V字経営のV字には2つの意味があります。
第1は、渡り鳥が飛ぶときの「V字編隊」のV字です。
第2は、渡り鳥が編隊を組んで目指す行き先=ビジョンのVです。
この点について説明します。
渡り鳥のV字編隊は「理想の会社」の姿
よく「V字経営は、V字回復のV字ですか?」と尋ねられます。たしかに、業績が低迷していたり、下降気味の会社が当社の「V字経営」を導入したとたんに、業績が上昇して再成長軌道に乗ります。その姿は、ある意味V字回復といえないことはありません。
しかし、会社がV字回復するかどうかは、結果でしかありません。それよりも大切なことは、現状があるべき姿から大きく離れてしまっているときに、社員の皆さんが今のやり方を自分たちで見直し、何をどう変えていくべきか、自ら考え実行する「事態打開力」であり「自己成長力」をつけることです。
経営者の皆様が求めているのは、V字回復という結果だけでなく、それを生み出す体質です。「事態を打開する知恵」が、いちいち社長が指示しなくても社内から次々と湧き出てくる自由闊達な会社であること。そして、一度決めた施策を、最後までやり切る粘り強い会社であること。これこそが経営者が求めている会社の姿です。
私たちは、そのような会社づくりお手伝いを第一に考えています。その「理想の会社の姿」が、「雁行」といわれる渡り鳥のV編隊飛行です(図1①)。
近年、英ロンドン大学やオックスフォード大学などの研究で、渡り鳥がV字編隊を組む科学的な根拠が明らかにされました。それによると、雁やトキなどの大型の鳥が飛ぶと、翼の先端からその斜め後方に上昇気流が発生します。すると、後続の鳥はその浮力を利用してエネルギーの消耗が少なくてすみます。
そのため、同じエネルギーで推進力が50%〜70%もアップします。つまり、V字編隊を組むと、同じエネルギーで、ずっと多くまで、大勢が、落伍者を出さずに長距離を飛行できるのです。
ここで注目したいのは、先頭を飛ぶのが必ずしもリーダーではないということです。先頭は疲れるので、後方の鳥と釣り合いをとって時々交替します。しかも先頭役は、幼い鳥を除いて、家族単位で成鳥が引き受ける役割分担もできています。さらに、「私には荷が重すぎるから嫌だ」と先頭になろうとしない「タダ乗り」の鳥は一羽もいません。全員に、チームのためにという当事者意識があるのです。渡り鳥は種類によっては最長で1万km以上をノンストップで飛行します。どうしても辿りつきたい目指すべき場所=Visionがあるからです。そのための知恵が「V字編隊飛行」なのです。
一方、図1②は、力のあるリーダー鳥が先頭で後続を引っ張る縦列編隊です。このスタイルは、リーダー鳥が強ければ成功するように思えますが、振り返ったら誰もついてきていない、というリスクがあります。また、後ろを行くメンバーは当事者意識が希薄になりがちです。
そして、最大のリスクは、先頭を行くリーダー鳥がこけたら群れ全体が終わってしまうことです。「正直言って俺も疲れているよ。が、ほかの誰に先頭役を任せることができるというんだ?あいつもこいつも、先頭にしたらすぐにヘタってしまう」なんて、リーダー鳥の嘆きが聞こえてきそうです。
実は、こんな縦列編隊で飛ぶ渡り鳥はいません。縦列型の飛び方が自然の理に反して非効率であり、長距離飛行=Visionの実現に向いていないからです。
このことは鳥に限ったことではありません。クルマのエンジンもハイブリッドで、状況に応じて自動で切り替わる時代です。蒸気機関車のような、先頭車両だけが煙を吐いて引っ張る時代は過去のものになりつつあります。
ところが、会社組織の中には、未だにカリスマ型の会社が多数あります。一部のリーダーがメンバーを一人で引っ張っていく姿です。100年続く繁栄を目指す会社が、このような姿で本当に100年続くでしょうか?カリスマ退任後、それまで掲げていたVisionの実現を、「その実現は自分が引き受けた」と継ぐ人が現れるでしょうか?
昨今、後継者不足が言われています。当社はその要因のひとつに「現社長がやってることすべてを一人で全部背負う。会社の未来を考えること、全社員に今何をすべきか、その指示命令を全部一人でやらなければならない」という現実が、後継者たちの負担になってるのではないかと思います。
当社の指導経験から言えば、少人数の企業ならそれも可能でしょう。が、社員数が30人以上の大所帯になると、それを築いて来たカリスマ社長とは違い、一人であれこれ指示命令することは困難です。会社が大き過ぎて、一人の後継者では目が届かないからです。
それなのに多くの会社の役員会は、後継者が会社を継いだ後も、カリスマ時代と同じように後継者の指示をただ待つだけです。その場合は、後継者が一人で継ぐよりも、後継者を中心とした「次世代経営チーム」をつくり、次世代経営チームで継ぐことがより自然です。
先頭に立ち会社を引っ張るのは、そのときそのときもっとも活躍が求められる部門です。営業力が必要な時は営業部門が、生産体制強化が必要な時は生産部門がけん引役となります。大切なことは「お客様にとって良きことを、わが社の良きこととする」姿勢です。そのために知恵を出し、結果を求めて活躍するのはチームメンバーたちです。そして、後継者はその方向性の決定と結果に対し全責任を負うのです。
このような次世代経営チームの姿こそが、次世代の経営の理想の姿だと当社は考えています。遥か彼方のゴールを目指すために、V字編隊を組んで飛ぶ渡り鳥は、そのモデルなのです。