酒さの主な原因はアレルギー、微生物や寄生虫が考えられています
酒さ様皮膚炎の明確な原因は明らかではありませんが、この疾患の原因についての様々な学説が何年もかけ徐々に確立されてきています。
これらは、この病気の表立った初期症状、ほてりや赤らみ、丘疹や膿疱、毛細血管拡張症と呼ばれる細い血管の浮腫に関連した学説です。
現在考えられる範囲内での原因は、免疫系や神経系、顔面の浮腫に関する異常、微生物やデモデックス(ニキビダニ)の存在があげられます。
事例からみると、この病気を発症しやすい方は遺伝的なものが関係すると考えられています。
また、遺伝子研究も現在進められています。
数多くの酒さ様皮膚炎についての調査から、科学的情報が相次いで発見されています。それは、単に研究の重要な部分を特定するだけではなく、今後の治療に役立つだろう理論の潜在的で有益な側面のより良い定義をも可能にしてくれます。
知識が広がることで、知識の集積の形が出来ます。そしてそれは、酒さ症皮膚炎の原因や発症のプロセスをますます明らかにします。この大きな知識は、今後この病気の治療や予防、将来の治療の重要な発展につながっていくと期待されます。
医療研究により、これまでに明らかになった酒さ様皮膚炎の原因の可能性について、更に詳しく読んでいきましょう。
自然免疫システムに異常を引き起こす原因
自然免疫システムとは、病原菌などの感染に対してはじめに反応する身体の防衛線のことです。
自然免疫システムは、私たちの身体が細菌やウィルス、他の病原体に遭遇した時に、いろいろな防御反応を起こす免疫細胞や分子が結合しあって構成されています。
最近の科学調査によると、酒さ様皮膚炎患者はこの防衛プロセスが正常に機能していない可能性があることが確認されています。
自然免疫システムによって起こるまず始めの反応のひとつに炎症が挙げられます。
研究者たちは酒さ様皮膚炎の兆候や症状の潜在的原因が自然免疫機構にあるか調べるために、それらが持つ要素についての研究を行っています。
カテリシジン(抗微生物ペプチド)
カテリシジンとは、身体が病気と闘う時に重要な働きをする自然免疫機構の一つである抗菌分子です。
これらの自然物質は、有害なバクテリアを排除したり、ある複合免疫反応を活性化させる働きがあり、なんらかの刺激や感染がこれらのタンパク質の生産を活発化させます。
現在進行中の調査によると、カリフォルニア大学サンディエゴ校のリチャード・ギャロ博士(Dr. Richard Gallo)率いるチームは、カテリシジンは、赤みや毛細血管拡張症と呼ばれる浮腫といった血管作用や、酒さの初期の特徴と同様に、炎症性丘疹や膿疱を発症させる可能性があることを発見しました。
また、科学雑誌ネイチャーメディスンに掲載された彼らの研究結果によると、酒さ様皮膚炎患者は通常より多くカテリシジンを持っていることが判明したと記載されています。
研究者たちは、この防衛機能を持った物質がこの病気に関与するだろうと考えています。なぜなら、酒さ様皮膚炎の再燃を引き起こす様々な要因が、カテリシジンやそれに関連する生化学物質を誘引することがあるからです。
それらの要因には後で述べますが、熱、紫外線、ニキビダニなどの微生物が挙げられます。
肥満細胞(マスト細胞)
現在行われている研究では、神経系と血管系の間の境界面に存在する肥満細胞が、酒さ様皮膚炎の誘因と炎症間の共通点となり得るだろうと決定付けました。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の内科学准教授アナ・ディナルド博士(Dr. Anna DiNardo)率いるチームは、脂質の特定のタイプのカテリシジンの活性化において、肥満細胞が直接的な役割を果たすことを突き止めました。
ディナルド博士のチームは、マウス実験の過程からみると、肥満細胞は脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドと呼ばれる神経ペプチドにさらされる時に、カテリシジンの産生を引き起こす酵素を生成するということを決定づけました。
