診療だより
しみ(ルビーレーザー)の記事一覧
レーザー治療に関わり始めたのは虎の門病院皮膚科に国内留学したのがきっかけです。
それから10年以上が経過しました。
その頃の虎の門病院には赤アザ用のダイレーザー、シミ用のルビーレーザー、Qスイッチ
アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーがありました。
このブログで何度も書いていますが、虎の門病院の大原国章先生の臨床能力はとてつも
なく凄いです。手術以外にレーザー治療でも多くを学ばせてもらいまいした。
レーザー治療の中で強く感じたことがありました。
「太田母斑のようなアザ治療はアレキサンドライトレーザーも効果があるが、シミ(老人性色素斑)は
アレキサンドライトレーザーよりもルビーレーザーのほうが効果が高い」。
このことは虎の門から名古屋大学皮膚科に帰局した後もずっと頭にこびりついていました。
大学にいる8年間、名東区の病院で週に一回、皮膚科の外来をしていました。
その病院にはQーアレキサンドライトレーザーがありました。
個人病院です。レーザー治療の対象はシミがほとんどです。
シミ治療は自費診療ですから金額も数万円単位と高額になります。
当然、患者さんはシミが跡形も無くきれいに取れると信じています。
治療結果は? よい結果もあり、よくない結果もある。
患者さんへ対応が大変でした。「必ずきれいにとれる保障はないですけどいいですね」と
何回も説得して承諾書まで渡してレーザー治療していました。
美容先進国アメリカではQ-YAGレーザー、アレキサンドライトレーザーはタトーレーザーとして
位置づけられていると知り合いの美容外科医から聞きました。
そうです。タトー(tattoo)刺青を治療するレーザーなのです。
たしかにQ-YAG(532nm)は赤色の刺青(いれずみ)を消すには必須です。
レーザーにはそれぞれの役割があるのです。
問い合わせの多いADM(両側性遅発性太田母斑様色素斑)について再考。
週に2人くらいの割合で外来初診で見かけます。想像以上に多いので驚いています。
開業する以前の私は鑑別ができていなかったのでしょう。 やぶでした、以前は。
なかにはエステに通って治療を受けている人がいます。
エステではADMはいくらお金をかけても絶対に改善しません。私が保障します。
Qスイッチレーザーしか効果がないのが医学的事実です。
ではQスイッチレーザーの中でどれが最も有効か?
葛西健一郎先生の名著「シミの治療」より抜粋します。
ADMの効果について点数がかかれています。
ルビー 95点、アレキサンドライト 70点、YAG 60点 となっています。
波長はルビー 694nm、アレキサンドライト 755nm、YAG 1064nm です。
メラニンに最も吸収がよいのはルビーの694nm、深くまで進むのは波長が長いYAGの1064nmです。
ADMは太田母斑にくらべれば真皮に増生したメラノサイトは浅いところにあります。
だからこそ太田母斑のように青くはなく、灰色~褐色を呈するのです。
「An Atlas of Surface Microscopy of Pigmented Skin Lesions」 より引用
私が言いたいこと。
ADMの治療で大切なのは波長+レーザーの照射時間ではないでしょうか?
Qスイッチレーザーの照射時間は、
ルビーが20ns、アレキサンドライトが50-100ns、YAGが10nsです。
葛西先生はルビーの波長694nm 照射時間 20nsが真皮メラノサイトを破壊するのにちょうどよいのでは
ないかと推測しています。
真皮浅層で増生したメラノサイトをいかにたたくか。これが治療の鍵でしょう。
また話がずれます。
ADM、太田母斑にアレキサンドライトレーザーはそこそこ効果があります。
シミにはダントツでルビーが効きます。
知り合いの多くの形成外科医が同意しています。
日本では皮膚科医よりも形成外科の先生がレーザー治療を積極的に行う傾向があります。
私の8年間のアレキサンドライトレーザーの治療経験、クリニックを開院してからの
トライバンテージ(Q&マイクロセカンドのアレキサンドライトレーザーとQ-YAGレーザーの
複合機)、メドライトC6(Q-YAGレーザー)の治療経験に裏打ちされた事実です。
私は自分の目で見た結果しか信用しません。
シミ治療の切れ味は機種ではなく、出力の問題に過ぎないと言われる先生もいるようです。
複数のQスイッチレーザーでの治療経験が少ないように思われます。
レーザー治療は理論が先行しますが、治療結果とギャップがあるのが普通です。
フォトRF治療のSRからSRAハンドピースの開発、フラクセルレーザーの進化などは
そのことを如実に物語っています。
ADMにルビーとYAGのどちらがより有効か?
