肝臓の働きは多岐にわたっており、その働きは肝臓の数種類の細胞によってそれぞれ分担されています。そのためにまず肝臓がどのような細胞でできているかを復習しておきましょう。
類洞血流の組成は、門脈から送られてくる門脈血(静脈血)と動脈からの動脈血が約7:3の割合で混ざり合っています。門脈は腸から栄養に富む血液を運んでくるので、肝臓の栄養血管と呼ばれています。しかし門脈血はすでに腸で酸素をほとんど使い尽くしているので、酸素をあまり含んでいないのです。そのため門脈血だけでは、肝臓の旺盛な代謝を充分に果たすことはできません。そこで機能血管としての肝臓の動脈が、酸素に富む血液を運んできます。
門脈血は栄養物以外にも腸内細菌が合成した毒素や細菌、ウイルス、ときにはがん細胞などの有害物質も運んできます。肝臓はこれらの有害物質を選別除去し、きれいな材料だけを取り込んで製品を製造したり、肝臓外へ発送したり、一時的に貯蔵したりしています。そのため肝臓は一大化学工場に例えられます。各製造工程は製品毎に分けられており、各部門がそれぞれ別種類の細胞になります。
糖・タンパク質・脂質(三大栄養素)の代謝
三大栄養素はすべて肝細胞で代謝されます。門脈を通って肝臓へ運ばれてきたグルコースは、肝細胞の細胞質中でグリコーゲンとして貯蔵されます。フルクトースやガラクトースの単糖類は、グルコースに変換した後グリコーゲンにします。血液中のグルコースが少なくなるとグリコーゲンをグルコースに分解して類洞中へ放出します。
タンパク質は腸管内でアミノ酸に分解され、腸管上皮細胞を経て肝細胞に吸収されます。肝細胞は吸収された必須アミノ酸から非必須アミノ酸を合成します。これらのアミノ酸は再び類洞血へ放出され、全身へ送られます。各組織の細胞はそれらのアミノ酸を材料にしてその組織固有のタンパク質を合成します。また取り込んだアミノ酸から肝細胞自身も血漿タンパク質を合成し、類洞血流へ放出します。また肝細胞は使用済みのタンパク質をアミノ酸に分解し再利用したり、生じたアンモニアを尿素にして腎臓から排泄したりします。
腸で吸収された中性脂質やコレステロール、リン脂質等の脂質は、リンパ管を経由して血中へ入り肝臓へ運ばれます。そして肝細胞内でリポタンパク質に加工して類洞へ放出し、全身の脂肪細胞へ送られ中性脂肪として貯蔵されます。また脂肪は糖やタンパク質からも合成されます。さらに肝細胞は、コレステロールを合成し、その大部分から胆汁の主成分である胆汁酸を合成します。胆汁は胆嚢(たんのう)で一時貯められ、食べ物が胃の中へ運ばれて来ると反射的に収縮して胆汁が十二指腸へ放出されますが、そのほとんどは排泄されることなく、腸管から吸収されて肝臓で再利用されます(腸肝循環)。
ビタミンAの代謝
体内のビタミンAの約80%は肝臓に貯蔵されています。です。肝星細胞は類洞と肝細胞の隙間(ディッセ腔)にあって、長い突起で類洞を取り巻いています。その細胞質には通常脂質滴が見られ、その脂質滴にエステル型のビタミンA (レチニール・エステル)が貯蔵されています。腸で吸収されたビタミンAは直接肝星細胞に貯蔵されるのではなく、他の脂質と同じルートを経て、一度肝臓の肝細胞に取り込まれ、肝細胞で合成される血漿タンパク質の一つであるビタミンA結合タンパク質(RBP)と結合した後、ディッセ腔へ放出され、そこで待ち受けている肝星細胞へ取り込まれ、脂質滴として貯蔵されます。このように
ビタミンAが欠乏すると、夜盲症、皮膚の異常などを引き起こします。そのような状態の時、ビタミンAは肝星細胞に貯蔵されず、肝細胞から直接標的細胞(網膜視細胞など)に運ばれます。
次回へつづく