ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 【もんめ5】☆いち兄のダイエット大作戦☆【つるいち】2017年5月7日 21:39☆いち兄のダイエット大作戦☆ 小春日和、縁側で弟たちと食べるおやつの時間が、近侍としていつも忙しくしている一期一振の至福の時であった。「本日は鶯餅ですか、」「かわいい~」 ほんの三つ指で摘まめる程の小さな求肥で餡を包み、緑色のきな粉をまぶした物である。鶯の形に似せた菓子は食べてしまうのが勿体無いほどであった。「お茶が入りました。」 前田藤四郎と平野藤四郎が盆にたくさんの茶を載せてやってきた。粟田口派において茶を入れさせればこの二人の右に出る者は居なかった。玉露の香りが拡がる。 お菓子とお茶が揃えば毎日恒例、粟田口のお茶会の始まりだ。「美味しい~♡」「休憩も大切だよな、」「ほら、きな粉がついてるよ、」「もちもちですぅ~」「そうだな、もちもちだな、」 背後から声がしたかと思うと一期一振はふにっと脇腹を摘ままれた。突然粟田口一派の中に白い鶴が舞い込んだ。「な、鶴丸殿!?」「よ、今日は鶯餅か。」 鶴丸さんもどうぞ、と五虎退が鶯餅を差し出してくれた。ありがとう、と言って受け取ると平野がお茶を煎れてくれた。「美味いな。今日の茶菓子当番は大包平か、」「鶴丸殿。いい加減その手を放して下さい。」 美味そうに菓子を頬張る鶴丸に、一期一振が脇腹を摘まんだままの手を指摘した。ふにふにと感触を楽しむように摘まみ続けている手をぴしゃりと叩き落とした。「いやぁ、美味そうな感触だなと思ってな~」「辞 め て く だ さ い。」「いち兄のおなか、おいしいんですか?」 一期一振と鶴丸の間から秋田藤四郎が顔を出した。キラキラした真っ直ぐな瞳で見つめられ、一期一振は返答に困ってしまった。そんな二人を見て鶴丸は噴き出してしまった。「っふ、ははは!そうだぞ~最近は特に柔らかくてな~」「うわぁ~♪」「鶴丸殿!!!!………分かりました。そんなに言うなら私にも考えがあります。」「一振…?」* * * 翌日から一期一振は徹底した食事制限を始めた。糖質を抜き、野菜と魚をメインとし、肉は赤身を選んだ特別メニューを料理長の燭台切光忠に用意してもらった。鍛錬も今まで以上のメニューをこなした。 毎日恒例のお茶会にも顔は出しているが、茶菓子は口にしなかった。「いち兄また食べないんですか?」「いいんだよ、私の分は皆で分けなさい。」「なぁ君、そこまでしなくてもいいんじゃないか、」 一期一振が弟たちに菓子を渡している横で鶴丸は本日のおやつ、かりんとうを齧っていた。江雪左文字手作りのかりんとうは少し柔らかく、ちょうどいい甘さで弟の小夜左文字の大好物だった。「いいえ。吉光の刀として恥じない姿でいるためにも弛んでいた生活を見直すいい機会です。」「そんなの俺と毎晩布団で鍛錬すれば」「何か、言いましたか。」「…イイエ、」 鶴丸は笑顔で制され静かに茶を啜った。 しかし甘味が大好きな一期一振が甘味絶ちとは、いつまでもつか…少々の不安はあるが、鶴丸はしばらくこのまま見守ることとした。 一期一振が甘味絶ちをしてひと月が経とうかという頃、いつも通り粟田口お茶会のご相伴に預かりに来た鶴丸は、一期一振の異変に気付いた。 いつの通り弟から湯呑を受け取り茶を啜る。菓子は秋田藤四郎や五虎退など末の弟たちが分けあっていた。その光景を見守る一期一振の視線が何かおかしいのだ。「…一振、何かあったのか?」「何もありませんが…?」 一期一振は何でもないというが、明らかにその目はいつもと違って見える。気力というか、何かが欠落しているというような…… 鶴丸はハッと何かに気付き、おもむろに自分の手にしていた本日の菓子、みたらし団子を一期一振に差し出した。「一振、これをやろう、」「え、いえ、これは鶴丸殿の分。それに私は現在だいえっと中ですので、」「いいから、一口くらい食べてみろって。光坊のみたらしが絶品なのは知ってるだろ?食わなきゃ勿体無いぜ、」「いえ、でも、だいえっとが、」 遠慮する一期一振の口に強引にみたらし団子を押し込んだ。ひとつ、串から抜きもちもちとした触感を味わう。あまじょっぱいみたらしの餡が口いっぱいに広がると、一期一振の瞳が輝いた。「な、美味いだろ、」「……はい、」 幸せそうに食べる一期一振を見て鶴丸もホッと嬉しさが零れた。「やっぱり無理はよくないよなぁ、」「無理はしておりませんぞ!」「いや、さっきまでの君の目は死んだ魚のそれだったからな、」「そんな…!」「あー!いち兄おやつ食べてる!」「よかった~」「いち兄元気出た?」「もうだいえっとは終わりですか?」 みたらし団子を頬張る一期一振に気付いた弟たちが集まって来た。皆一期一振が甘味を口にしているのを見て嬉しそうだ。「おやつ食べなくなってから、いち兄何だか元気なかったから…」「また一緒におやつ食べましょう!」「食べよう!」「お前たち…、」「な、我慢はよくないぜ、」「えぇ、また皆で食べましょう。そうだ、明日は私が当番だから皆の好きなものを作るよ!」「やったー!!」 縁側に楽しいお茶の時間が戻ってきた。忙しい毎日の中、皆で過ごす至福の時をこれからも。 こうして一期一振のダイエットは終わりを迎えたのだった。「俺は柔らかい方が触りがいがあって嬉しいしな、」「真っ白い大福にして差し上げましょうか」終