私には断言するだけのYAGレーザーでのADM治療経験がありません。
以前にもこのブログに登場した患者さんを再度提示します。
頬部に小斑状の灰褐色斑があり、典型的なADMの皮疹です。
ルビーレーザーを1回照射して1年間がたちました。
治療は1回だけです。
1回の治療でここまで改善したらまずまずではないでしょうか。
ADMの治療にはQスイッチルビーレーザーが優れています。開高 健先生の言葉を引用します。
「いい物を手にすると大きな悲しみも待っている。いわゆる知る悲しみだ」
「いったん知ってしまえば知らなかったときには戻れない」
さすが開高文豪、心に響く言葉です。
しみ治療にあたり、ルビー、YAG、アレキサンドライトの3つのレーザーを試しました。
始めはメンテナンス費の安いQ-YAGレーザーが購入候補でした。
しかし、切れ味が違うのですよ、ルビーは。
美容外科で照射された例のひと。
レーザーは効かないと半信半疑。説得して一つ照射。
信頼を勝ち得たところで、残りを照射。
しみが痂皮となってぺろりと取れるこの瞬間が私は好きです。
まだちょっと赤いです。遮光しっかりしてくださいね。
お化粧が楽しくなったと。よかったです。もっとなじみますよ。
Qスイッチルビーレーザーは大変デリケートな機械です。
年に4回ほどメンテナンスを受けます。年間100万円近くのランニングコストがかかります。
最初はQ-YAGレーザーを購入してお茶を濁そうと思いました。
肝斑にはYAGの空中照射ですよ~、なんて商売っ気をだして稼ごうかとも思いました。
でもルビーの切れ味を知ってしまうと・・・。
知る悲しみです。
この機械、金かかんな~、と悲しい時もあります。
そんな時は文豪の言葉で慰められます。
「知らない悲しみよりも知る悲しみのある人生のほうが高級だ」。葛西形成外科さん(大阪)を訪れる機会に恵まれました。
葛西健一郎先生は日本で有数のレーザーの大家です。
葛西先生のことを知ったのは書籍「皮膚科診療プラクティス 17 Rejuvenationの実際」文光堂が
きっかけです。この本は葛西先生がゲスト編集でした。
その頃はまだ勤務医でしたが美容皮膚科とはなんぞや、との問いかけに惹かれたのを覚えています。
続いて購入した「シミの治療」文光堂はさらに衝撃的でした。
シミとはなんぞや? 正しい治療とは何か?
葛西先生の長年にわたる経験に裏打ちされた理論に衝撃を受けたのを覚えています。
クリニックを臨時休診して葛西形成外科さんに行ってきました。
日常診療で疑問に思っていることはたくさんあります。
●Qスイッチレーザー後のテープは10日間がベストなのか?
●Qスイッチレーザー照射後の炎症後色素沈着、消退しないものもあるのか?
●Qスイッチレーザー照射後に残った老人性色素斑の再照射はいつが適切か?
●ADMの本当の最適照射モードは何なのか?
●Qスイッチレーザー、ルビーとYAGの使い分けはなにか?
●Qスイッチレーザー照射後のハイドロキノン軟膏の外用は本当に意味があるのか?
