小児白血病患者の標準看護計画
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小児期の悪性腫瘍のなかで最も発生頻度が高く、年間1000人の発症がある。発症のメカニズムについては、癌遺伝子についての研究が進んでいる。急性白血病の80%は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。大きくT細胞系とB細胞系とに大別される。急性白血病の20%が急性非リンパ芽球性白血病=急性骨髄性白血病(ANLL)である。形態的に、FAB分類でM0-M7に分けられる。小児の全白血病の5%にすぎないが、慢性骨髄性白血病(CML)がある。最近では、単クローン抗体による白血球細胞の表面抗原の解析や染色体あるいは、遺伝子解析による詳細な分類が可能になり、その診断によって予後も異なるため、治療戦略には工夫が必要である。
小児白血病は不治の病から治りうる疾患へと変貌し、小児白血病の看護も治療中心の看護から患児や家族のQOLを見据えたトータルケアーの時代に入ってきた。診断により悪性疾患の告知で家族のショックは計り知れない。又、患児にとって長期となる入院生活、さまざまな治療、検査、処置は苦痛を伴うものである。小児白血病の看護にかかわる医療者は、小児白血病治療に関する知識の他に、QOLを高めるためのトータルケアーの実態についても学び、QOLを考えた質の高い看護を提供できるようにしていく必要がある。(※QOLとは、人間らしく生きるための生活の質・その人自身が感じる生に対する満足度・命の輝き)
1.正常骨髄細胞の減少
白血病細胞の骨髄内での増殖のため正常細胞が骨髄から駆逐される(骨髄の占拠)。それによって3血球系統とも減少する。
1)赤血球の減少→貧血(顔面の蒼白)、呼吸困難
2)好中球の減少→細菌感染、発熱
3)血小板の減少→出血傾向(歯肉出血、紫斑など)
2.白血病細胞の他臓器への浸潤
骨髄で増殖した白血病細胞はさらに他臓器へと浸潤し、多様な症状が出現する。
1)髄膜や脳実質への浸潤による意識低下、視力障害、難聴などの脳症状
2)内臓浸潤による臓器肥大(肝脾腫、腎腫下)
3)精巣、卵巣への浸潤による肥大
4)骨・関節への浸潤による骨折や関節痛
5)皮膚浸潤による発疹(皮膚白血病)
3.細胞破壊の亢進
白血病細胞は一方的に増殖を続けるだけでなく、増殖する細胞が多い分、自壊していく細胞も多い。その結果、細胞のなかの酵素や尿酸などが肝・腎などの排泄器官の機能以上に高値となることがある。
1)GOT・GPT・LDHなどの上昇
2)尿酸の上昇による腎排泄障害、腎不全
3)播種性血管内凝固症候群(DIC)による出血、フィブリノーゲンの低下、FDPの上昇
- 定期的身体所見の観察
- 骨髄検査
- リンパ節生検
- 血液一般検査
- 胸部・骨のレントゲン撮影
- 尿検査
- CTスキャン
1.化学療法(多剤併用療法)
1)寛解導入療法(骨髄中の芽球を減少させる)
2)強化療法(骨髄中に残存している芽球を減少させる)
3)維持療法(芽球が再び増加しないようにする。身体の免疫機構が残存白血病細胞を排除してくれるのを維持する)
4)中枢神経系白血病予防療法(全脳放射線照射髄腔内注入:白血病性髄膜炎の予防。メソトレキセート、サクシゾンの使用。)
2.骨髄移植
化学療法ではあまり期待できない白血病にたいして適応がある。大量の抗癌剤や全身放射線照射によって白血病細胞のみならず、正常な骨髄中の造血細胞を全て破壊した上で他人の正常な骨髄造血細胞を移植する。
3.補助療法
貧血、易感染、出血に対して行なう新鮮血、あるいは血小板、顆粒球輸注。感染に対し、抗生物質の投与、無菌環境への隔離。他、治療によって起きる症状に対し、高カロリー補液、制吐剤の投与。
1.診断、入院治療時期
子供の病気の重大さを知る両親の気持ちを思いやり、入院、治療に必要とする情報の提供し、困難な状況を乗り切れるよう医師と協力して援助する。検査、治療による著しい身体的苦痛と不快を最小限にするため、子供に応じた適切な援助が必要となる。発達段階に応じた日常生活への援助が必要である。
1)乳幼児期 → 生活そのものが遊びであるが、治療中でも楽しく遊べるよう喜びのある日常生活であるよう援助。
2)幼児期 → 基本的生活習慣の獲得の時期でもあり、症状に応じて生活習慣への適切な援助。
3)学童・思春期 → 学習が発達課題でもあり、子供の可能性を引き出す援助。気分転換やストレス発散の援助。
2.退院、通院時期
退院後にも患児にとって良い状態が維持されるよう、退院に向けて指導を入院中から行ない、病棟から外来への看護の継続を行なう。
1)両親に対して → 悪化防止のための観察点の理解、感染防止の留意点、服薬、外来通院などについて指導する。退院後の予測される問題点を整理し、患児にとって最善であるよう相談に乗って対応する。
