コラム

日本女性の約7割が悩まされているという身体の「冷え」。西洋医学と漢方では、基本的な捉え方が異なります。西洋医学では一般的に「冷え=体質的なもの」と捉えることが多く、積極的に治療することはあまりありません。一方、漢方では「冷え」は頭痛や肩こり、月経痛などさまざまな不調を引き起こす“万病のもと”。病気とはいえなくても、その治療を重要視しているのです。

人間の身体は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3つの基本成分で構成される――というのが漢方の基本的な考え方。「気」は身体の働きを調整する生命エネルギー、「血」は全身を巡って細胞に栄養を与える血液、「水」は涙・汗など身体をうるおす体液のことを指します。3つの要素それぞれが支障なく働いていれば健康で、バランスが崩れたり、いずれかが不足したり滞っていると、身体に何らかの不調が起こるとされているのです。つまり、「冷え」が起こるのも、「気・血・水」のバランスが崩れているため。たとえば、血液の流れが悪くなっている(血)、代謝機能が低下している(水)、自律神経の働きが乱れている(気)・・・などが、その原因として考えられます。

身体全体が冷えている 【気】胃腸の働きの低下
【血】血液の流れが悪くなっている
【水】代謝機能の低下
など
茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)
など
手足の先が冷えている 【気】自律神経の働きが乱れている
【血】末梢の血流量が少なかったり、血液の流れが悪い
など
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
など
腰・下半身が冷えている 【血】血液の流れが悪くなっている
骨盤内臓器の異常
【水】代謝機能の低下
など
温経湯(うんけいとう)
など
むくみをともなっている 【血】血液の流れが悪くなっている
【水】代謝機能の低下
など
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
など

※「処方される代表的な漢方薬」で挙げているものは、あくまで一例です。漢方薬は、ひとりひとりの症状・体質に合わせて最もふさわしいものが処方されますので、同じ症状でも人それぞれに処方が異なります。専門知識をもった、漢方にくわしい医師に相談しましょう。

漢方薬を飲むばかりが、漢方療法ではありません。食事や生活、心の持ち方を改善し、健康な身体を作ることこそ、漢方の考え方なのです。冷え性の対策も同様。毎日の生活に漢方の知恵を取り入れ、“冷えない”身体を作っていきましょう。

身体を温める食材の代表選手であるしょうがを利用するのがオススメ。しょうが湯を作ったり(血液の循環を高めるとされる黒砂糖と一緒に煎じると良い)、味噌汁に少し入れて飲むのも簡単で◎です。
また、しょうがを使ったお粥を作ってみてはいかがでしょう。身体が芯から温まります。

  1. お米(1/2カップ)を洗い、鍋に入れます。そこに水700ccを加えて30分から1時間程度、吸水させます。
  2. 1.に、すりおろしたしょうが(小さじ1)、ねぎ、にんにくを加えてふたをします。強火にかけ、沸騰したら火を弱めます。弱火のまま、30分程度煮ていきます。
  3. 器に盛り、山椒やザーサイなどお好みの薬味をそえて召し上がれ。

お風呂にもひと工夫を。ここでもしょうがが活躍します。しょうがにプラスして、漢方生薬の桂枝(けいし)、川芎(せんきゅう)を煎じ、その液をお風呂に垂らしてみましょう。血行を良くするために、半身湯や足湯を行うのも、オススメです。

冷えの改善にきくツボは、おもに3つ。どれも足にあるツボで、「足三里(あしさんり)」「三陰交(さんいんこう)」「太衝(たいしょう)」と呼ばれるものです。
「足三里」は胃腸を強くして冷えを予防し、「三陰交」はホルモンバランスを整え足腰の冷えを和らげます。「太衝」は身体の疲れをとり足の冷えを改善するのに効果的。
呼吸のリズムと合わせながら、自分が気持ちよく感じる強さで、押してあげましょう。

足三里(あしさんり)
すねの外側で、ひざから指幅4本分下のところにあります。

三陰交(さんいんこう)
足の内側のくるぶしから、指幅4本分上のところにあります。

太衝(たいしょう)
足の甲の高くなったところ、足の親指と人指し指の骨が交わるところにあります。

冬にむかって、寒さがいちだんと増す季節。漢方で身体をぽかぽか温めて、毎日をイキイキと快適に過ごしましょう。

● 監 修 ● 日本未病医学研究センター所長 劉影(りゅういん)先生
医学博士。東京大学「食の安全研究センター」特任教授。順天堂大学医学部内科学教室・消化器内科講座非常勤講師。日本東方医学会学術委員、日本抗加齢医学会評議員などを務める。
東洋・西洋医学の結合により未病および生活習慣病予防の研究・開発に携わり、これまでに数多くの実績を上げている。近年では、現代女性の生涯に関わる未病医学、アンチエイジングの研究開発に力を注ぎ、情報発信や漢方文化の普及を行っている。著書は「女性のためのはじめての漢方」(池田書店)、「女性の漢方レシピ」(扶桑社)、「病気にならない15の食習慣」(日野原重明共著、青春出版社)など多数。