REPORT[レポート]
ORGANIC COTTON SEMINAR2017 ♯前編
オーガニックコットンビジネスの背景と未来 ♯前編
2017年3月24日、当社の主要サプライヤーであるREMEI AGとbioRe INDIAの両CEOをお招きし、
「オーガニックコットンビジネスの背景と未来」と題してセミナーを開催しましたので、その模様をお届けします。
前編はREMEI AG CEOのHelmut Halkerさんによるプレゼンテーションです。
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皆さま、本日はお越しいただきありがとうございます。 ヘルムート・ヘルカーと申します。 オーガニックコットンやサステイナブルな取り組みに関心のある方々に このようにお会いできる機会をいただき大変嬉しく思っています。
パノコの皆さま、今回はお招き頂き本当にありがとうございます。
Helmut Halker/CEO REMEI AG
1958年ドイツに生まれる。テキスタイルの技師として大手企業の管理職を歴任。
国際ビジネスを経験し、最近ではスイスの繊維産業の能力開発センターでスイステキスタイル単科大学(STF)のCEOとして活躍。
2013年にREMEI社の取締役となり、2015年にCEOに就任。bioRe PROJECTではコミュニティーの子供たちの教育問題に取り組んでいる。
さて、私たちREMEIは「ファッションを追求するとき、そこには責任が伴う」と常々考えていますが、
今回は、それはどういうことなのかについてお話しさせていただこうと思っています。 また、オーガニックコットンの歴史や世界潮流、 REMEIとbioReの取り組みや持続可能な目標についてもご紹介したいと思います。
<オーガニックコットンの歴史>
これはオーガニックコットンの花の写真です。 この花は私たちにとって特別な意味を持っています。
それは、農家の人たちが大切に育てた末にもたらされるものだからです。
花が咲き終わると実がなります。そして、その殻が開くと中にある綿が少しずつ顔を出します。
とても神秘的な光景です。
コットンの栽培には、種をまくところから収穫に至るまで実に多くの工程があり、多大な労力が必要です。
特に収穫時にはとてつもない根気が必要になります。
2、3か月もの間、毎日綿を手で摘む作業を続けなければならないからです。
そして収穫した綿を集積所に運ぶという作業をくりかえします。
コットンの歴史を振り返ってみると、20世紀を迎えるまでは有機栽培が全てでした。それしかなかったのです。
その後、様々な化学肥料や農薬が開発されると世界中で使われるようになりました。
そして、そこに危惧を覚えた人々の手によって1980年代後半からオーガニックコットンの栽培が再び始まったのです。
ところが、90年代後半になるとGMO(遺伝子組み換え)の種子が普及し、再び状況は一変しました。
GMOコットンがあっという間に世界を席巻したのです。この状況は今なお続いています。
2010年には年間20万トンを超えるオーガニックコットンが栽培されていましたが、
ここ数年は10万トン強で推移しています。
これはオーガニックコットンの国別の生産比率を表したグラフです。
実に60%以上がインドで生産されていることが分かります。
全体の収穫量が減っている要因は様々ですが、最大の生産国であるインドでGMOの種子が蔓延しており、
NON GMOの種子を確保することが困難になっていることが大きな一因といえます。
<REMEIの歴史とbioReの取り組み>
ここで、REMEIがどのように始まった会社なのかをお話ししたいと思います。
このことを語るうえで欠かすことのできない人物がいます。創業者のパトリックホフマンです。
彼はREMEIの創始者でありながら、bioReプロジェクトを築き上げた人物でもあります。
彼のモチベーションは、
農家の人たちを支援すること、パートナーとのバランスのとれた公平な関係を創ること、
そして環境を守ることにありました。
彼のこれまでの歩みを見ると、それはまさに綱渡りをしているような感覚だったのではないかと想像します。
消費者のニーズと供給側である農家とのバランス、様々な作物をつくる上でのバランス、
経済的、社会的なバランス、そういった様々な要素を担いながら歩んできたのです。
