演劇・小説・ドラマなど、ジャンルを飛び越えボーダレスに活躍するクリエイター・前田司郎が、自身の同名小説で映画監督に初挑戦。
前田の真骨頂といえば、やはり台詞。一見脱力系に見せながら、人間同士の〝わかりあえなさ〟と〝わかりあいたさ〟のせめぎ合いを鋭く描き、
笑いだけに留まらず、やがて果てしない宇宙的哲学にまで昇華する前田ワールド。
今回、映画で前田が描くのは、たった4名の男女が旅する物語。
移動中に繰り広げられる会話劇は、これまでの前田ワールドの魅力が遺憾なく発揮されている。
一度、知ってしまうと、ハマらずにはいられない、この神的世界に心酔してしまう人が急増中!

 前田司郎 (原作・監督・脚本)
1977年、東京生まれ。作家、劇作家、演出家、俳優。五反田団主宰。
08年「生きてるものはいないのか」にて第52回岸田國士戯曲賞を受賞。また小説家として07年「グレート生活アドベンチャー」にて第137回芥川賞候補、09年「夏の水の半魚人」で第22回三島由紀夫賞を受賞。著書に「愛でもない青春でもない旅立たない」「誰かが手を、握っているような気がしてならない」(講談社)「グレート生活アドベンチャー」「逆に14歳」(新潮社)「濡れた太陽 高校演劇の話」(朝日新聞出版)など。
自作の小説「大木家の楽しい旅行 新婚地獄篇」(幻冬舎)が11年に、『生きてるものはいないのか』(石井岳龍監督、原作・脚本/前田司郎)

が12年に映画化。シナリオライターとしても、『横道世之介』(沖田修一監督、脚本:沖田修一・前田司郎)、NHKドラマ「お買い物」を担当、放送文化基金賞 平成21年度テレビドラマ番組賞、2008年度ギャラクシー賞優秀賞を受賞。
演劇作品では、五反田団として1997年立ち上げ以来、これまで40作品以上を発表しているほか、高校生から他劇団まで、作品の提供や演出を務める。
また、自身の作・演出・出演による09年「すてるたび」をベルギー、スイス、ハンガリー、フランス、シンガポールで上演。以後、海外での公演も積極的に行う。

――これまでご自身の戯曲や小説が映画化されたり、映画の脚本を手がけたりということはありましたが、いつかご自分で監督をしたいっていう気持ちはあったんですか?

前田 それがほとんど映画を見ないので、映画監督への憧れみたいなものはありませんでした。お話をもらった時も、演劇や小説と使う道具は違うけれど、作品をつくるという意味では一緒、っていう、軽い気持ちで受けてしまったところはあります。

――初監督作品で、原作・脚本もご自身で手がけることになりましたが、いかがでしたか。

前田 それが一番よけいな摩擦を生まないだろうと思いました。ただ、当初は別の原作を考えていたんです。以前、発表した小説で、演劇作品にもした「偉大なる生活の冒険」を考えていました。それが震災の影響で撮影スケジュールが延びていくうちに、主人公に内定していた井浦新さんの年齢が当初の設定から離れてきてしまいまいした。そこでプロデューサーと相談し、作品を変えてみてはどうかという提案をいただき、ちょうどその頃、文芸誌の「すばる」で連載を準備していたので「こういう作品があるんですけど」と話したところ「これ、いいじゃないですか」となりました。それが『ジ、エクストリーム、、スキヤキ』だったんです。

――映画の場合はスタッフワークもあって、全篇にわたってあらかじめ決めておかなくてはならないことが多いですよね。

前田 そうなんです。もちろん芝居の台本でも、一度完成と決めたらそこから大幅にいじることはしないんですけど、ディテールについては稽古場でつくっていく部分がけっこうあります。稽古なら失敗もできるし、そこから面白い展開が生まれることもある。でも映画の場合、最初から細部まで完成したイメージを要求されます。それがないとスタッフが動けませんし。芝居と同じような感覚でいて、ちょっとした思いつきで「役者が画面に入ってくる方向を変えてみましょう」なんてやると、照明を組み替えたりして2時間ぐらいかかってしまう。そこがちょっと戸惑った部分ではありました。

――井浦新さん、窪塚洋介さんについてお聞かせ下さい。

前田 井浦新さんはすごく誠実で真面目な方で、いい意味で、俳優っぽくないところがある方。いろんな経験をされている中で、それを俳優業に活かしている感じがしたんです。そこがいいなと思ってお願いしました。窪塚洋介さんは、お会いする前はちょっと怖いイメージがあったのですが(笑)お会いしたら、すごくセンスの合う方で、これは一緒に面白いものがつくれるなって思いました。

――二人ともボンクラっぽい会話のグルーヴが最高でしたね。

前田 撮影前に稽古の時間を多めにとってもらいました。それが大きかったです。最初はしっくりいかない部分もあったんですけど、稽古を重ねていくうちにカチっとはまった瞬間があって、以降それを共有することができたので。

――音楽を岡田徹さんが担当され、ムーンライダーズの曲も使われています。

前田 もともとムーンライダーズはすごく好きだったんです。音楽を使うんだったら是非ムーンライダーズにしたいと思っていました。岡田徹さんにはオリジナル曲をつくってもらったりもしたんですけど、いろいろ話していくうちにムーンライダーズの楽曲(「馬の背に乗れ」「僕の努力」「Cool Dynamo, Right on」)をそのまま使わせてもらうことになりました。