皆さま、こんにちは。
勢いで書き始めたマイコプラズマについてのシリーズが思った以上に長くなり、やっと一息ついて、他の話題を書けそうです。
今日は、オーソモレキュラー医療について、最近考えていることを書きたいと思います。
(長いです)
私のクリニックのHPやパンフレットをご覧いただくと、わかりにくい、とよく言われます。
まだ絶対的に情報量が少ないというのもありますが、「栄養療法だけ」とか「東洋医学専門」とか、一点集中しないでいろんなことをやっているためかとも思います。
一見まとまりがないように見えるかもしれませんが、すべてにおいて共通していることがあります。
それは「根本治療」ということです。
私は漢方をやっている父の影響もあり、「根本治療」にこだわりを持っています。
根本治療とは何か?ということを追及して、現代西洋医学から東洋医学、東洋医学から栄養療法(分子栄養学)、栄養療法から広がって機能性医療、そしてシータヒーリング、というところまできている訳です。
その中に、これまで長々と書いてきたマイコプラズマの治療も入っています。
もちろんこれらの治療法はすべて大切な治療法であり、優劣があるわけではありません。
ある人の病気をみて、何が本当の根本原因なのか?、そしてどの治療が一番治癒に近いのか?ということを、どんな形であれ追究し、そのために使えるものは何でも使う、というスタンスです。
そしてこれらの中でも、私が一番好きな考え方が、分子栄養学の語源となっている、「オーソモレキュラー(分子整合)」というものです。
Orthomolecular medicine オーソモレキュラー医学とは、ノーベル賞を2度受賞した、故ライナス・ポーリング博士が提唱した概念です。
orthoは「整合」または「矯正」、「molecule」は分子、medicineは「医学」という意味で、日本語では、分子整合栄養医学、分子栄養学、またはカタカナでオーソモレキュラー医学・医療などと呼ばれます。
オーソモレキュラー医療の基本概念は、細胞を構成している”分子”が異常を起こすことによって、病気が起こる。そしてその分子の異常を整合(矯正)することで病気を治療する、というものです。
この概念を説明するのによく使われるのが、ライナス・ポーリング研究所での白内障の研究です。
(この研究についてはライナス・ポーリング研究所にいたことがある方から直接聞きましたが、雑誌等には載っていないそうです。一時期ポーリング博士が医学界から爪はじきにされてしまったことと関係があるようです)
白内障は、目の水晶体(レンズ)が濁ってしまい、目が見えなくなる病気です。高齢者に多いので「老人性白内障」と言われることもあります。
でも年を取ったからと言って、全員が白内障になるわけではありません。
ではなぜ、白内障になる人とならない人がいるのか?
そこで、寿命の短いショウジョウバエを使って、白内障になった水晶体と、ならなかった水晶体の違いを調べました。
すると、ビタミンCの濃度に違いがありました。
そこでショウジョウバエを同じ条件で育て、「十分な」ビタミンCを与えたグループと与えない普通のグループにわけたところ、ビタミンCを与えたグループでは白内障にはならなかったのです。
つまり、白内障の原因のひとつは活性酸素による水晶体タンパク質の変性(サビ)であり、十分な量のビタミンCをとることで、活性酸素を抑え、分子の異常(タンパク質の変性)を予防することにより、白内障を防ぐことができたのです。
このショウジョウバエの白内障を防ぐ効果を発揮する量は、人間の体重に換算すると、1日当たりグラム単位の量になります。
このように、分子の異常を直すことのできる量、すなわち”分子整合”できうる量を「至適量」といいます。
よく栄養療法のことを「メガビタミン療法」「ビタミン大量療法」と言うことがありますが、それは厚労省が定める一日栄養所要量に比べると多い、ということからきています。
日本の厚労省によると、ビタミンCの成人の一日栄養所要量は100㎎とされています。
しかし我々治療目的で栄養素を利用しようという立場からすると、100㎎は壊血病(ビタミンCの欠乏症)にならない、というだけであり、分子整合して病気を予防または治癒させるという目的からすると、所要量ではその効果が得られないので、意味がない、ということになります。
今では抗酸化物質の効果は大勢の人が知ってますし、当たり前のことのように思いますが、ここをちゃんと理解している人は意外と少ないかもしれません。
もう一度オーソモレキュラー医療の概念をまとめると
・病気は細胞を構成している分子の異常により引き起こされる
↓
・その分子はそもそも栄養素で作られている
↓
・材料である栄養素を至適量用いることで、異常な分子を整合する
↓
・本来の機能が発揮され、病気の予防や治癒につながる
ということです。
これは素晴らしい概念ですし、とても腑に落ちました。
実際に栄養療法で、自分自身の体調もよくなり、そして現代医学的な治療では改善しなかった多くの症例が改善するのも見させていただきました。
しかし、臨床を重ねているうちに、栄養療法だけでも十分ではないことに気づきました。
そしてずっと疑問に思っていたことがありました。
そもそもなぜ、分子の異常が起こるのか?
ということです。
私が栄養療法を学んでいた時に教わったのは、単純に現代人には栄養素が不足しているから、という説明でした。
現代の食材自体の栄養価が落ちていること、また加工食品などからは栄養がそげ落されていて、栄養素が摂れているようで実は十分には摂れていない。
そしてその反面、ストレスや環境汚染物質などの影響により、栄養素の需要が増えている。
なので現代人は栄養不足なのだ、という説です。
これは確かにあると思います。
でも本当にそれだけなのでしょうか?