彼は、カスタマーと農家の人たちの双方のニーズを満たしていくことを常に気にかけ、
そしてそこに情熱を傾けてきました。 こういったことをする人はそれまでほとんどいなかったのです。
1983年、REMEIは綿花の貿易商としてスタートしました。
1991年にオーガニックコットンの取り扱いに着手し、インドにbioRe INDIAを設立。
1994年にbioRe TANZANIAを設立し、同年スイスコープとパートナーシップを結びます。
1997年には農家の生活を包括的に支援するためのbioRe Foundationを立ち上げ、
2005年にプロジェクトの拠点となるトレーニングセンターをインドとタンザニアに開設しました。
2008年にはオーガニックコットンに専念することを決め、一般綿の取り扱いをやめることにしました。
次に、bioReとREMEIの役割分担についてご説明します。
bioReはインドとタンザニアで行われているプロジェクトを各々が統括し、
オーガニックコットンを栽培することにおいて責任を持っています。
REMEIはbioReプロジェクトで生産されたオーガニックコットンの原料を購入し、
紡績から最終製品の製造、販売に至るまでのサプライチェーンを管理・運営しています。
さて、オーガニックコットンには様々な基準や認証の仕組みがありますが、
bioReも独自の基準を持っています。
私たちが大切にしている5つの柱は、
①Organic Cotton / オーガニックコットンの栽培
②Fair Production / 公正な生産背景
③Ecological and skin-friendly / 環境負荷の低減と人体への悪影響の排除
④CO2-neutral / 排出二酸化炭素のオフセット
⑤Traceable back to farming / 農地までの透明性の確保
です。
bioReはこの5つの柱をもとに包括的なアプローチを実施し、持続可能な生産を実現しています。
このことをわかりやすくお伝えするために、他の基準と比較してみます。
フェアウェアファンデーション
(Fair Wear Foundation)はフェアトレードですが、それ以外の基準はありません。
デトックス(Detox)は環境には優しいですが、オーガニックではありません。
リスペクトフォーザオーガニゼーション(Respect for The Organization)
は透明性を満たしているにすぎません。
GOTS(Global Organic Textile Standard)
はオーガニックで環境に優しいと言えますが、
農家の参画までといった全体的なサプライチェーンは満たしていません。
マイクライメット(myclimate)はカーボンニュートラルではありますが、それだけです。
このように、私たちREMEIの掲げる5つの項目を満たすということはかなり特別なことで、
私たちはこのことをとても大切にしています。
①Organic Cotton / オーガニックコットンの栽培
オーガニックの基本は、化学肥料や有害な農薬を使用せず輪作によって作物を栽培することです。
GMOの種子を使わないということも重要なポイントですが、例えばインドはオーガニックコットンの最大の産出国にもかかわらずGMOの種子が市場を席巻しており、NON GMOの種子を購入することは極めて困難な状況になっています。
そのため私たちはインドに研究所をつくり、自らNON GMO種子を調達することにしました。
尚、私たちは豊作不作に関わらず、収穫された綿花は全て買取り保証を行っています。
契約農家は有機農法の技術的なトレーニングやコンサルティングも無料で受けることができるため、
安心してオーガニックコットンを栽培することができます。
また、市場価格に対して最大15%上乗せした価格で買い取っていることも大きな特徴です。
②Fair Production / 公正な生産背景
紡績から縫製といった工程では、適切な労働環境が重要です。
リトアニア、インド、タンザニアの中でbioReの認証を得ている工場が41軒ありますが、
いずれもSA8000という国際的な基準に基づき、これらがきちんと守られている工場となっています。
基準の具体的な内容は、児童労働をしないこと、適正な賃金を保証することや適切な労働時間を守ることなどが盛り込まれており、これらをしっかりと管理することが求められます。
③Ecological and skin-friendly / 環境負荷の低減と人体への悪影響の排除