肥満細胞欠損マウスでは、上記のような連鎖反応は起きませんでした。
ディナルド准教授のチームは、肥満細胞やそれに関連した酵素は肥満細胞安定剤にさらすことで、通常のレベルに戻るかどうか調べるための研究を行っています。
他の分子による原因
関連のある様々な物質の役割については現在研究が進められています。
M.D.アンダーソンがんセンターのクーディン・コンラッド博士(Dr. Curdin Conrad)と同僚たちは、インターフェロン (ウィルスの感染に応じて生じその成長を抑制する物質)や他の物質が、この病気の発症に関与する可能性があることを発見しました。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のフェルダ・セビクバス博士(Dr. Ferda Cevikbas)と同僚たちは、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチドと呼ばれる神経ペプチドがどのように炎症とカテリシジンに関連しているのかを評価しています。
アルバニー・メディカル・カレッジのエドワード・ウレディス博士(Dr. Edward Wladis)によると、免疫システムを調整する分子、サイトカインの踏み込んだ研究では、サイトカインは酒さの眼の症状といった皮膚作用にも影響を与えることがわかりました。
神経系・血管系による原因
ダブリン大学医学部チャールズ皮膚病学研究所のディレクター、マーティン・シュタインホフ博士(Dr. Martin Steinhoff)は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のメンバー達と共に、酒さ様皮膚炎の典型的な兆候や症状の発生という点にで、神経系は血管系と密接に結びついていることを発表しました。
このことは、酒さの肌の赤みと炎症は連続したつながりがあることを示唆しています。
また、一般的なこの病気の誘因、例えば、紫外線、急激な温度変化、肌への刺激、強い感情、アルコール飲料、香辛料などは、感覚神経への刺激が関係している可能性を証明しているとも述べられています。
研究者たちは、さらに神経炎症と呼ばれる神経系の病気は、酒さ様皮膚炎と似通った機能を持っていると付け加えています。
例えば、炎症箇所に増える白血球のような細胞の活発化と同様の赤らみや腫れなどの症状です。
スタインホフ博士のチームは、酒さ様皮膚炎の神経系の研究の中で、酒さ様皮膚炎が発症している間、肌に刺すような痛みとつながりがあるとみられる血管の周りのある特定の感覚神経が増加することを発見しました。
彼らは更に、神経細胞が情報を伝達する際使われる小さなタンパク質分子といったいくつかの神経ペプチドとそれらの受容体、それに関連する他の物質とのバランスが酒さ様皮膚炎の場合壊されてしまうということも解明しました。
この不安定さが酒さ様皮膚炎の潮紅と炎症の一因となるかどうかの研究は現在進められています。
そして、リンパ管が腫れを引き起こす酒さ様皮膚炎の初期過程に関わりがある可能性を彼らは発見し、神経ペプチドがリンパ管の機能にも影響を与えることも突き止めました。
スタインホフ博士は、顔の皮膚は全身の中で、交感神経、副交感神経、感覚神経系の全てが関与する数少ない場所のひとつであり、それぞれに影響を与えたり、それぞれの影響を増大させることができると仮定しました。
これは複数の機序を通じ、炎症の複合サイクルをつくり出すと考えられます。
そしてそれは、なぜ酒さ様皮膚炎のいくつかの症状の治療に対し抵抗性をもつのか解明してくれる可能性があります。
アデノシン三リン酸
ワイル・コーネル大学医学部のリチャード・グランステイン博士(Dr. Richard Granstein)は、さらに、体内で活発に働く物質である、アデノシン三リン酸(ATP)が、酒さ様皮膚炎に様々な形で関与している可能性があることを発見しました。
