これまでもコシナ・フォクトレンダーレンズは愛用してきました。特にSL II NシリーズのULTRON 40mm F2、NOKTON 58mm F1.4は大好きで、今でも頻繁に使用しています。ただひとつだけ欠点が それはマイクロフォーサーズ用ではないため、現在の筆者のメイン機であるパナソニック LUMIX GH4には、変換マウントを介しての使用だったことです。
マイクロフォーサーズ用F0.95 NOKTON
10.5mm:最短撮影距離17cmで、1cm刻みに刻印がついているが、超広角で1cm刻みの刻印は珍しい。F5.6に絞ると35cmから無限遠までピントの範囲に含まれる。
17.5mm:最短撮影距離15cm。F8で約1mから無限遠までの被写界深度が得られる。
25mm:最短撮影距離17cm。ピントリングの回転角が約270°もある。
42.5mm:最短撮影距離23cm。さすがに被写界深度が非常に狭くなっている。F8で4.5mから無限遠までの被写界深度が得られる。
機材詳細:www.cosina.co.jp/seihin/voigtlander
しかしこのF0.95 NOKTONシリーズはマイクロフォーサーズ専用マウント。ずっと気になっていたのですが、いかんせん「お値段が結構する」ので何となく遠巻きに見ていました。そんな折り、編集部から「動画撮影でも評判がいいので、テストしてみますか」と話があり、すぐに「試したい!」と返事をしていまいました。
F0.95 NOKTONシリーズはマニュアルフォーカスの単焦点レンズで、10.5mm、17.5mm、25mm、42.5mmの4タイプ(35ミリ換算で21mm、35mm、50mm、85mm)。「これだけ揃えたらば、もうあとは何もいらないよね」というラインアップです。しかもF0.95という明るさ(実は筆者はそんなレンズを所有したことがありません)。
触ってみて直ぐに「動画撮影にもいい」ということがわかります。驚いたことに「絞りリングをクリックなしで無段階にコントロールできる」仕様。時間軸に沿った映像表現においては、撮影中に滑らかに絞りを変更できることは、かなり重要なポイントです。ブラックアウトやホワイトアウトといった表現も、これまではクリックが邪魔で上手くできなかったのです。クリック音もなくなります。もちろん「絞りを固定」したいときには、すぐさまクリック有効に変更できます。
もうひとつ、フォーカスのストロークは非常に滑らかでやや重め。そしてストロークも長く取られています。このフォーカスを「マニュアルで自在にコントロールできる」感覚は、通常の一眼レフ用AFレンズ(のフォーカスリング)では、なかなか味わえないものです。最近はマニュアル時に等倍表示可能なカメラが増えてきたので、フォーカスのイン、アウトにかなり使えると思います(距離目盛りも細かく刻まれているので、これがよい指標になります)。
ピント合わせをF0.95の絞り開放で行ない、F2.8まで絞ると「F2.8でもこんなに被写界深度があるんだ!」と驚かされます。映像表現には直接関係ありませんが、その重さと手触りから伝わってくる満足感、信頼性とも言える感覚を、久々に堪能しました。
実際にそれぞれのレンズをスチル撮影、動画撮影に使ってみて「マイクロフォーサーズであるからこそF0.95」という理由に気がつき、ハタと膝を打ちました。
F2.8からさらに丸々3段分の明るさを稼ぐことによって、センサーの小さいマイクロフォーサーズでも、35ミリフルサイズが持つぼけ感、被写界深度と同等、あるいはそれ以上の使い勝手を得ることが可能になったと言えるのです。ここまでF値が小さいと、10.5mmの広角でも背景との距離いかんで、いくらでもぼかすことが可能です。
さらにこのレンズの明るさは、ロケの時に持っていく照明機材の減量にもなります。
また絵作りの特徴として、4本のレンズ全てに言えることですが、エッジがカリカリにならない 柔らかさとグラデーションの繋がりを重視した設計のようです。
マニュアルフォーカスであること、単焦点であること、開放F値が非常に明るいこと、重厚な作りなどの特徴は、そのままメリットにもデメリットにもなるようです。
さまざまな撮影で気軽に使えるレンズという訳ではありません。短焦点レンズの価格とすれば確かに高価にも感じます。特に動画撮影でこのレンズ群を使いこなすには、浅いピントでのフォーカスワークなどにかなりの修練と、こういう絵が撮りたいという気合いが必要ですが、このレンズでしか撮れない映像が撮れるはずです。