などなど。
全てに満足のいく答えを頂くことができました。
2日間でしたが間違いなく私のレーザー治療は深まりました。
左から山村先生、葛西先生、しんちゃん先生です。
葛西先生の外来、治療を見させてもらいました。
1歳児の顔半分に及ぶ先天性母斑のレーザー治療。
すごかったですよ。この治療をやりぬく葛西先生の覚悟を肌で感じました。
「オレにしかできないんだ」という熱いパッションがびんびん伝わってきました。
こちらの心も揺さぶられましたね。
この患者さんのためにQスイッチレーザーのハンドピースを特注であしらえる程です。
常人にはできませんよ。本気の覚悟です。
葛西先生はしみ・あざ治療で有名ですが、手術も素晴らしかったです。
この日は腋臭症の手術を見学しましたが、片側でわずか20分でした。
縫合のコツも興味深かったです。
ある意味、葛西先生は天才的な先生です。ちょっと真似はできませんね。
閑話休題。
私がレーザー治療のバイブルとしている「しみの治療」にサインを頂きました。
この本は最低でも20回は読まないとダメですよ。
内容の関係上、ブログでは書けないこともたくさんあります。
私が心に残った葛西先生語録を少しだけ書きますね。
「相関関係と因果関係の混同」
「real と illusion」
「迷ったら強く照射する!」
「赤みは2種類ある。紅斑症と毛細血管拡張症である。紅斑症には炎症が伴っている。」
●ハイドロキノン軟膏の外用で炎症後色素沈着が軽減したのではなく、外用に伴う遮光、患部の丁寧な手当てが
炎症後色素沈着を軽減させている可能性がある。相関関係と因果関係を混同してはいけない。
●Qスイッチレーザー、炭酸ガスレーザー、脱毛レーザーはreal な治療である。結果が写真で分かるから。
サーマクール、フラクセルレーザーはillusion(幻想的) な治療である。結果が写真に現われないから。
●炎症が原因の紅斑症(例えば酒さ)の治療は炎症を抑えること。
フラッシュランプ治療は炎症がない器質的疾患にのみ有効である。
これ以上書くと、レーザーメーカーからクレームがきそうなのでもう止めますね。
この治療がどうして効いたのか、または効かなかったのか?
臨床結果からフィードバックして理論を構築する。
レーザーメーカーの言うことを鵜呑みにしているような先生はちょっと反省したほうがよいですね。
当たり前ですがレーザーメーカーは一台でも多く売ることが最優先目的です。
この症例覚えていますか?
notoriousな某美容クリニックでレーザー照射を受けた患者さんです。
以前にもこのブログに登場しました。
今の私なら全て分かります。
このしみは炎症後色素沈着ではなく、照射の誤りである!!
このまだらな色調は照射パワーが不十分です。低すぎるのです。
またまだらになっているところを見ると、照射にムラがありかなり雑です。
ビームプロファイルが一定でなく、粗悪なレーザーで照射を受けている可能性があります。
レーザー治療もすべては理論なのです。
そのことを葛西先生から教えて頂きました。60歳の女性です。シミの相談です。
左頬部に大きな色素斑が2つあります。まだらな色調なのが気になります。
3年前に某美容外科クリニックでレーザー治療を受けたそうです。
いったんはきれいになったがすぐにシミが戻った、とのこと。
そのクリニックのホームページを見るとQスイッチYAGレーザーを使用されています。
いったんはきれいになった?
と、すると炎症後色素沈着後が遷延しているのでしょうか?
