肺がんの治療―4.抗がん剤

  • 小細胞肺がんは、抗がん剤が比較的効きやすい
  • 非小細胞肺がんは、分子標的薬が第一選択になる場合もある

1.小細胞肺がん

小細胞肺がんは進行が速く、発見時には進行しているケースが多いのですが、抗がん剤が比較的効きやすいとされています。その小細胞肺がんの化学療法で、よく行われる多剤併用療法は次のとおりです。

シスプラチン+エトポジトの「PE療法」。シスプラチン+イリノテカンの「PI療法」。シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチンの「CAV療法」。カルボプラチン+エトポシドの「CE療法」。「PE療法」と「CAV療法」の交代療法。それらの副作用については次のものがあります。

表1:代表的な多剤併用療法の副作用

療法名使用抗がん剤名主な副作用
PE療法シスプラチン+エトポシド悪心、嘔吐、食欲不振、血小板減少
PI療法シスプラチン+イリノテカン悪心、嘔吐、食欲不振、下痢
CAV療法シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン悪心、嘔吐、食欲不振、脱毛
CE療法カルボプラチン+エトポシド悪心、嘔吐、食欲不振、血小板減少
VP療法ビノレルビン+シスプラチン悪心、嘔吐、食欲不振
GP療法ゲムシタビン+シスプラチン血小板減少、悪心、嘔吐、食欲不振
DP療法ドセタキセル+シスプラチン悪心、嘔吐、食欲不振、脱毛、色素沈着、アレルギー反応
TP療法パクリタキセル+シスプラチン悪心、嘔吐、食欲不振、脱毛
TC療法パクリタキセル+カルボプラチン悪心、嘔吐、食欲不振、しびれ、関節痛、
筋肉痛、アレルギー反応、脱毛
SP療法ティーエスワン+シスプラチン悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、色素沈着

表2:吐きけを起こしやすい抗がん剤と主な制吐剤

吐きけの強さ抗がん剤名対処に使う主な制吐剤名
最強
(発現率90%超)
シスプラチン
シクロホスファミド(1500/㎥以上)
アブレビタント(イメンド)
5-HT3受容体拮抗薬
 グラニセトロン(カイトリル)
 オンダンセトロン(ゾフラン)
 トロピセトロン(ナボバン)
 パロノセトロン(アロキシ)
副腎皮質ステロイド薬
主にデキサメタゾン(デカドロン)
中程度
(発現率30~90%)
カルボプラチン
シクロホスファミド(1500/㎥未満)
ドキソルビシン
イリノテカン
5-HT3受容体拮抗薬
副腎皮質ステロイド薬

2.非小細胞肺がん

非小細胞肺がんは、特定の遺伝子異常のある人を除いて、一般に抗がん剤がよく効くがんというわけではありません。それでも、Ⅲ期以降の進行した病期では、手術だけで根治することはまずないとされており、病期に応じて化学療法を行ったり、放射線療法を併用したりします。

昨今では、先述した特定の遺伝子異常を検出できる検査が行われています。それらの異常が認められた場合には、1次治療でこの遺伝子異常に特異的に効果を発揮する分子標的治療薬を使うことが主流になっています。この遺伝子とは、がん細胞の細胞膜にあるEGFR(上皮成長因子受容体)とALK(未分化リンパ腫キナーゼ)です。EGFRの遺伝子変異が陽性の場合はEGFR阻害剤のゲフィチニブかエルロチニブ、アファチニブを、ALK融合遺伝子転座が陽性の場合はALK阻害剤のクリゾチニブかアレクチニブを使います。

また、EGFRやALK遺伝子異常が陰性あるいは不明の場合や、これらの阻害剤が効かなくなったときには、肺がん細胞の形(組織型)や全身状態、年齢などを考慮して抗がん剤を選びます。よく用いられるのは、プラチナ製剤のシスプラチンとカルボプラチンを中心にしたプラチナ併用療法です。それに組み合わせる抗がん剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカン、ペメトレキセド、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合、ナブパクリタキセルなどです。

手術で取り切れてⅠB期からⅢA期までと診断された患者さんには、術後の再発予防を目的とした補助療法として、抗がん剤を投与することが推奨されています。Ⅱ期・ⅢA期の患者さんにはプラチナ製剤併用の抗がん剤が、ⅠB期の患者さんにはテガフールウラシル配合剤(UFT)が用いられます。とりわけ、ⅠB期の腺がんでのUFTの服用は、手術だけに比べて5年生存率が11・4%高くなると報告されています。

3.その他

新しい抗がん剤や分子標的薬など高額な治療費を要する場合、治療を受けるか否かを悩まれるケースが少なくありません。そんなときは、社会的なサポートシステムを使ったり、あるいはそのようなサポートシステムを周囲の人に見つけてもったりすることが大事です。また、医療者・医療関係者に、自分が困っていることを伝えるなど、コミュニケーションを図ることが大事です。

また、肺の手術を受けた後は、どれだけリハビリを頑張るかによって、手術後の回復具合が異なってきます。たとえば、手術時間が3時間でも、その後のリハビリ(ウォーキング・ラジオ体操などの軽い運動)を真面目に3~4カ月行わないと術前の生活の状態に戻れません。私たちは、がんを残さないように安全に手術を行いますが、その後のリハビリを頑張るのは患者さん自身なのです。

(監修:国立がん研究センター東病院 呼吸器外科科長 坪井正博先生)