読書感想「リカ」
リカ
【評価】★★★
リカ
【評価】★★★
既婚者で子持ちの主人公の本間は、ちょっとした遊び心からパソコンの出会い系サイトにのめり込んでいきます。
その出会い系サイトを通じて知り合った女、リカ。
ところが、その女はしつこく本間と会うことを求め、主人公の生活を脅かし始めます。
主人公は、友人の元警官で探偵をやっている原田に、その女の調査を依頼するのですが、原田は惨殺されてしまいます。
「間違いなくリカの仕業だ!」
リカは執拗なストーカーとなり、主人公に会うことを求めていきます…。
五十嵐貴久さんの本は、僕が読んだのはこれで三冊目ですが、これがデビュー作ですね。
この「リカ」で、ホラーサスペンス大賞を受賞。デビューしたようです。巻末には、ホラーサスペンス大賞の選評が載せられています。
割と五十嵐さんの作品は、オチをかなり意識していて、読者をビックリさせることに主眼があるのかな、と思うのですが、今回はストレート直球でしたね。
オチはない、純粋な恐怖を感じさせる面白さでした。
主人公は普通のサラリーマンなのですが、相手役に当たるリカは、かなり特異な人間として描かれています。
それはひるがえれば、現実味のない、超現実的存在といえそうです。
リカには、独特の体臭(?)があって、その体臭が異臭なんですよ。ここいらへんは、まるで『源氏物語』の薫大将みたいですね。
『源氏物語』の薫大将って、光源氏亡き後の宇治十帖の主人公なんですけど、生まれながらに体から良い香りがしたそうで、それ故に「薫」と呼ばれています。
生まれながらに体から良い香りがした、というのは、たしか仏典かなんかの影響だったと思いますが、いずれにせよ超現実的な登場人物の描き方とは言えます。主人公の特異性を描くための方法なわけです。
この「リカ」では、それを逆転させていて、体から悪い匂いがする、という設定にしているわけですね。
いわば、異常な人物としてのスティグマ、シルシなわけですな。
最後の方なんて、ゴルフクラブで殴られても死なないし、拳銃で撃たれても復活しますからね。(笑)
これは、いわばリカが神の領域に属する人間であったことを意味しているんだろうと思います。
「神の領域」というのは、必ずしも善というわけではなくて、悪でもありうるのです。
基本的に、『源氏物語』にせよ、『竹取物語』にせよ、その主人公はどこかしら異常性を持っているものです。
古代の物語では、主人公は異常な美しさなり、異常な頭の良さを発揮するものです。
これは、古代の物語がそもそも「神の物語」であったことを意味するのです。
つまりは、神々のお話(神話)がもとで、それが徐々に人間のドラマに置き換えられて行っているわけです。
ですから、物語の登場人物には、どこかしら神の名残が残るものなんですね。
神というのは、人間には見られない異常な力を持つものです。
かぐや姫が異常に早く成長して、異常に美しいのも、光源氏がアホみたいに女にモテるのも、薫の体から良い匂いがするのも、すべて神々の物語の名残なわけです。
昔話の主人公たちが、何らかの過剰さや欠損が語られているのは、それが元は神の話だからなのです。
そう考えると、この五十嵐さんの「リカ」は、主人公は普通の人間ではありますが、「リカ」に異常な力を持たせている話であり、古代から続く「物語」の系譜の中にある、と言えそうです。
リカは、いわば邪神であって、邪神と人間の戦いを描いている、とも言えるでしょう。
そういう意味では、極めて正統的な物語なのだと思いました。
逆に言えば、正統的な物語ということは、パターンに陥っている、ということでもあります。
桐野夏生さんが、巻末の選評で言っておられた、「器用な小説だ。出会い系サイトでどう身を処せばいい目に遭えるか、という方法が手際良く提示され、とんとんと話が進む。ディテールも気が利いていて、全体としてのまとまりは悪くない」(318㌻)というのは、いわば正統派の物語としては合格だよ、ということでしょうね。
ただ、桐野さんも苦言を呈しておられましたが、もう少し「リカ」の人物像の掘り下げを行うと、小説としての深みが増しただろうな、とは思いました。
ただ、やはりリカが異常な人間として処理されたからこそ、このように「全体としてのまとまりは悪くない」ような小説になったことも事実でしょうね。
リカの人物像を掘り下げていくと、相当手を加え直さなければならないでしょうし、全体としてのバランスも悪くなるでしょう。全然違った小説になってしまいそうです。
サスペンス大賞を受賞するための分量を超えてしまう可能性もあります。
原稿用紙250枚(応募規定)に収めるためには、僕はこの五十嵐さんのやり方が賢明だとは思いました。
ところで、僕個人がすごく気になったのは、リカってどうやって生活していたのかなー、とかいう所でした。
僕の解釈では、このリカは、ネットに巣くう邪神で、ネットを飛び交う人々の悪意の象徴なんだろうな、と思っているので、
生活云々を言うことは間違いなのかもしれませんが、ただ失業中に何して飯を食ってたんだろうなー、とか、いろいろと疑問が浮かびましたね。通信費もタダではないわけですし…。
とりあえず、リカの現実感が絶無なので、このキャラはかなり賛否がわかれるでしょう。僕もいまいちピンときませんでした。
