ナビスコ杯をU-23に?

 報道によると、日本サッカー協会の犬飼会長は一昨日、ナビスコカップを23歳以下の大会とすることをJリーグに提案している事を明かした、とのことです。「北京五輪ではJリーグのレギュラーが少なくて勝てなかった。実戦の場を増やすためにナビスコ杯をU-23とし、オーバーエイジ枠を3人と考えている。スポンサーと非公式に話したが前向きだ」とのことで、「Jリーグの秋春制移行」の検討に続く「J改革」案の第2弾だ、とのことです。 プロ野球の2軍に倣った形でサテライトリーグを行っているJリーグですが、「若手育成」と言うお題目の通りにはいかずに形骸化している、と言うのは誰もが思っていること。タイトルにも昇格にも降格にも関係のないリーグ戦と言うことで、単なる練習試合以上の意味はない、と言って良いでしょう。真剣勝負の経験量が選手の成長を決める、と言っても良いことを考えれば、現状に何らかの手を打たなければならないのは確かです。もともとナビスコ杯は代表選手がいない時にやっている大会で、控えだった選手が成長する機会にもなっています。従ってそれを制度化することによって若手の出場機会をより増やす方向にする、と言うのは悪い考えではなりません。 しかし、だからと言ってナビスコ杯をいきなりU-23の大会にする、と言うのはいささか強引過ぎるのではないでしょうか。なぜならクラブによっては、U-23だけでは(オーバーエイジを認めるにしても)人数が揃わない、と言う事は十分にあり得るからです。例えば今年の東京Vはシーズン開幕当初の保有選手は34人でしたが、その中で23歳以下の選手は7人だけ。オーバーエイジを入れても11人揃えることはできません。京都はもっと苦しくて30人中U-23は5人しかいないわけで、これではナビスコ杯に参加することすら不可能だ、と言って良いでしょう。ついでに広島ですが、開幕時の保有選手28人のうち23歳以下は16人なので、今年なら十分にチームを組むことができます。でもこのU-23には「ユース黄金世代」である86年生まれが多いので、再来年には大きく減ってしまう可能性があります。仮にナビスコ杯がU-23の大会となるならば、そのへんも考えて今後のチーム作りをしなければならない、と言うことになってしまいます。 そもそも「秋春制問題」にしても「天皇杯のベストメンバー問題」にしても、良く考えずに思いつきで発言しているように見える犬飼会長ですが、このナビスコ杯の問題についても似たような事が言える、と思います。そもそもの話の前提である「北京五輪ではJリーグのレギュラーが少なくて勝てなかった」と言うことだって認識違いもいいところ。五輪代表の18人のうちクラブでレギュラーではなかったのは山本海(清水)と豊田(山形)ぐらいのもので、他は各クラブの主力級の選手ばかりでした。だいたい五輪は予選段階からJリーグクラブの迷惑も顧みずにチームを作り本大会に参加したと言うのに、その反省もなく逆にJリーグのせいにする姿勢には到底納得できません。また、この提案は明らかに「天皇杯にもベストメンバーを出すべきだ」と言う考え方と矛盾しています。24歳以上の選手だけでなく代表組(場合によってはU-23代表のこともある)が不在で戦う試合は、「ベストメンバー」からは程遠いことになることは明白。天皇杯はベストメンバーで戦うべし、ナビスコ杯はメンバー落ちで戦うべし、と言うことで本当に良いのでしょうか? では、若手育成のためにはどうすれば良いか。たぶん一番簡単なのはどの大会からも「ベストメンバー規定」を無くすことだと思います。クラブにとって公式戦で負けて良い試合なんてないわけで、それでもメンバーを落とすと言うのには必ず正当な理由があるものです。今回の天皇杯でも大分がメンバーを入れ替えたのは、ナビスコ杯決勝の疲れがあったから。ハードな日程で選手が怪我をすれば損をするのはその選手とクラブなのですから、そうならないようにメンバーを休ませたからと言って外部がどうこう言うのは大きなお世話というものです。逆にこのような「ターンオーバー」により出場機会が少なかった選手が貴重な経験をできたわけで、それこそ「若手育成」にも繋がることなのです。年間34試合のJ1リーグ戦に加えてナビスコ杯、天皇杯とあり、更に代表やACLもあるわけでそれらに優先順位を付けるは仕方のないこと。その中でどこを優先するかはクラブに任せるべきであって、協会がとやかく言う必要は無いのです。 どうしてもナビスコ杯を「改革」したいのであれば、いっそのこと現状を追認して「非ベストメンバー規定」を作ってはどうでしょう?すなわち、ナビスコ杯の試合ではレギュラー選手の人数を制限するか、あるいは「レギュラーでない選手」の起用を義務づけるのです。どうせ代表選手はナビスコ杯には出場できないのです。このような規定を設けるならば、逆に代表選出による有利・不利を避けることもできると言うわけです。 日本サッカー協会は天皇杯にも「ベストメンバー規定」を設ける方針だとのことですが、下らないことはいい加減にして欲しい。サポーターが見たいのは疲れてへとへとになった選手たちの試合ではなく、やる気のある元気な選手による魅力的なサッカーなのですから。 



1ページ中1ページ目を表示中

タグ:

この記事にはまだコメントがありません