では、分子整合して健康を保ち続けるためには、延々と大量のサプリメントを飲み続けなければならないのでしょうか?
それは私の感覚では、おかしいと感じます。
(もちろんある程度は摂ったほうがよいと思いますが)
なぜ分子の異常が起こるのか? これは、
近年とても問題になっている、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)を含む、発達障害の増加。
なぜこれらの問題が増えているのか?
という疑問と、リンクするのです。
これらの原因はまだはっきり解明されてはいませんが、環境汚染との関連性が濃厚だと言われています。
何らかの遺伝子的な背景があるところに、環境汚染の負荷が加わり、脳の神経細胞に機能的または物理的な障害が起きているのです。
自閉症の治療で有名なアメリカのエイミー・ヤスコ博士は、自閉症の子どもたちを「炭鉱のカナリヤ」に例えています。
その昔、炭鉱で有毒ガスが出るとまず先にカナリヤが影響を受けておかしくなる。なのでカナリヤの様子をみて、おかしくなったら逃げる。と、カナリヤを危険を早期に察知するために使っていたそうです。
子どもも同じで、有毒物質に敏感です。なぜなら発育途上なのでタンパク質代謝が非常に活発だからです。
たとえば水銀は、タンパク質のSH基に結合しやすいことが知られています。
SH基は硫黄を含有するアミノ酸であるシステインが持つ分子構造の一部ですが、タンパク質の立体構造を形成するのに、SH基とSH基が結合してジスルフィド結合というものを作ります。
この結合により、酵素やレセプターなどの重要なタンパク質の構造がつくられ、維持されるのです。
タンパク質合成の途中段階で、水銀がSH基に結合したとしたら、ジスルフィド結合が起こらなくなります。つまり正常なタンパク質の立体構造が構成が阻害されてしまいます。
異常な形になったタンパク質は、もうその機能を果たすことができません。
成人に比べ、子どもが有害金属の害を受けやすいのはこのためです。
自閉症などの発達障害では神経症状が主症状としてとらえられますが、成人における慢性的な水銀中毒ではもっと広い範囲の症状が起こります。
SH基はほとんどの体内のタンパク質に存在するからです。
慢性水銀中毒がこれと言った特定な症状を示さず、非定型的なのはそのためと考えられます。(だから見過ごされます)
おそらく現代人が持つ症状のかなりの部分にも、これらの環境汚染物質が関係していると考えられます。
このようなことを考えると、水銀をはじめとする重金属が、分子の異常を起こす要因の一つである、というのは明らかです。
そして現代においては、とても大きな要因の一つだと考えられるのです。
人体にそのような影響を及ぼす物質は、いまや重金属だけでなく、何万という化学物質が地球上に生み出され、数えきれないほどです。
このような時代は、当たり前ですが、人類史上初めてです。壮大な人体実験が行われている、といっても過言ではないでしょう。
これは人類の進歩(?)の裏の面のようなものと考えられますが、そこにフォーカスすると暗澹たる気持ちになってしまいます。
でも、これからの時代、残念ながら、その問題を避けては通れないのです。
栄養が不足していておきる問題は、もちろん栄養素の補給で改善するでしょう。
環境汚染物質による症状も、ある程度は栄養素の至適量の補給でカバーができるでしょう。
しかし、そのような汚染物質にさらされている状態を改善せずに、栄養素をとるということだけをしていったとしても、根本的な解決にはなりません。
体内の汚染物質を排除せずに栄養療法だけを行うことは、いい例えではないかもしれませんが、ゴミためを塗り固めて、その上にいい材料を使って家を作ろう、としているようなものです。
そのゴミをいかんともし難いのであれば、それが最良の策なのかもしれませんが、そうではないのです。
まずそのゴミを何とかしなければいけないのです。
たとえば重金属を排泄するには、キレーション療法をはじめ、いろいろな方法があります。
家庭でできることもたくさんあります。
これらの毒性物質を除去することで、異常な分子を本来の分子構造にもどすこと。それにより人体の持つ機能を最大限に発揮させること。
私は、これが真のオーソモレキュラー医療だとと思います。
つまり、
これからのオーソモレキュラー医療の主流は、デトックスである
というのが、私の結論です。
もちろん栄養療法は大切です。効率的にデトックスする際にもうまく栄養サプリメントを使っていく必要があります。
栄養素の働きは本当に素晴らしく、デトックスと栄養療法の両方を行うことで、最善の効果が期待できるでしょう。
また、汚染の程度に関係なく、遺伝子変異などで栄養素の必要量が多い場合は、至適量の栄養素の補給は必須でしょう。
何が最良かは、人それぞれ違うと思います。
しかし慢性病に栄養療法だけを行うのは(それでも十分素晴らしいことだとは思いますが)、おそらく片手落ちになるだろう、と思っています。
病気でなくても、将来の子どもたちのために、これから妊娠出産される若い女性の方ほどデトックスに取り組んでいただきたいです。
それについてはまた改めて書きたいと思います。
長々とお読みいただきありがとうございました。