EC療法

EC療法は術前または術後に行う治療(初期治療)および転移再発乳がんに対して適応となる化学療法です。
ECというのは以下の3種類の抗がん剤の頭文字をとったものです。
エピルビシン(商品名:ファルモルビシン)
シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)

3週間に1回、点滴によって投与を行い、初期治療においては4サイクル(3週間×4)の治療を行います。

StageⅠ〜Ⅲの乳がんに対する初期治療(術前または術後)では、リンパ節転移陽性の場合や、リンパ節転移が陰性であっても再発リスクが高いと考えられる場合などに用いられます。

術前、術後などの初期治療に用いられる抗がん剤の中では、現在最も効果が高い治療法のひとつですが、副作用などもそれなりに覚悟しなければなりません。

まず必ず起こるのは脱毛です。その他の副作用はどれも個人差があるのですが、EC療法を受ける患者さんを見ていて個人的な印象としては、もっとも辛そうな自覚症状は嘔気を含む食欲低下や倦怠感などであり、症状が強く出た場合は投与後1週間~10日ほど続く方もいます。あとは好中球減少、発熱などが比較的多くみられます。副作用の多い少ないはあまり年齢とは関係なく、比較的年齢の高い方でも脱毛以外に目立った副作用が現れない方もいます。ただし私の施設では、80歳を超える高齢者の方や、それより若い年齢でも様々な基礎疾患を有する場合などには、抗がん剤治療そのものによって体調を悪くしてしまう、場合によっては命にかかわる副作用がでるリスクが高い場合には基本的におすすめしていません。

ふだん治療の説明の際にお話ししているもう少し詳しい内容を書くとすれば、以下のような副作用が起こる可能性があります。

◆副作用
・好中球減少
投与から7~14日後に最も少なくなり、細菌に対する抵抗力が弱くなります。好中球の減少によって、発熱を生じた場合は「発熱性好中球減少症」と呼ばれ、重篤な感染症を引き起こす場合があるため抗生物質の投与や好中球を増加させる薬剤(G-CSF製剤)を用いることで細菌に負けないようにします。
・悪心・嘔吐
EC療法は吐き気に関しては「ハイリスク」に分類され、比較的吐き気の症状が出やすい抗がん剤治療です。
吐き気は急性(抗がん剤投与中〜24時間以内)のものと遅発性(抗がん剤投与後24時間以降〜数日間)に分かれています。そのため、通常は抗がん剤投与前の点滴に吐き気を予防する薬を用いたり、抗がん剤投与後家に帰ってからの飲み薬として吐き気止めを処方します。近年ではこうした吐き気を抑えるための薬物療法が確立されつつあり、以前に比べると吐き気に苦しむことがだいぶ少なくなっているようです。

・倦怠感(体のだるさ)
抗がん剤の投与後数日はだるさがでる場合があります。吐き気を抑えるための薬には眠気を誘発する作用のある薬もあるため、こうした影響によっても眠気やだるさが出る可能性があります。

・脱毛
EC療法において脱毛はほぼ必発です。初回投与後2〜3週後から脱毛が始まり、それから1週間ほどでほとんどすべての毛髪が抜け落ちます。抗がん剤の治療が終了後、数ヶ月かけて徐々に再生してきます。
・心機能低下
EC療法においては特にエピルビシンによって心臓に対する副作用が出ることがあります。心臓のはたらきが低下すると、血液を体に送る心臓のポンプ機能が弱まるため、体を動かしたときの息切れがひどくなったり、心拍数が増加して動悸を感じることが多くなったり、むくみがひどくなったりするなどの症状が現れることがあります。
薬の投与量が増えるほど心臓に影響を与える可能性が高くなるため、エピルビシンは一生涯に投与できる限度が決まっています。初期治療においては限度を気にする必要はありませんが、転移再発乳がんに対する治療に用いる場合はそれまでの治療歴などによっては投与できる回数が限られる場合があります。

・下痢
腸管の粘膜の細胞がダメージを受けると下痢を起こします。頻回な下痢症状の場合は脱水症状を起こしかねないため、整腸剤や下痢止めの薬を使って下痢を止めることが大切です。

・口内炎
口の中の粘膜の細胞がダメージをうけると口内炎ができやすくなります。うがい薬で症状が緩和されます。
歯みがきをして口の中を清潔に保ち、感染を起こさないようにしましょう。

・血管炎
点滴中や点滴後に血管に沿って痛みを生じる場合があります。抗がん剤はがん細胞をやっつける刺激の強い薬であるため、薬剤が血管から漏れ出した場合は腕が腫れたり、皮膚がただれたりすることがあります。こうした副作用を防ぐためには、中心静脈ポートを留置する方法もあります。

・月経の停止
閉経前の場合は、抗がん剤の影響で月経が止まることがあります。抗がん剤は卵巣に影響することで、例えるならば卵巣の加齢を進行させます。抗がん剤投与開始時の年齢によっては、そのまま閉経に至る場合もあります。
治療終了後に妊娠の希望がある場合には、卵子凍結などの方法もありますので、治療開始前に主治医の先生とよく相談してください。

・間質性肺炎
特にEC療法で多いということはなく、あらゆる薬で起こりえます。微熱が続いたり、咳や息切れなどの症状が治りにくい場合は必ず受診をしましょう。重篤化すると命に関わる場合があります。

・貧血
特にEC療法で多いと言うことはありませんが、抗がん剤によって骨髄で赤血球が作られるはたらきが抑制される
と貧血が進行することがあります。

・血小板減少
特にEC療法で多いと言うことはありませんが、抗がん剤によって骨髄で血小板が作られるはたらきが抑制される
と血小板減少が進行することがあります。重篤な血小板減少では出血に注意が必要です。