岩槻
いま24歳。この春入団なさったばかりのフレッシュマン・黒金さんの姿を「N響アワー」で拝見し、その豊かな響きに驚いていました。N響では、バストロンボーン専門ですか?
黒金
N響では、というより、音大を目指そうと思った時から、バストロンボーン一筋です。
岩槻
バストロンボーンとふつうのトロンボーン、使い分けはできるものなのですか?
黒金
もちろんできる方もいますが、最近はテナートロンボーン職とバストロンボーン職の棲み分けが進んでいるようで、僕は最初からバストロンボーン一本です。
岩槻
前任も黒金さんの師でもあった秋山鴻市氏お1人でしたが、もし黒金さんが体調を崩されたらどうなさるのですか?
黒金
2番・3番を吹いている吉川武典が吹き分けます。
岩槻
高校2年生で音楽家になろうと思われたそうですが、バストロンボーンのどのようなところに魅力を感じられたのですか?
黒金
トロンボーン・セクションでハーモニーをつくるとき基盤になる音を響かせるのが多くの場合バストロンボーンなのです。そして、トロンボーンとテューバの橋渡し、コントラバスやチェロの低弦との繋ぎ役など、曲や場面によっていろいろな役割を果たすことができ、難しいですが、やりがいがあります。また、バストロンボーンの吹き方によって音楽全体の印象が変わってしまったりする場合があり、どきどきします。
岩槻
繋ぎ役というのは……
黒金
音色感を含め——まだまだ勉強しなければならないところなのですが——トロンボーンと弦が分離しないようにいろいろ……
岩槻
難しそうですね。どうイメージすれば……
黒金
ハンバーグのパン粉というか。
岩槻
お若いので謙遜なさっていらっしゃいますが(笑)、もっと存在感はあると思います。弦との繋ぎ役は、どのように研究なさっているのですか?
黒金
曲中の休み、また降り番のとき、弦楽器奏者の弓の使い方や、弦楽器奏者はどういう時にどういう音を出したいと思うのかなど、とにかくよく見て考えることの繰り返しで、邪魔にならないように——と言うと消極的に聞こえるかもしれませんが——、その部分で共に出すべき音色の“芯”になるような響きを探り当てられればと。どのようなセクションでも繋げられるようなバストロンボーン奏者になることが、僕の目指す大きな目標の1つです。
岩槻
右には先輩方、左にテューバ、前方にはコントラバス、低弦も含め、低い音群への傾注は相当なものですね。
黒金
僕の癖なのでしょうが、小さい頃からどんな音楽を聴くときにも低音(大太鼓やティンパニも含めて)から聴く、というか、耳に入ってくるのです。
岩槻
ところで、あのような大きな楽器を鳴らすのですから、肺活量もすごいのでしょう?
黒金
学生時代に測ったところ4000mlぐらいでした。
岩槻
意外に平均的ですねぇ。でもなにか、体を鍛えたりなさっているのでしょう?大きな方が大きな音を出すのは納得できるのですが。
黒金
特には……
岩槻
では、どうしたらあんな豊かな響きを放てるようになるのでしょう?
黒金
筋トレはしませんが、ブレスをするためのトレーニングはしています。でも1日5分ぐらいで済んじゃうんですけど。
岩槻
昔からですか?
黒金
はい。話をしたり食べたり普段生活している時の体の使い方と楽器を吹くための体の使い方とは全くちがいますので、まず、楽器を吹くための体にシフトしていくイメージで、胴体のストレッチ——このように胸を上げるというか——をし、息の入る“伸びシロ”を拡げます。
岩槻
えー!!!(カメラマン等室内の全員驚き!)。風船を膨らませたみたいに、上半身の形が大きく変わりましたね。
黒金
最初に“伸ばして”おくということで、スムーズに息を吸い息を吐ける体にシフトします。
岩槻
どうやって鍛えるのですか?
黒金
走ったりして運動したりするのが近道なのかもしれませんが、肺活量が増えたからといって無闇に息を吹き込めば音が破けたりしますし、矢鱈に息を吹き込めば大きな音が出るというわけではありません。無理なく楽器を響かせられるように、息の吹き込み方と楽器との良いバランス感を常に考えながら吹いています。
それに、人と比べてそうたくさん吸える方ではないので、音が切れて聞こえないようなブレスの仕方、つまり、ブレスはしているのですが音が途切れて聞こえないような息の仕方を研究しています。鼻で吸ったりすることもあります、何とか繋げられるようにと。
岩槻
音楽的に、前に出て活躍する曲はありますか?
黒金
コダーイの《ハーリ・ヤーノシュ》第4楽章で、テューバといっしょにソロ的な演奏をします。ここは、ホラ吹きおじいさんが「ワシは昔ナポレオンをやっつけてな」と語るところで、ちょっとカッコよくて、ちょっと間抜けな語り口の部分です。
岩槻
さまざまな役割への挑戦、がんばってください。ありがとうございました。
写真撮影 ― 堀田正矩
「フィルハーモニー」2009年10月号掲載 ※記事の内容及びプロフィールは取材当時のものです。