どうせなら、もっと非現実的な存在にして欲しかったですね。
その出会い系サイトを通じて知り合った女、リカ。
ところが、その女はしつこく本間と会うことを求め、主人公の生活を脅かし始めます。
主人公は、友人の元警官で探偵をやっている原田に、その女の調査を依頼するのですが、原田は惨殺されてしまいます。
「間違いなくリカの仕業だ!」
リカは執拗なストーカーとなり、主人公に会うことを求めていきます…。
五十嵐貴久さんの本は、僕が読んだのはこれで三冊目ですが、これがデビュー作ですね。
この「リカ」で、ホラーサスペンス大賞を受賞。デビューしたようです。巻末には、ホラーサスペンス大賞の選評が載せられています。
割と五十嵐さんの作品は、オチをかなり意識していて、読者をビックリさせることに主眼があるのかな、と思うのですが、今回はストレート直球でしたね。
オチはない、純粋な恐怖を感じさせる面白さでした。
主人公は普通のサラリーマンなのですが、相手役に当たるリカは、かなり特異な人間として描かれています。
それはひるがえれば、現実味のない、超現実的存在といえそうです。
リカには、独特の体臭(?)があって、その体臭が異臭なんですよ。ここいらへんは、まるで『源氏物語』の薫大将みたいですね。
『源氏物語』の薫大将って、光源氏亡き後の宇治十帖の主人公なんですけど、生まれながらに体から良い香りがしたそうで、それ故に「薫」と呼ばれています。
生まれながらに体から良い香りがした、というのは、たしか仏典かなんかの影響だったと思いますが、いずれにせよ超現実的な登場人物の描き方とは言えます。主人公の特異性を描くための方法なわけです。
この「リカ」では、それを逆転させていて、体から悪い匂いがする、という設定にしているわけですね。
いわば、異常な人物としてのスティグマ、シルシなわけですな。
最後の方なんて、ゴルフクラブで殴られても死なないし、拳銃で撃たれても復活しますからね。(笑)
これは、いわばリカが神の領域に属する人間であったことを意味しているんだろうと思います。
「神の領域」というのは、必ずしも善というわけではなくて、悪でもありうるのです。
基本的に、『源氏物語』にせよ、『竹取物語』にせよ、その主人公はどこかしら異常性を持っているものです。
古代の物語では、主人公は異常な美しさなり、異常な頭の良さを発揮するものです。
これは、古代の物語がそもそも「神の物語」であったことを意味するのです。
つまりは、神々のお話(神話)がもとで、それが徐々に人間のドラマに置き換えられて行っているわけです。
ですから、物語の登場人物には、どこかしら神の名残が残るものなんですね。
神というのは、人間には見られない異常な力を持つものです。
かぐや姫が異常に早く成長して、異常に美しいのも、光源氏がアホみたいに女にモテるのも、薫の体から良い匂いがするのも、すべて神々の物語の名残なわけです。
昔話の主人公たちが、何らかの過剰さや欠損が語られているのは、それが元は神の話だからなのです。
そう考えると、この五十嵐さんの「リカ」は、主人公は普通の人間ではありますが、「リカ」に異常な力を持たせている話であり、古代から続く「物語」の系譜の中にある、と言えそうです。
リカは、いわば邪神であって、邪神と人間の戦いを描いている、とも言えるでしょう。
そういう意味では、極めて正統的な物語なのだと思いました。
逆に言えば、正統的な物語ということは、パターンに陥っている、ということでもあります。
桐野夏生さんが、巻末の選評で言っておられた、「器用な小説だ。出会い系サイトでどう身を処せばいい目に遭えるか、という方法が手際良く提示され、とんとんと話が進む。ディテールも気が利いていて、全体としてのまとまりは悪くない」(318㌻)というのは、いわば正統派の物語としては合格だよ、ということでしょうね。
ただ、桐野さんも苦言を呈しておられましたが、もう少し「リカ」の人物像の掘り下げを行うと、小説としての深みが増しただろうな、とは思いました。
ただ、やはりリカが異常な人間として処理されたからこそ、このように「全体としてのまとまりは悪くない」ような小説になったことも事実でしょうね。
リカの人物像を掘り下げていくと、相当手を加え直さなければならないでしょうし、全体としてのバランスも悪くなるでしょう。全然違った小説になってしまいそうです。
サスペンス大賞を受賞するための分量を超えてしまう可能性もあります。
原稿用紙250枚(応募規定)に収めるためには、僕はこの五十嵐さんのやり方が賢明だとは思いました。
ところで、僕個人がすごく気になったのは、リカってどうやって生活していたのかなー、とかいう所でした。
僕の解釈では、このリカは、ネットに巣くう邪神で、ネットを飛び交う人々の悪意の象徴なんだろうな、と思っているので、
生活云々を言うことは間違いなのかもしれませんが、ただ失業中に何して飯を食ってたんだろうなー、とか、いろいろと疑問が浮かびましたね。通信費もタダではないわけですし…。
とりあえず、リカの現実感が絶無なので、このキャラはかなり賛否がわかれるでしょう。僕もいまいちピンときませんでした。
どうせなら、もっと非現実的な存在にして欲しかったですね。