加齢臭
「加齢臭」という言葉は、2001年に資生堂リサーチセンター研究員が命名した言葉です。
命名者の意図は、「加齢により体臭も変化する」という概念を示す言葉で、当初の研究対象は高齢の女性の体臭でした。
研究者らは、「26歳から75歳までの女性が3日間着用したシャツ」からガスクロマトグラフィーなどを駆使して体臭成分を分析しました。
その結果、多くの体臭成分は濃度の年齢による影響が少なかったのですが、「2-ノネナール」(C9H16O)の濃度が、40歳前後を境に顕著に増加する傾向があることを見つけたのです。
ノネナール発生の仕組み
1. 加齢に伴って皮脂中のパルミトオレイン酸(脂肪酸)や過酸化脂質が増加
(※パルミトオレイン酸は加齢に伴って増加します。)
2. パルミトオレイン酸が過酸化脂質や皮膚常在菌により酸化・分解がすすむ
3. その結果、「ノネナール」がつくられ加齢臭が発生
とあります。どうやら、パルミトオレイン酸(Palmitoleic acid)が元のようです。
脂肪組織のグリセリドに含まれる不飽和脂肪酸で、あらゆる組織に存在するが、特に肝臓で濃度が高い
とあります。
パルミトレイン酸周辺の混乱
ところで、美容分野のサイトでは、パルミトレイン酸は、
肌をきめ細やかに整え、乾燥した肌を潤わせる働きがあり、30歳頃をピークに減少するので、
それを含んだオイル(マカデミアナッツオイル、アプリコットオイルなど)で補充したほうが良い
と勧誘しているところが多いので、話が厄介です。
「加齢に伴って増加」、「30歳頃をピークに減少」、どちらが本当なのでしょう。
(抜粋・要旨)
毛穴の目立つ人はそうでない人に比べて、皮脂中に不飽和遊離脂肪酸の比率が高い。
皮脂中の不飽和遊離脂肪酸としては「オレイン酸」や「パルミトレイン酸」が知られている。
オレイン酸を実際に顔面皮膚に塗布したところ、塗布部位ではキメが乱れ、肌が荒れた状態となった。
とあるのです。(このリリースには日付の記載がないが、調査は2002年実施と記述あり)
(不飽和遊離脂肪酸の「遊離」とは、生物における他の化合物と結合していない脂肪酸の意)
不飽和脂肪酸は肌に悪いと言っていますが、ここでも美容分野のサイト群の意見「肌をきめ細やかに整え」とは異なるようです。
このリリースで出てきたオレイン酸についても、肌に良いという意見(美容系)と、肌が荒れるという意見(例:NHK・2012年3月7日「ためしてガッテン」、解説は資生堂研究員)があるのです。
また、ノネナールの元となる不飽和脂肪酸についても、今まで紹介してきたように「パルミトレイン酸」であるというサイトと、「9-ヘキサデセン酸」であるというサイトがあります。
9-ヘキサデセン酸のほうが、化学的には正式な言い方のようですが、これには有機化合物の常として異性体がいくつか存在していて、
などがあり、全て化学式はC16H30O2ですが、構造式の異なる別の物質となります。
パルミトレイン酸は、「chemicalbook.com」によると「cis-9-」と同じものとされていますが、Wikipediaでは「9-」と同じものとされています。
管理人は、ネットで見かけた情報を記事に取り入れるときには、できるだけ一次情報に近いところまで遡って確認することにしているのですが、これほど錯綜しているのも珍しいです。
男とノネナール
もともと高齢女性の体臭が対象だっただけあって、本来は男性と女性、ともに気にすべきものなのでしょう。
実際、発表されている資料で見る限り、女性のほうがノネナール量の多い年代が存在するのです。
未だに男の加齢臭をノネナールのみのせいにしているサイトが多く見受けられるのですが、信用できるのでしょうか。
おやじ臭
男の加齢臭について、同様の疑問が残っていたからなのでしょう、近年いくつか男性特有の原因を探った研究が出ています。
2008年11月、ライオン発表。
男性向け消臭剤の研究目的で、20代後半から30代特有のニオイについて研究
「ペラルゴン酸」(C9H18O2)を原因とする加齢に伴う臭いがあることを発見
この物質は主に30代から増加するという報告もある
2013年11月、マンダム発表。
30代から40代の男性の悪臭の原因として、40歳を中心とした男性の頭部周辺から
ジアセチル(C4H6O2)を発見
20代の男性に比べ不快な強い脂臭を発している
ジアセチルは酢の120倍にもなる強い臭気、これを「ミドル脂臭」と命名。
正直、なんだか悲しいですね。
これらが、「おやじ臭」と呼ばれるものだということです。
おやじ臭を解消できるか
一般的に男性は汗や皮脂などの老廃物の分泌が女性に比べて多く、体臭もそれに伴い強いものとなる。
加齢臭に於いても男性ホルモンが皮脂腺の発達を促し、皮脂が大量に分泌されるため強い悪臭を放つようになる。
と決めつけられていますが、「酸化ストレス」などに対処することによって、軽減できるという意見もあります。
今後、その観点を取り上げていこうと思います。
2-ノネナールそのものは、不飽和アルデヒドの一種であり、油臭くて青臭いニオイがする。
熟成したビールおよびソバの重要な芳香成分でもある。