2014年10月 5日 (日)

脱毛からの回復力と抗がん剤の組み合わせの関係

抗がん剤の副作用の中で女性にとって一番気になるのは何といっても脱毛だろう。「脱毛するくらいなら抗がん剤はやらない」と主張する患者さんもいる。それ程女性にとって髪の毛が無くなることは重大問題だ。

それなのに、私はこれまで副作用についてはしびれや爪の障害のことばかり気になっていた。もちろん、髪の毛のことが気にならないでもなかったのだが、パクリタキセル(タキソール)の投与が終わってから少しずつ伸びてきていたので、そのうち普通に生えそろうだろうと思っていた。患者会の方と話をした時も「大丈夫、ちゃんと生えてくるわよ」と言ってくれたので安心していた。

ところが、どうも前髪の伸びる速度が遅い。しかも密度も薄くクリンクリンのくせ毛状態だ。他の部分が結構フサフサ生えてきているので全体のバランスが悪い。前髪の問題さえなければ自毛デビューしてもおかしくないくらい生えてきているのだが、こんな状態ではとてもじゃないけどウィッグや帽子はとれない。気になると徹底的に調べずにはいられないので、インターネット上で情報を漁った。そこで得た情報をひとことで言うと、

「側頭部、後頭部」と「前額部、頭頂部」はそれぞれ作用するホルモンや酵素が異なるので伸び方が違う。

ということらしい。
まあ、大体これで納得はしたのだが、納得できないのは個人差だ。脱毛前と100%同じように生えてきている人もいるし、5年経ってもウィッグが手放せない人もいる。一体これはどういうことなのだろう。これほどの差を個人差という一言で片付けられるのか。
そこでさらに調べたのだがネットでは納得できる答えが見つからなかった。

ところが、なんとたまたま購入した「がんサポート」という専門誌の最新号にその答えが載っているではないか。どうも、レジメン(投与する薬剤の種類や量・期間・手順)の違いによって回復のレベルに異なる傾向があるらしい。
もちろん、大規模な検証結果ではないので、現段階では科学的根拠があるとは言えないが、大まかな傾向はわかる。詳しくは是非記事を読んで欲しいのだが、大雑把に言うとこんな感じだ。

・・・・・・

対象患者は治療終了後3年までのアンケートに回答が得られた39例。治療開始時の年齢は33歳~74歳。
まずレジメンの違いを三つに分ける。

①EC療法:エピルビシン(商品名ファルモルビシン)(EPI)+シクロホスファミド(商品名エンドキサン)(CPA)

②TC療法:ドセタキセル(商品名タキソテール)(DOC)+シクロホスファミド

③DOC-FEC療法:ドセタキセル+5-FU(商品名フルオロウラシル)+エピルビシン+シクロホスファミド

脱毛はレジメンの違いに関わらず、全患者で認められた。
治療3年後の完全回復率を100%とすると、
①100%(6例) ②67%(16例) ③53%(17例) という結果となった。

私はFECはやったがその後の治療でドセタキセル(タキソテール)は使わずパクリタキセル(タキソール)+ハーセプチンだった。多少の違いはあるのかもしれないが、ドセタキセルもパクリタキセルもタキサン系と呼ばれる薬で脱毛力が強い。

私はFECで頭髪のほとんどが抜け落ちたが少量残っていた。眉毛、まつげ、鼻毛等他の部分の体毛にはほとんど影響がなかった。ところが、パクリタキセルを始めた途端、すべての体毛が抜け落ちた。そのことから考えると、タキサン系の2剤は脱毛に関してそれほど違いはないと思われる。

このアンケート結果から見ると「元の通り生えてくるから大丈夫!」と言っている人はEC療法だった可能性が高い。1年後までに全患者さんが100%回復するらしいから自信を持って言えるのだろう。

もちろん、未だ科学的根拠のある数字ではないから決め付けることは出来ないが、③の組み合わせの患者は長い期間(あるいは一生)脱毛で悩むのだろう。
悲しいことに私は③の組み合わせだ。先述したとおり前髪が薄い。理由がわかったので生えそろうのを気長に待つしかないが正直ショックだ。

実は一ヶ月ほど前に病院に行った時、いつも出会う患者さんが自毛デビューしていたのを見て大変なショックを受けてしまった。黒々とした髪をリーゼント風に流していて少年のようで素敵だった。その前に会った時は私と同じように帽子をかぶっていたというのに・・・

それでもその時はこのデータのことを知らなかったので、単に個人差で私の髪の毛の伸びが遅いのだと思っていた。もちろん、同じ抗がん剤を投与された患者の中での個人差はあるだろう。

しかし、これでよくわかった。脱毛からの復活レベルは個人差ではなく、主に化学療法レジメンの違いにあったということを。

今回の検証例はまだ数が限られているが、出来れば大規模な検証をして欲しい。そして、ある程度科学的根拠が確立されたなら、患者へデータを示して説明することを医師に義務づけるべきだと思う。

患者が納得した上で脱毛するならいいが、「大丈夫、元通りに生えてくるからね」という何の根拠もない言葉を信じて大事な髪の毛を失うことだけはなくなって欲しい。

がんサポート2014年10月号(発行:㈱エビデンス社)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00N11HTO0/ 

乳がん最新大特集となっており、脱毛に限らず興味深い最新情報が載っています。今回紹介した脱毛に関する記事には頭髪量と満足度、髪質の変化、レジメン別かつら試用期間等、かなり詳細なアンケート結果が4ページにわたり載っており参考になりました。是非お読み下さい。

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