彼らはまた、神経伝達物質で科学エネルギーを身体全体に運ぶ役割を持つアデノシン三リン酸が、神経の働きによって皮膚に放出されるときに、亜型2(丘疹膿疱性)である丘疹や膿疱につながる複合的な生化学的過程の連鎖が、酒さ様皮膚炎患者の身体に発現することを突き止めました。
アデノシン三リン酸は体内で多くの機能を持ちますが、酒さ様皮膚炎の発症という点からみると、アデノシン三リン酸は、神経からの伝達者としての役割に関係していると大いに考えられます。
神経系は、酒さ様皮膚炎の誘因となる太陽光や精神的ストレスやアルコールといったものからの影響をうけた後に血管拡張を促すため、皮膚への血流を調整するためにアデノシン三リン酸を利用するのです。
それが最終的に酒さ様皮膚炎の亜型1(紅斑毛細血管拡張型)のほてりや赤らみにつながります。
また、血管内皮細胞である内皮細胞は、酒さ様皮膚炎の亜型1(紅斑毛細血管拡張型)の炎症細胞の集積を促すたんぱく質である炎症性サイトカインの発現の変化に合わせアデノシン三リン酸に影響を与えます。
グランステイン博士率いるグループは、Th17細胞の生産がこの過程の間、炎症につながるのかどうかを研究しています。Th17細胞とは様々な炎症や免疫疾患に関与する可能性のある新しく発見された細胞群です。
別の研究では、オハイオ大学のサド・ウィルソン博士(Dr. Thad Wilson)率いるグループが、症状の再発の潜在的要因である熱が大きな神経や血流、発汗の刺激になることを発見しました。これは交感神経系で起こる反応です。
血管変化
ボストン大学医学部のミナ・ヤー博士(Dr. Mina Yaar)率いるグループは、太陽の紫外線へさらされることによって、浮腫(毛細血管拡張症)の発症に関わりのある物質、血管内皮増殖因子の産生につながることを発見しました。
また、浅黒い皮膚の色素は、紫外線照射を皮膚深層部まで到達させることが難しいことがわかりました。
その場合、血管内皮増殖因子は皮膚上層部にのみ現れることが多く、血管には影響しません。
対照的に、酒さに掛かり易く、浮腫を起こす可能性が高い白い肌の場合、大量の紫外線によって深層部に血管内皮増殖因子総合体を誘引する可能性があることがわかりました。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のリチャード・ギャロ博士(Dr. Richard Gallo)率いるチームは、マウス実験で、血管内皮増殖因子を増やすUVBへのリスクは、血管新生の形成を起こす可能性があることを解明しました。
また、自然免疫システムは紫外線に関わりを持つとされ、紫外線と肌の炎症の今後のさらなる研究はとても興味深いものになると期待されています。
ニキビダニ(デモデックス)と微生物による原因
微く小さなのニキビダニは人の身体に存在する自然なものです。
身体の内部または表面に寄生する微生物の生態学的共同体です。
ヒトの身体から見つかったニキビダニの種類は2つ。そのうちのひとつ、ニキビダニは毛包内に寄生し、まぶたのマイボーム腺も含め主に顔に寄生しています。
もうひとつの種類デモデックスブレビスは皮膚の皮脂腺に寄生しています。
全ての人の肌に寄生しているニキビダニですが、酒さ様皮膚炎患者の肌にはニキビダニの数が多いことがわかりました。
そのことが、酒さ様皮膚炎の原因や結果に関係するかどうかに関しては議論が多く分かれていますが、異常繁殖したニキビダニが患者の免疫応答を引き起こすアレルギー反応の可能性や、ダニに伴う特定の細菌によって炎症が引き起こされる可能性を示した知見が集められてきています。
アイルランドのダブリンにあるメーター・ミゼリコーディアエ病院の皮膚科専門医、フランクC.パウエル医師(Dr.Frank C. Powell)は、顔ダニは、頬や鼻、顎、額といった酒さ様皮膚炎の症状がでやすい場所に多く生息すると述べています。
また、大量の顔ダニが酒さ用皮膚炎の丘疹と膿疱の一部を切り取って顕微鏡で調べる検査で確認されています。
