医師ががんを疑うのはどんなとき?
普通の診療は、比較的穏やかなもの。しかし、そんな中でも、医師が、ぴくりと反応するフレーズがあるのです
「先生の顔を見ると、元気が出ます」という、医者冥利に尽きるような一言を聞くことは、医師を志した私の原点に響くことでもあり、外科医時代とはまた違った喜びがあります。薬の内容も、それほど特殊なものは多くなく、ちょっとした世間話をして、体調をお尋ねし、血圧測定や聴診を行います。そして、前回の処方をチェックして、お薬を新しく処方するという、比較的穏やかな診療風景です。
しかし、そんな穏やかな診療の中でも、「あれ?」と思うことがあります。詳しく調べてみて、がんが発見されたもあります。つまり、特別専門的な検査をしなくても、「がんでは?」と思う症状があるのです。今回は、医師である私たちが、どんな点を日常的にチェックしているのかを、お話しましょう。
体重減少
特にダイエットをしたわけでも、運動量を増やしたわけでもないのに、急激な体重減少がある場合には要注意です
特に、1~2ヶ月で10~15%以上の体重減少(60kgの方の場合、6~9kg)が見られる場合は、やはり注意が必要です。洋服のサイズが合わなくなったり、ズボンやスカートがぶかぶかになるなどの自覚があり、周囲の方も気づくような状態になります。
がんが体の中にあると、エネルギー消費の増加に加え、がんのできた部位によっては、食欲が低下することもあり、いつも通りの生活をしているつもりでも、体重が減少してしまうのです。
便の異常
日本では、消化器のがん、すなわち、胃がんや大腸がんが多いですが、これらのがんの症状の多くは、便の異常となって表れます。■ 色調の異常
便の異常は、日本人に多い消化器系がんで見られる症状で子あります。長引く症状がある場合には、要注意です
■ 便通の異常
長引く下痢や、頑固な便秘といった、便通異常は、大腸のがんに関する注意信号です。もちろん、下痢や便秘も、一般的な症状です。しかし、通常の下痢止めや便秘薬が効かない、もしくは、下痢や便秘を繰り返す、といった症状の場合には、やはり、注意が必要です。
進行する貧血
何となくからだがだるい、息切れがする、めまい・ふらつきがある、といった症状は、通常の肉体疲労や、がん以外の疾患でも見られる症状です。貧血の症状としても多いです。ただし女性の場合は、多かれ少なかれ、貧血があることがほとんどなので、一回だけの血液検査や健康診断の結果だけで判断することはできません。重要なのは、進行する貧血です。例えば生活習慣病でかかっている医療機関の3ヶ月ごとの血液検査で、ヘモグロビン値が、13mg/dlから、10mg/dlに下がるなど、7~8割以上の低下が見られる場合は要注意。
出血の原因は、消化器系(胃がんや大腸がん)のこともあれば、泌尿器系(腎がんや膀胱がん)、婦人科系(子宮がんや卵巣がん)のこともあります。
進行する貧血は、自覚症状のみではわかりづらいので、医療機関での血液検査が必要です。もし、貧血かな?と思っても自己判断せず、やはり採血して調べておくのがよいでしょう。
虫の知らせも大切に…気になるときは健康診断・人間ドックを
最後に紹介するのは少し非科学的な内容になってしまうのですが、虫の知らせを大切にしている医師も多いと思います。「何となく気になる……」というケースで、調べてみたら早期のがんが見つかったというケースは、医師の多くが経験していることではないかと思います。これは患者さんも同じ。今回、ご説明したような症状に加え、ちょっと、心配だなぁと思われたときには、会社や自治体の健康診断をきちんと受ける、また、場合によっては、人間ドックを受けてみるといった行動を起こすことも大切です。
自己判断での心配しすぎもよくありませんが、何か気になることがあれば、まずは、お近くの内科の先生の診察をお受けになってみて下さいね。
【参考サイト】
体重減少はがんのサインって本当? (All About がん)
「黒っぽい色の便」は胃がんの疑い?(All About がん)