さらに、すべての製造工程において環境負荷が少なくなるような手立てを講じています。
染色やプリントに人体に有害でないものを使うことは、
環境に良いだけでなく労働者の健康を守ることにもつながります。
排出される水を適切に管理して処理することももちろん重要です。
④CO2-neutral / 排出二酸化炭素のオフセット
bioReでは、高効率のかまどを農家の家庭に設営することと、牛糞からメタンガスを抽出するための
バイオガスプラントを設営することによってCO2の削減を図っています。
これらの取組みによって削減されたCO2は、
農場や工場、輸送、REMEIの企業活動等で発生するCO2の総和と完全にオフセットされています。
⑤Traceable back to farming / 農地までの透明性の確保
私たちは農家からエンドユーザーの手元に商品が届くまでの全ての工程を公開することで
ユーザーとの信頼関係を構築できると考えています。
bioReの製品には必ずトレーサビリティーナンバーの入ったラベルがついています。
この番号をREMEIのサイト内で検索すると、誰が栽培したコットンなのか
どこの工場で作られた製品なのかといった情報をすべて見ることができます。
私たちの仕事は、農家から工場の生産現場、そしてエンドユーザーへ届けられるまで、
手に手を取るような形で行われているのです。
<オーガニックコットンの市場について>
ここで少しオーガニックコットンの市場の話をしたいと思います。
これは2014年のデータですが、
国別の一人当たりのオーガニック製品(コットンや食品等)の 消費金額を示しています。
ヨーロッパ諸国が上位を占めていることがお分かり頂けるかと思います。
このグラフはオーガニックコットンの需要と供給の推移を示したものです。
2012年を境に、需要が供給量を上回っていることが分かります。
オーガニックコットンのニーズは世界的に高まっているにもかかわらず、供給量は減ってきているのです。
私は時々、「これでいいのだろうか」、「これで続けられるのだろうか」と自分自身に問いかけます。
多くの人々は持続可能な仕組みをサポートしたい、オーガニックコットンを買いたいと思っている反面、
一般のものより価格が高いという理由から購入することを躊躇しているようです。
それはおそらく、価格に対しての価値があるのかどうかを量りかねているからだと思います。
だからこそ、オーガニックコットンの背景のことをもっと知ってもらい、
その価値をご理解いただくことが何より重要だと思っています。
私たちは、オーガニックコットンの原料から最終製品の企画製造販売までを一貫して行うことができます。
日本ではパノコが私たちのオーガニックコットンの原料を購入してくれています。
このパートナーシップは20年以上続いています。
その間、良質な関係を築いてこれたこと、これこそがまさに持続可能なビジネスのひとつのかたちと言えるでしょう。
製品については、自社のプライベートブランドだけでなくOEMも行っています。
OEMを通じた他企業との協業は徐々に広がりを見せてきています。
ここで、今後も成長が見込まれるオーガニックコットンのマーケットとbioReのアプローチについて
簡単にご紹介させていただきます。
①BtoB
企業の社会的取り組みの中でオーガニックコットンが使われることがよくあります。 スタッフがオーガニックコットンのTシャツを着るといったことは簡単に取り入れることができ、 インパクトもあります。
②ファミリー
家の中ではTシャツ、アンダーウェア、子供服などのファミリーウェアにも採用されています。
③ライフスタイルグッズ
テーブルクロスやタオルといった生活雑貨にも使われています。
④ラグジュアリー
コットンには
シルクのような光沢があるものもあり、
ラグジュアリーな着こなしを演出することもできます。
イギリスのアパレルブランド「Eileen Fisher」、フランスの「GERRY WEBER」、
パノコのオフィシャルブランド「SOIL&RAIN BIOSHOP」などにも私たちのオーガニックコットンが使われています。
様々なブランドが独自のコンセプトを立て、そこにオーガニックコットンを取り入れ、
自ら情報を発信するというサイクルが見られます。
⑤アウトドア
機能が重視され、雨天や紫外線の対応も求められるアウトドア業界においては、