ドイツ、ミュンヘンにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学皮膚科、マーティン・シャーラー助教授(Dr. Martin Schaller)の研究によると、毛包虫であるニキビダニの深刻な大量発生は、酒さの症状と似通っているが、従来の酒さ様皮膚炎治療では効果がみられないということがわかりました。
ベルギー、ブリュッセルの皮膚科開業医であるファビエンヌ・フォートン医師(Dr. Fabienne Forton)は、酒さ様皮膚炎の発症においてのニキビダニの間接的な役割と、直接的な役割の両方について提案しました。
皮膚の感染と皮膚バリアの崩壊はカテリシジンの産生を促すトール様受容体を刺激し、酒さ様皮膚炎患者にみられる敏感肌の症状が治療による顔ダニの減少により、消滅することがあると述べています。
細菌(表皮ブドウ球菌)
酒さ様皮膚炎とニキビダニの相関性として、ニキビダニと関係する別の微生物、バチルス・オロレニウス菌に関係している可能性があります。
アイルランド国立大学メイヌース校のケヴィン・カヴァナフ博士(Dr. Kevin Kavanagh)率いるグループは、亜型2(丘疹膿疱性)の酒さ様皮膚炎患者に対して調査を行い、対象者のうち79%の患者が、バチルス・オロレニウス菌が炎症反応を刺激していることがわかりました。
調査グループは、微生物の潜在的役割は、バチルス・オロレニウス菌を破壊する抗生剤などの酒さ様皮膚炎に効果がある治療によって効果的に働いていると述べています。また、通常微生物には無害な抗生物質は、酒さ様皮膚炎の症状にはそれほど効果がみられないと述べています。
皮膚上に通常存在する別のタイプの細菌、表皮ブドウ球菌も酒さ様皮膚炎の発症に関与します
。
酒さ様皮膚炎患者15人を対象に行った調査では、シドニー、セントビンセント病院、メルボルンのモナッシュメディカルセンター、アデレードのロイヤルアデレード病院より、マーゴット・ウィットフィールド医師(Dr. Margot Whitfeld)率いるグループは、同じ頬部分で、正常な皮膚では見られなかった表皮ブドウ球菌の自然繁殖を、亜型2の酒さ様皮膚炎患者15人のうち9人の膿疱内で確認しました。
少数の患者を対象に行われた調査ですが、この表皮ブドウ球菌の自然繁殖が確認されたことは統計的に有意なものでした。
また、酒さ様皮膚炎患者4人のまぶたの縁から表皮ブドウ球菌の自然繁殖が確認されました。
少量の検査結果でしたが、年齢や性別を適合させた対象物では確認されなかったこの自然繁殖を、この検査で確認できたこともまた統計的に有意なものになりました。
これらの発見は、亜型2の酒さ様皮膚炎の発症に関与していると思われる細菌の自然繁殖の存在を示唆していると研究者たちは述べています。
アメリカ酒さ学会の資金援助を受けて行われてきた過去の調査で実証されているように、酒さ様皮膚炎患者によく見られる顔のほてりは、膿疱を引き起こす細菌の自然繁殖を刺激する可能性があると考えられています。
ヘリコバクターピロリ菌
一般的に消化性潰瘍や他の胃疾患に関連するヘリコバクターピロリ菌は、顔の赤みを誘発するホルモンであるガストリンを合成する細菌、つまり酒さ様皮膚炎の誘因である可能性が考えられてきました。
しかしながら、最近の研究では治療を受けたグループと受けていないグループの症状の統計的な違いは確認されていません。さらなる研究では、正常な場合にもみられる様なヘリコバクターピロリ菌の有病率が、酒さ様皮膚炎患者に似通っていることがわかりました。
腸内細菌の異常繁殖
小規模試験的研究では、酒さ様皮膚炎患者63人中約半数が軽度又は中度の腸内細菌の異常増殖を経験しているとしています。
また、腸内細菌の異常繁殖の局所治療を受けた後には、上記の46%の患者が顕著な改善が見られたと報告しています。
これらは腸内の悪玉菌が関係していると考えられ、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を補うことで改善ができます。
また上記に挙げられいる原因も、少なからず腸内細菌が原因で悪化することが他の研究からもわかっています。