2)患児にとって → 普通の子供と同じ日常生活に戻れるよう、自信を持って行動できるように、可能な行動内容、禁忌を理解させる。
3.再入院、入退院を繰り返す時期
両親に対して、子供のニーズにあった接し方ができるように援助する。子供に対して、長期入院によって生ずるストレスを配慮する。子供自身が疾患をどのように認識しているか把握し、納得のいく対応が必要とされる。
4.ターミナル時期
子供の痛み、不快を軽減し、気持ちを安定させることが最も大切である。子供と両親が適切な関係であるよう援助する。
Ⅰ.アセスメントの視点
白血病は正常な造血の抑制による貧血、出血傾向、白血球減少などによる易感染性、骨や関節痛、その他発熱や全身倦怠感、食欲不振などが症状としてあらわれ、経過によって症状や訴えは変化する。毎日の一般状態の観察(バイタルサインのチェック・出血斑及び出血傾向、児の機嫌や活動状況など)や検査結果をもとに、常に情報を正しく把握する必要がある。また精神的問題に対しては、親と患児それぞれに大きな援助が必要となる。年少児であれば、主に親への対応が中心となり、年長児では患児と親への対応となり、思春期にある児には患児自身の問題が深刻となることを念頭におき接することが大切である。
Ⅱ.問題リスト
[要因]・疾患そのものの恐れ
・病気の兆候(嘔気、貧血症状、内出血斑など)
・治療、検査に対する情報不足
・入院という慣れない環境
[要因]・症状からくる精神的苦痛
・検査、処置の痛みからくる身体的苦痛
[要因]・抗癌剤による胃腸障害、腎障害
・点滴漏れによる組織壊死
・骨髄抑制による易感染
・体力の低下
[要因]・疾患そのものへの恐れ
・患児の治療経過、予後や経済面の不安
・日常生活
・家族内の役割の変化
・患児と家族間の人間関係(コミュニケーション)
[要因]・生活パターンの変化
・活動制限
・予後
[要因]・疼痛など苦痛の緩和
・家族と患児の闘病意欲
Ⅲ.看護目標
- 患児の成長・発達を促し、自分らしさが表現できるように周囲の環境を整える。
- 患児の身体的消耗を最小限にし、疼痛、出血、感染などによる苦痛の軽減を図る。
- 化学療法を受けている患児の状態を観察し、副作用など異常の早期発見に努める。
- 言動の統一を行ない、患児に不安を抱かせないようにする。
- 家族(必要時は患児にも)が治療計画を十分理解し、受け入れることができ、協力が得られるように説明する。
Ⅳ.看護問題
[要因]・疾患そのものの恐れ
・病気の兆候(嘔気、貧血症状、内出血斑など)
・治療、検査に対する情報不足
・入院という慣れない環境
&診断のための検査と治療の必要性が分かり、納得できたことを言葉で表現する
患児、家族の思いや不安を言葉で表現できる
$退院まで
O-1.入院への適応状況
2.疾病、検査、治療に関する患児、家族の情報量と理解度
3.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度
4.性格と対処行動及び対処能力
T-1.検査、治療の必要性、方法を児の年令、理解度にあわせ解りやすく説明し、協力を得る
2.検査結果について、医師から十分説明を受けることができるように配慮する
3.患児や家族の訴えをよく聴き、不安が表出できるように家族との信頼関係を作り、受容的態度で接する
E-1.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して検査、治療が受けられるようにする
2.不安な状態を表出してもよいことを伝え、不明なところは質問できるように促す
[要因]・症状からくる精神的苦痛
・検査、処置の痛みからくる身体的苦痛
&身体的、精神的苦痛を最小限にとどめる
$退院まで
O-1.痛みの部位、程度、検査、処置との関係、持続時間
2.検査データーの結果
T-1.安楽な体位を工夫する
2.医師の指示により鎮痛剤投薬
3.感情の動揺や緊張を避けるように援助する
E-1.痛みが自制不可の場合、医師、看護婦に報告する
2.苦痛緩和するまで安静を保持する
[要因]・抗癌剤による胃腸障害、腎障害
・点滴漏れによる組織壊死
・骨髄抑制による易感染
・体力の低下
&自覚症状出現時は、医師または看護婦に報告でき、適切な処置が受けられる
体力の低下をきたさない
$退院まで
Ο-1.バイタルサインのチェック
2.薬剤による副作用の観察
3.食事摂取量、水分量、尿量、水納バランスチェック
4.消化器症状の観察(食欲、グル音、嘔気、嘔吐、便通、便性状など)
5.皮膚、粘膜の性状観察(アフタ、発赤、発疹、びらん、疼痛出現の有無など)
6.一般状態の観察
7.検査データーの結果
T-1.感染予防のため口腔、皮膚、陰部の保清保持に努め、ケア時はこすらず、手早く行なう