通常は半年以内で消退します。こんなに遷延することはありません。
もしこの患者さんが他院で治療を受けた直後ならば、最低半年間は経過観察とします。
しかし3年が経っているのです。
色素斑がまだらな色調を呈していることから察すると、適切なレーザー照射をされていない可能性が大です。
このまだらな照射はちょっとひどいですね。
しみ治療ではIWP(直後の白色変化)を確認しながら、照射エネルギーを調整しながら照射することが大切です。
迷わず、最強のQスイッチルビーレーザーを照射します。
照射11日後です。痂皮がぺろりと取れました。
とりあえず、外側の色素斑のみ照射しました。痂皮がとれた状態です。
とてもきれいになっていますが、まだちょっぴり赤いですね。
照射2ヶ月10日後です。
炎症後色素沈着は出現していません。とてもいい状態です。
照射3ヶ月後です。この時期に炎症後色素沈着が出現していなければもう大丈夫です。
本当にきれいなりましたね。ちょっと本人もびっくりしたみたいですよ。
なんだか、残った内側の色素斑が目立ってしまいますね。
いずれこちらも治療しましょう。
やはりルビーレーザーはヤグ(YAG)、アレキサンドライトとは切れ味が違うようです。ADM ( acquired dermal melanocytosis )
日本語では両側性遅発性太田母斑様色素斑、後天性真皮メラノサイトーシス
などと呼ばれています。
20歳ころから両頬、おでこ、目の下などに出現する褐色~灰色のシミです。
シミというよりアザが正確な表現です。
この疾患には反省すべき思い出があります。
私が虎の門病院で皮膚外科の修行をしていた時(2010年)のことです。
20代のきれいな女性が外来に初診で来られました。
主訴は両頬部のうすい灰色の色素斑です(記憶が少し不明瞭です)。
その頃の私はADMという疾患に対する知識がありませんでした。
若くして出現した肝斑かな~と思い、ビタミンCを処方しようとしたところ、
患者さんから
「これは両側性遅発性太田母斑様色素斑と思うのでレーザー治療して欲しい」
と言われました。
そんな病気があるんかいな~と訝しがりながらも、患者さんに言われるがまま
レーザー治療の予約を入れました。
虎の門の外来カンファレンスにて、この患者さんのスライド写真を見て、
大原國章先生はきっぱりと
「両側性遅発性太田母斑様色素斑」と診断されました。
私は患者さんから教えていただくという、全く不甲斐ない医師でした。
それにしても皮膚外科で日本一の手術を行いながら、シミ、アザ治療にまで
造詣の深い大原先生は本当に凄いお方だと、今さらながら感じ入ります。
その頃から10年がたちます。
そんな私も今ではADMも含めたアザ治療も精力的に行っています。
患者さんからブログ写真の協力が得られましたので、合併症を含めて供覧します。
62歳の女性です。
両側の頬部に左右対称性に存在する小さな斑状の褐色斑です。
色素斑の分布と融合傾向がないこと、さらには年齢から肝斑ではなくADMと診断しました。
褐色斑はややグレーに見える部位もありますね。毛細血管の拡張も目立ちます。
ADM以外にも頬部の外側には老人性色素斑も混在しているのが分かります。
この年代の女性はいくつもの異なる病態の色素斑を併発しているもです。
ダーモスコピー(10倍の拡大鏡)の写真です。
いつも思うのです。ADMも太田母斑のように真皮メラノサイトーシスが疾患の本態です。
それのなにどうして青色ではなく褐色のことが多いのでしょう?
太田母斑にくらべると、増加した真皮のメラノサイトが浅いのでしょうか?
いまだに答えが分かりません。誰か教えて下さい。
下の図はメラニンが局在する深さによってどのような色調に見えるかを示したものです。
メラニンが深くなるにつれて褐色→グレイ→青 に見えます。
「An Atlas of Surface Microscopy of Pigmented Skin Lesion」より引用
Qスイッチルビーレーザー照射、11日後です。照射部が脱色素斑となっています。
照射1ヶ月後です。炎症後色素沈着を併発しています。
薄くなったり、濃くなったりまったくせわしないですね。患者さんとの信頼関係が大切です。
照射6ヵ月後です。
合併症も治まり、かなりうすくなりました。
反対側の写真です。現時点での患者さんの満足度は80% くらいかな。
第250回 東海地方会(平成21年12月)でもADMの演題がありました。
その内容を下にまとめました。
●ADM治療は脱色素斑、炎症後色素沈着を生じやすい。
●IWP(照射直後の白色変化)が生じる最小出力での照射が望ましい。
●治療間隔は6ヶ月はあけたほうがよい。
●治療の平均回数は3~4回である。
1回の治療でここまで改善したらまずまずではないでしょうか。
それにしてもThe Ruby Z-1は凄いやつです。
参考文献
Aesthtetic Dermatology Vol.19. No 4 December 2009
「対称性真皮メラノーシスの臨床と発症病態」村上喜美子、溝口昌子
診療時間
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☆…手術/レーザー治療(フォトRFなど)/ヒアルロン酸/ボトックス治療など
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