ハイキングウエア、夏用のコレクションに採用されることが多いようです。
マムートやモラヤなどは長年私たちのオーガニックコットンを使ってくれています。
⑥パーソナルケア
オーガニックコットンは水分を良く吸収し、害がなく、肌に優しいということが特徴です。
そのため、綿棒や生理用ナプキン、化粧用コットン、またはヨガウェアなどにも使われています。
パノコのオフィシャルブランドsisiFILLEの生理用ナプキンやコットンパフには
タンザニアでできたコットンを使っていただいています。
パノコにはbioRe Foundationを通じて農家の暮らしをを直接サポートいただいています。
インドでの学校の設立や、タンザニアの女性グループの自立支援、井戸の建設などです。
この場を借りて改めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。
そして間接的にこのプロジェクトを支援してくださっている皆様にも感謝申し上げます。
私たちはこの信頼関係を何よりも貴重なものだと考えています。
また、皆様の記憶にもあるかもしれませんが、2015年にタンザニアで大きな干ばつがありました。
その際にも日本オーガニックコットン流通機構始め、皆様に直接的なご支援を頂きました。
本当にありがとうございました。
<国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)へのアプローチ>
最後に、国連が掲げる「持続可能な17の開発目標(SDGs)」とbioReの取組みについてお話をします。
17の目標の中で、bioReが実践していることをいくつか具体的にご紹介します。
まずは、6番のすべての人々へ水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保するという目標に対して、
bioReではタンザニアに77の井戸と26の貯水のタンクを設けています。
これによって3万4千人以上の人々がきれいな水を得ることができます。
次に3番の健康的な生活を確保するという目標。
これに対して、100以上のトイレの設置と医療バスの配置を行い、農家の人々の健康をチェックする仕組みを構築しています。
年間7万3千人もの人々ががこれらを利用し、マラリアなどの感染症から身を守ることができています。
続いて、7番の持続可能で近代的なエネルギーの確保という目標に対し、
2,840台の高効率なガスコンロと3,238個のバイオガスプラントをインドとタンザニアで活用しています。
4番の質の高い教育という目標については、アニメーションスクールや小学校を設立することでそれを実現しています。
さらに農家の人々への有機農業の指導や、女性の自立に向けた手織り生地の技術指導も実施しています。
8番の持続可能な経済成長と1番の貧困の撲滅についてですが、
bioReでは6,000軒以上の農家がオーガニックコットンを栽培し、
買取り保証や15%のプレミアムといったサービスを利用するなどして貧困から脱するための手がかりを得ています。
また、4つの女性グループが縫製や手織りの生地を生産するための支援を行っており、
彼女たちは平均的な賃金よりも高額な収入を得ることができています。
12番目の持続可能な消費と生産サイクルを作るという目標についてですが、
先程も申し上げた私たちbioReの大切な5つの柱(オーガニック、フェア、環境、カーボンニュートラル、透明性)を
守ることで達成しています。
オーガニックは単なるラベルのことではなく、その姿勢にこそあるということ。
そのことを実践しているREMEIという会社、bioReというプロジェクトに私たちは大変誇りを持っていますし、
私自身もそのすべてをとても愛おしく思っています。
私たちはこのプロジェクトに未来の展望、そして可能性を見出しています。
ですので、常に持続可能な手立てを考え、実践しなければならないと強く感じています。
最後に皆さんにお伝えしたいメッセージがあります。
製品についているラベルを見るとき、その後ろにはどのような背景があるのかを少しだけ想像してみてほしいということです。
本日ご紹介した私たちの取組みが、少しでも皆さまのお役に立てることを願っています。
ご清聴ありがとうございました。
>>>後編bioRe India CEO Vivek Rawalさんのプレゼンテーションは5月末に公開予定。