2.出血傾向に注意し、採血後、検査後、処置後の止血の有無、点滴トラブルの有無の確認。歯ブラシは毛の柔らかい
ものを使用する。転倒・転落を予防する
3.副作用の出現時は医師に報告し、指示を得、早期に対処する
4.便通を整え便秘、下痢は早めに対応し、肛門・臀部の発赤の予防をする
5.内服の確認、内服困難な場合は児に適した方法を用い介助する。必要に応じ形態の変更を医師に依頼する
6.脱毛出現時、頭髪の保清を行い毛髪の散乱を防ぎ、ベッド周囲が清潔となるよう環境を整える。年長の児ではショックが大きいため、フォローする。(散髪や帽子、ナイトキャップ、バンダナのなどの配慮)
7.流行性感染症の既往や予防接種の有無をチェックしておき、もし感染症にかかった児に接触したり、感染した場合は速やかに医師に報告し、対処する
8.医師より治療目的、副作用について説明するか、本当のことを言わないことが多いので医療従事者は家族と伴に言動を統一して、児の年令に合わせて説明できるようにしておく
E-1.副作用、消化器症状、倦怠感出現時は医師、看護婦に報告するよう指導する
2.内服の必要性について説明する
3.白血球減少時の感染予防について、血液の働き・含嗽・手洗い・マスクの着用・生食禁止について説明、指導する
4.必要に応じ面会を制限する
[要因]・疾患そのものへの恐れ
・患児の治療経過、予後や経済面の不安
・日常生活
・家族内の役割の変化
・患児と家族間の人間関係(コミュニケーション)
&家族が不安な気持ちを表出でき、家族サポートをとおして患者が支えられる
$退院まで
O-1.家族の表情、言葉、態度
2.家族と患児との人間関係
3.家族、患児間の疾患の理解度、認識の差
4.家族間の協力体制、人間関係、家族構成
5.経済的問題の存在
T-1.家族とコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度で接する
2.患児への説明は言動を統一する
3.家庭内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な場合は相談にのる
4.学業の遅れに対し、院内教育(教師派遣)の配慮を行う
E-1.家族が患児の今後をイメージできるように退院後の日常生活について知識を与える
2.家族に継続が必要なケア(食事、受診、服薬等)について指導する
3.家族に患児のサポートの必要性を説明する
[要因]・生活パターンの変化
・活動制限
・予後
&身体的、精神的に自立し退院に向けて準備できる
$退院まで
O-1.患児、家族の言葉、表情、行動
2.セルフケアの自立度
3.疾病についての患児、家族の認識
4.家族の協力体制(キーパーソン)
T-1.患児、家族が質問しやすい雰囲気を作り、気持ちを表出させる
2.家族の協力を依頼する
3.学校、家庭復帰に向けた個々の目安にについて、医師と連絡をとりながら説明していく
E-1.栄養のバランスのとれた、消化の良い食品を選ぶ。また鉄分、カルシウム、ビタミンを摂るよう心掛ける
2 退院後の患児の環境や背景を考慮し、食生活をイメージして、必要時なま物禁の食事にし、ステロイドによる過食時には低カロリー食にするなど、患児と家族に食事指導する
3.暴飲、暴食はしない
4.感染予防、日焼け予防が継続して行うように指導する
5.排便コントロール
6.規則正しい生活をし、適度な運動を取り入れる
7.学校、社会復帰については医師に相談する
8.定期受診(医師の指示)、服薬指導(医師の指示)
[要因]・疼痛など苦痛の緩和
・家族と患児の闘病意欲
&苦痛が最小限に抑えられ、安楽に過ごせ、闘病意欲が維持できる
$終末まで
O-1.苦痛の種類(疾病によるもの、精神的、長期臥床によるもの等)と程度
2.患者の言葉、表情
3.睡眠状況
4.病状の進行度
5.バイタルサイン
T-1.鎮痛剤、睡眠薬を使用して苦痛の軽減を図る。使用後は一般状態の変化に注意する
2.麻薬の使用時、麻薬の管理、副作用に注意する
3.医師、看護婦、家族の言動の統一
4.温かい対応に努める
E-1.家族と患児が一緒に闘病意欲を維持できるよう、励ましていく。児らしい笑顔が表出でき思いで作りができるよう援助、配慮する
&宿酔症状が最小限に抑えられるよう、症状を理解しケアできる
$放射線療法終了まで
O-1.全身倦怠感
2.悪心、嘔吐
3.口腔粘膜の変化(口内乾燥、痛み、汚染)
4.照射部位の皮膚の変化(発赤、色素沈着、痛み、掻痒感等)
5.脱毛
6.血液データー(骨髄抑制の有無)
T-1.照射部位はこすらない。清拭時は圧拭にする
2.含嗽
3.口内の症状がひどい場合は、医師の指示のもとに粘膜保護剤や消炎剤を使用する
4.倦怠感、悪心等の症状がひどい場合は医師に報告する
E-1.定期的な診察日には、自覚症状を医師に伝えるよう指導する