耐薬品性について
トルエンのような有機溶剤はABS樹脂をただちに侵しますが、それほど苛烈でなく、塗布しただけでは見た目に影響のないような薬品であっても、長期間の接触によってプラスチック部品にひび割れを生じることがあります。これは環境ストレスクラック(Environmental Stress Cracking、一般にケミカルクラックとも)と呼ばれる現象で、応力がかかった状態の樹脂表面において、分子鎖の間隙に徐々に薬品が浸透することで、眼に見えないような微小なひび割れ(マイクロクレイズ)を生じ、ここが起点となって破壊が生じるものです。
環境ストレスクラックでは、部品の破断面に白化や塑性変形の痕がなく、材料が突然割れたような外観を示すのが特徴です。
上述のように、これは「薬品との接触」「応力」が同時に存在する環境で生じる現象ですので、対策にはこのどちらか、ないし両方を取り除くことが必要です。
ABSに環境ストレスクラックを発生させる(アタック性がある)薬品は、下の表にあるように各種あります。例えば「油脂」のカテゴリーでも動物性と植物性ではアタック性に差があり、植物性の方が強い傾向があります。
この環境ストレスクラックの発生は、ABS以外の樹脂についても同様に発生しますが、その薬品に対する樹脂の耐薬品性は、樹脂の組成と薬品の化学的組成による影響と、成形品の歪み量の影響を強く受けます。
ABS樹脂の一般的な物質に対する、耐薬品性の評価方法は、による歪みと薬品塗布による環境ストレスクラックが発生する歪み量(臨界歪み値)で判定されます。
弊社の代表的な樹脂数種の評価結果を下記に示します。
●結果の見方
試験結果の臨界歪値から、実際の使用時での目安を下記に示します。
尚、この目安はあくまでも試験片の結果から実使用時での、白化、クラック等を推定したものです。
貴社での実用試験にて、確認をお願いします。
●臨界歪値
テクノ(旧三菱化学)ベンディングフォーム法 (1/4楕円法)
23℃、17時間、テストピース 2mmプレスシート
ベルゲンの1/4楕円法をベースにした試験法です。
先端に行くに従って徐々に曲率の大きくなる治具に板状の試験片を固定した上で薬品を塗布し、どの位置でクラックが生じるかによって、薬品の影響を判定します。
治具先端部ほど大きな曲げ応力がかかった状態ですので、クラックが生じないか、先端に近い部分で生じれば耐薬品性良好(=大きな応力がかからないと破壊しない)、根本に近い部分で生じれば薬品の影響を強く受けていると考えられます。
環境ストレスクラックでは、部品の破断面に白化や塑性変形の痕がなく、材料が突然割れたような外観を示すのが特徴です。
(対照的に、強度破壊や疲労破壊の場合は、破断面が顕著に白化していることが普通です。これは、応力による変形で樹脂に含まれるゴム成分が引き伸ばされ、表面が荒れて光の乱反射を起こすことで生じます。一方、環境ストレスクラックの場合は、ゴム成分は長時間の薬品暴露で徐々に侵されてしまい、破壊時には破断部周辺に殆ど残っていない状態になっています。このため、破断面は白化せず、断ち割ったかのような様態を示します。)
上述のように、これは「薬品との接触」「応力」が同時に存在する環境で生じる現象ですので、対策にはこのどちらか、ないし両方を取り除くことが必要です。
(しばしば、部品そのものに大きな応力のかかっていないような部品において、環境ストレスクラックが生じる場合があります。これは、主に成形時に冷えて収縮した樹脂の残留応力が、製品中に残っていることが原因です。この場合は、成形条件の調整によって、できるだけ内部応力の残らないように部品を成形することが必要です。)
ABSに環境ストレスクラックを発生させる(アタック性がある)薬品は、下の表にあるように各種あります。例えば「油脂」のカテゴリーでも動物性と植物性ではアタック性に差があり、植物性の方が強い傾向があります。
この環境ストレスクラックの発生は、ABS以外の樹脂についても同様に発生しますが、その薬品に対する樹脂の耐薬品性は、樹脂の組成と薬品の化学的組成による影響と、成形品の歪み量の影響を強く受けます。
ABS樹脂の一般的な物質に対する、耐薬品性の評価方法は、による歪みと薬品塗布による環境ストレスクラックが発生する歪み量(臨界歪み値)で判定されます。
弊社の代表的な樹脂数種の評価結果を下記に示します。
●結果の見方
試験結果の臨界歪値から、実際の使用時での目安を下記に示します。
尚、この目安はあくまでも試験片の結果から実使用時での、白化、クラック等を推定したものです。
貴社での実用試験にて、確認をお願いします。
●臨界歪値
| 0.3%以下: | 実使用不可レベル。製品組立、輸送などの軽微な応力によりクラックが発生する可能性大 |
| 0.3~0.7%: | 薬品との接触により、白化、クラックが発生する恐れのあるレベル。特に、強い応力を受けた場合には注意が必要です。 |
| 0.7%以上: | 実使用可能なレベル。薬品との接触により、クラック等の発生する可能性は低い。 |
1.テクノポリマー一般ABS樹脂の耐薬性
| 薬品名 | 臨界歪(%) | 薬品名 | 臨界歪(%) | 薬品名 | 臨界歪(%) |
