2015.11.18 更新
~4つの“許されない”ラブストーリー~ 「ヒロイン透明肌」で執事との“許されない”内緒の恋
Category:エンタメ
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STORY 2
「ヒロイン透明肌」で執事との“許されない”内緒の恋
私は緊張から青白くなった自分の肌にファンデーションを塗った。
すると、透明感のある艶やかな肌色に戻り、少しだけ元気になれた。
私はトイレから出ると、誰にも気づかれないようにそっと会場を出ようとしたその時……、
「あの、少しだけ宜しいでしょうか?」
振り向くと、そこには品のあるシックなベストにブラックのクロスタイ、そして白い手袋を纏った、長身の男性が立っていた。
「あ、はい……」
「お帰りですか?」
「そ、そうですけど……何か?」
男が言うには、参加者に配布する手土産が部屋に置いてあるとかで、取りに来てほしいとのことだった。いらないと言ったのだが、受け取ってもらわないと困ると言われ、受け取り後、すぐに解放してくれることを条件に、男について行った。
長い廊下をしばらく歩くと、部屋に案内される。
部屋の中は煌びやかな装飾以外、閑散としていて、お土産らしきものは見当たらない。
「あの、お土産はどこに……」
ガチャ
「えっ???」
ドアの鍵をかける音がした。
「え? どういうことっ(……んぐっ)」
私が言い終わらないうちに、男が私の口をふさぎ、耳元で囁いた。
((ごめんね、手荒なことをするつもりはないんだ。少しだけおとなしくしててくれればすぐ終わるから))
男はそう言うとそっと私から離れる。
私は抵抗しても無駄だと直感し、その場でおとなしくしていた。
すると男は私の足の先から頭までジーッと見ると、
「うん、やっぱりちょうどいいな。こちらのお召し物へお着替えください」
男は、今着ている私のドレスより数倍、……いえ、数百倍も煌びやかなドレスを差し出してきた。
「えっ、どういうことですか?」
「申し遅れました、私は……」
どうやら男は、この度婚約されたレイカお嬢様の執事とのこと。
そして差し出されたこのドレスは、この後のステージでお嬢様が着られる衣装らしいのだが、お嬢様に急きょ会食が入ったとかで、最終フィッティングが出来なくなってしまったというのだ。そこで、お嬢様と背格好が近い女性を探していたところ私を見つけたらしい。
私は断ろうと思ったのだが、執事の直視できないほどの切ない表情に、このまま帰るのも憚られ、仕方なく引き受けた。
「でも終わったらすぐ帰りますから」
「ありがとう」
執事は嬉しそうに笑みを浮かべると、私をそっと抱き寄せる。執事のサラサラした黄金色の髪が私の頬に触れ、私の心を再び乱していった。
「じゃ、脱ごうか」
え? えーーーーーーーーー!!!
執事はサラッと言うと、ごく当たり前のように私の背中に手をかけて、チャックを下ろそうとした。
「ちょっ、ちょっと待ってください。自分で着替えますから」
私は必死に抵抗して、執事が持っていたドレスを奪うようにして、部屋の端にあったフィッティングルームに駆け込んだ。もちろん中からしっかり鍵をかけて。
慣れないドレスの着替え。
しかもお嬢様の大事なドレス。
私は恐る恐る着替えると、フィッティングルームを出た。
執事はおとなしく待っていたようだ。
「ど、どうでしょうか?」
執事は私に近づくと、白い手袋を外し、ドレスの着崩れを丁寧に直していく。
手のぬくもりが着衣しているドレスを伝い、私の肌にも伝わってくる。
私は胸の高鳴りをごまかすのに必死だった。
「でも、こういうのってどっちかっていうと家政婦さんとか女の人が付き添うんじゃないんですか? なんで執事のあなたが?」
男はクスッと笑うと、
「そうだよね。でもレイカは、いや、レイカ様は人をあまり信じないタイプで、幼馴染の僕しか触らせないんだ」
「そ、そうなんですね」
「そう、だからレイカ様にはいつだって僕が必要なんだ……」
その瞬間、すべて分かった――。
執事の切ない表情は、お嬢様のレイカ様が急きょフィッティングを出来なくて困っているのではなく、レイカ様の婚約が悲しいんだ……と。
そして、この執事はレイカ様を本当に愛しているんだということも。
執事が私の身体を愛おしそうに見つめる。
でもそれは決して私を見ているのではなく、私という被写体を通してレイカ様を思い浮かべているのだ。
「よし、大丈夫そうだね!」
執事はそう言うと、再び、手袋を身につけ、私の頬に手を当てた。
「ありがとう」
私は思わず、
「していいですよ」
「えっ?」
「だから……、あなたの好きな人だと思ってしていいですよ」
執事の頬を撫でる手にギュッと力が入る。そしてサラサラとした髪が再び私の顔に近づいてきて、私の心を震わせる。
「……しないよ」
「えっ?」
「君はかわいい。その透き通るようなきれいな肌は、僕ですら夢中になりそうだ」
「そ、そんなこと……」
「……でもあの人じゃないから」
そう言うと、ドアの方に向かい鍵を開けた。
「僕は出ていくからここで着替えるといいよ。終わったら、出口にプレゼントを置いておくからせめてものお礼に持って帰って。じゃあね」
パタン――。ドアがゆっくり閉まる。
部屋のいたるところに彼のぬくもりが残っていた。