と言われるように、その国の人の食生活の臭いというのは、自国の人にはほとんど感じられず、他国の人は敏感に嗅ぎ分けられます。

わたしは日本人なので、屋台のおでんやラーメンの香りを「いやだ、くさい」とは思わないのですが、ケバブ屋とかチーズ屋の前を通ると「くさい」と感じます(ちなみにケバブはきらいでチーズは大好物、でも味と「におい」は別なのです!)。

だから同胞のわれらが「臭い」と思っている人が、フランス人からは臭いと思われていない、ということも十分にありえるわけです。

ただ、生理学の専門家ではないので、詳しいことはわかりませんが、脇の汗腺については、いわゆる「腋臭」の人が多いのは事実。そして日本人だったら、絶対に臭わせてはならない、退治すべきものである腋臭を、「個性のひとつ」と考えている人が多いらしいのも事実。女性で「彼の体臭が好き」と言う場合、その体臭とはほとんど腋臭なのですから。

3)香水が臭気を隠すために生まれたものでないことは、もう学者たちが論証していますので、素人のわたしがとやかく言うことではありません。

18世紀、貴族から庶民まで、パリだけでなくフランス中が臭かった中にあって、みんなが臭いのだから(誰も一生に一度も風呂に入っていない)、いったい誰に対して臭いを隠さなければいけなかったのかを考えてみればわかります。この時代は、むしろ体を水にさらすことが悪であって、垢を体に残していることが「よい」と考えられていたのですから!

男性はより臭くなることが精力絶倫の証であり、(貴族の)女性は香水を使うことによって、体臭をいっそう引き立たせていたのです。だいいちこの時代の香水は動物性のもので、今のフルーティやフローラルなものでは全然なく、動物の内臓の分泌物から作られていたので、体臭と相まって相乗効果的に臭さを演出するものだったのです。

そういえば、1日3時間しか寝なかったナポレオンが、ある朝、睡眠不足がたまりにたまって起きてくれない、痺れをきらした部下がカマンベール(だったかな、何かのチーズ)をナポレオンの鼻にあてたら、寝言で「ジョゼフィーヌ、今晩は勘弁しておくれ」と言ったというのですから・・・。

においのお話、長くなりそうですので、続きはまた次回!

  • 2017.07.08 Saturday
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