同じ皮が剥ける作用でも・・・

トレチノインを顔に塗ると、数日後には顔の皮が日焼け後のようにポロポロと剥けてきます。同じように、顔にケミカルピーリングを行った後も、数日後に顔の皮が剥け始めます。

「顔の皮が剥けてくる」という作用は、肌のターンオーバーを促しており、通常は約40日程度で自然と剥がれ落ちるはずの古くなった表皮の角質層の角質を、薬剤を使って除去し、物理的に一枚顔の皮をめくり、見た目の肌を新しく入れ替えます。

ところが、一見効果が同じように見えるトレチノイン療法とケミカルピーリングですが、肌の内部で起きていることは全く違うのです。

ケミカルピーリングは酸で角質層を溶かす

フルーツ(AHA)酸、サリチル酸、TCA(トリクロル酢酸)などの"酸"によって、皮膚を表面から化学的に溶かして古い角質を除去したり、角質層のさらに奥まで浸透させて、火傷時のような状態を意図的に引き起こし、傷を治す際に生成されるコラーゲンやヒアルロン酸などによって肌の若返りを実現させる方法をケミカルピーリングといいます。

(ここでは、作用が一番弱いフルーツ酸(AHA)によるピーリングで説明します。もっと詳しくケミカルピーリングについて知りたい方は「ケミカルピーリングの種類」をどうぞ。)

フルーツ酸(AHA)は、角質層にある角質細胞同士をつなぐ「手」のようなものを酸の力で溶かしてしまいます。

すると、角質細胞は自由の身になるのでどんどんと肌から剥がれ落ちていきます。

これが剥けていく顔の皮です。表皮の一番上にある外界からダメージを受けている皮が剥けることで、ダメージを受けていないきれいな角質細胞が新たに表皮となります。例えるなら、タマネギの茶色い皮のようなもの。泥のついた汚れた皮を一枚めくると、綺麗な茶色い皮が出てきます。

これがフルーツ酸(AHA)を使ったケミカルピーリングによる美肌の原理です。

フルーツ酸(AHA)ピーリングによる効果

フルーツ酸(AHA)は、角質細胞の「手」を溶かして古くて汚れた表皮を物理的に一皮剥いてしまいます。

表皮にはメラニン(いわゆる日光性のシミ)も存在し、表皮と一緒に剥がれ落ちるのでシミが薄くなります。

さらに、フルーツ酸(AHA)によって繋いだ手がほどけてしまう角質細胞は、そもそもが不健康で怠け者ないわゆる"不良"達。酸に負けずに残った優良な角質細胞はせっせと本来自分がやるべきことを行います。

角質細胞の本来の役割は、外部から細菌や病原菌、有害物質などの侵入者を妨げること。角質細胞自体はケラチンと呼ばれる繊維状のタンパク質を主成分に構成されていて、細胞壁はとても厚く、固いのです。角質細胞の間にはゼリーのようなプルプルとした「細胞間脂質(セラミド)」があり、これによってお肌に柔軟性が保たれ、潤いに満ちた触っても柔らかいお肌(表皮)の質感が実現しています。

自宅で行う手軽なピーリングの深さを肌の断面図で見てみると、こんな感じ。

表皮角質層が薄くなり、古い角質が溜ったゴワゴワな質感の肌が一掃され、綺麗な角質層が表に出てくると同時に薄くなった角質層の下からは血管などが透けて見えるようになるので、血色の良い肌色に変わります。

継続して適度なピーリングを行うことは、遅くなった肌のターンオーバーを正常に戻し、シミや肌のくすみ、ゴワツキなどを長期間肌の上に留めずに取り除いてくれるので美しい表皮を保つためには有効です。

ケミカルピーリングによる美肌効果は、"酸"の力を利用して化学的に皮膚を溶かすことによって働く自然治癒力を利用したものなので「ピーリングの深さ=効果の大きさ」となります。

トレチノインは細胞に働きかける

ケミカルピーリングと同様に塗ると数日後にか顔の皮が剥けてくるトレチノイン

見た目は同じでもカラダの中で起きていることが違うんです!

トレチノインを塗った時に顔の皮が剥けるのは肌の内部でこんなことが起こっているからです。

①表皮の基底層にある表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖を刺激して細胞分裂を促進します。

②分裂した細胞の一つは下から上へと移動し、最終的には角質層から飛び立つように剥がれ落ちていきます。

トレチノインによる皮剥けは、基底層にある表皮細胞(ケラチノサイト)の細胞分裂を促すことによって起きているのです。ケミカルピーリングのような無理やり感がないのがトレチノインの特徴です。

さらに、もうひとつのトレチノインの役割は、真皮におけるコラーゲン産生を促進すること。この作用により真皮でコラーゲン生成を、表皮では細胞を増殖させることによってターンオーバーを正常化し、真皮では薄く痩せてしまった肌をふっくらと厚みを持たせることによって小じわを目立たなくさせることができるのです。

ケミカルピーリングとトレチノイン療法の違いとは

ケミカルピーリングは薬品で皮膚を溶かすことで故意に肌に損傷を与え、傷を治すために生成されるコラーゲンやエラスチンなどによって肌にハリを与え、小じわやシミなどを目立たなくさせたり肌の質感をアップさせたりする自然治癒力を利用した美肌法。

トレチノイン療法は、トレチノイン(レチノイン酸)そのものが真皮にある線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンやエラスチン生成を促進させたり、表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖を促進するのでお肌のターンオーバーの遅れが改善され、シミや小じわなどが目立たなくなります。

ケミカルピーリングとトレチノイン療法、どちらも細胞を活性化させることには違いないけれど、肌に損傷を与えずに活性化できるのはトレチノイン療法です。