| 10%塩酸 | 0.7以上 | ヘアースプレー | 0.22 | ファミリー | 0.45 |
| 10%苛性ソーダ | 0.7以上 | ヘアートニック | 0.31 | ママレモン | 0.7以上 |
| エチルアルコール | 0.25 | クレンジングクリーム | 0.45 | 強力ルック | 0.2以下 |
| ガソリン | 0.2以下 | ヘアーリキッド | 0.56 | マイペット | 0.31 |
| 灯油 | 0.5 | 香料ブーケ | 0.25 | ママローヤル | 0.5 |
| シリコンオイル | 0.7以上 | 森林浴 | 0.24 | チャーミーグリーン | 0.42 |
| シリコングリス | 0.7以上 | フロンR-11 | 0.68 | トイレマジックリン | 0.29 |
| サラダ油 | 0.56 | 防錆剤 | 0.6 | トイレルック | 0.7以上 |
| ごま油 | 0.63 | 切削油 | 0.3 | クイックル | 0.7 |
| バター | 0.62 | アースエアゾル | 0.48 | ||
| 食酢 | 0.7以上 | インキ | 0.5 |
2.テクノポリマー難燃ABS樹脂の耐薬性
| 薬品名 | 臨界歪(%) | |||
| F5330 | F1350 | F5350 | F5451 | |
| 10%塩酸 | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 |
| エチルアルコール | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.25 |
| 灯油 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.4 |
| マジックリン | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
| ママレモン | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 |
| 強力ルック | 0.2以下 | 0.2以下 | 0.2以下 | 0.2以下 |
| ごま油 | 0.5 | 0.6 | 0.5 | 0.5 |
| モリコートグリスE | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 | 0.7以上 |
| 切削油 | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.3 |
3.テクノポリマーPC/ABS樹脂(CK10,20,50)の耐薬性
| 薬品名 | CK10,20 | CK50 | ||
| 外観変化 | 臨界歪値 | 外観 | 臨界歪値 | |
| 10%苛性ソーダ | 白化 | 0.7以上 | 白化 | 0.7以上 |
| 30%硫酸 | なし | 0.7以上 | なし | 0.7以上 |
| 10%塩酸 | なし | 0.7以上 | なし | 0.7以上 |
| エチルアルコール | なし | 0.7以上 | なし | 0.7以上 |
| メチルアルコール | やや白化 | 0.7以上 | やや白化 | 0.7以上 |
| アセトン | 溶解 | 0.2以下 | 溶解 | 0.2以下 |
| トルエン | 溶解 | 0.2以下 | 溶解 | 0.2以下 |
| 四塩化炭素 | 膨潤 | 0.5 | 白化 | 0.3 |
| 白灯油 | なし | 0.7以上 | なし | 0.7以上 |
| エンジンオイル | なし | 0.7以上 | なし | 0.7以上 |
| ブレーキオイル | 溶解 | 0.2以下 | 溶解 | 0.2以下 |
4.テクノポリマー難燃PC/ABS樹脂(CKF50)の耐薬性
| 薬品名 | CKF50 | |
| 外観変化 | 臨界歪値 | |
| 10%苛性ソーダ | 白化 | 0.7以上 |
| 30%硫酸 | なし | 0.7以上 |
| 10%塩酸 | なし | 0.7以上 |
| エチルアルコール | なし | 0.7以上 |
| メチルアルコール | なし | 0.7以上 |
| アセトン | 溶解 | 0.2以下 |
| トルエン | 溶解 | 0.2以下 |
| 四塩化炭素 | 膨潤 | 0.3 |
| 白灯油 | なし | 0.7以上 |
| エンジンオイル | なし | 0.7以上 |
| ブレーキオイル | 溶解 | 0.2以下 |
5.耐薬品性の試験方法について
●試験方法テクノ(旧三菱化学)ベンディングフォーム法 (1/4楕円法)
23℃、17時間、テストピース 2mmプレスシート
ベルゲンの1/4楕円法をベースにした試験法です。
先端に行くに従って徐々に曲率の大きくなる治具に板状の試験片を固定した上で薬品を塗布し、どの位置でクラックが生じるかによって、薬品の影響を判定します。
治具先端部ほど大きな曲げ応力がかかった状態ですので、クラックが生じないか、先端に近い部分で生じれば耐薬品性良好(=大きな応力がかからないと破壊しない)、根本に近い部分で生じれば薬品の影響を強く受けていると考えられます。