ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 痩せたい人と太りたい人2017年4月9日 20:16痩せたいヒラと太りたいキヨのお話。よかったらコメントくださるとうれしいです。※御本人様とは関係ありませんので、ご理解よろしくお願い致します。「キヨって、大食いだよね。」ヒラがそう口を開いたのは、珍しくふたりだけでご飯を食べている最中だった。頬いっぱいにモノを含んでいたキヨは、急いでそれを呑み込んで「まあな。」と端的に言葉を返した。「ていうか、お前そんだけで足りんのかよ」「ん?いや、そりゃあ足りないんだけどさ、まあ、ダイエット中だからね。」ヒラが前からダイエットに励んでいたことはキヨも知っていたので、その返答は当たり前のことなのだが、何故だかキヨは納得出来ずにいた。「なんでダイエットなんかしてんの?」「なんでって、痩せたいからに決まってるでしょ。キヨみたいに痩せ型じゃないからね」「それってさ、我慢してまでしたいもんなの」キヨの問いかけに、ハハハと笑うヒラ。「我慢しなきゃダイエットになんないでしょ」「いやわかってるけど…」やはり腑に落ちないキヨは、口をもごもごさせる。「そういやキヨってさ、昔からそんな大食いだっけ?」そんなキヨを見かねて、話の基点を変えてヒラが問いかける。「え?…あー、そういえば、昔はそんな食べなかったなあ…」「だよね。キヨが大食いのイメージあんま無かったからさあ」「そういうラーヒーは昔はよく食べてたよね」「だから太っちゃうんだよ」そう言ってヒラはへらへらと笑った。「いつからだっけ、キヨがいっぱい食べるようになったの」そんなこと聞かれると思ってなかったキヨは驚いた顔をしてみせた。それから、うーんと唸りながら考えるが、そんないつからだなんて明確な答えは出てはこなかった。「んなもんいちいち覚えてるわけねぇだろ」「だよね」質問した当本人であるヒラも、最初から明確な答えが出るとは思ってなかったようで、キヨの言葉に同意してまたへらへらと笑う。「おれね、もちろん外見的にも痩せたいんだけどさ、内面的にも痩せたいんだよね」「は?どういうこと?」意味がわからないといった様子のキヨに、ヒラはにこりと微笑む。「心も痩せたいんだよ。」「こころォ?」「…おれは、まあ、なんていうかさ、ほら根暗みたいなとこあるじゃん、考え方とかさ。小心者だし、いちいち色々考えちゃうわけよ、しょうもないことでもさ。」「うん、まあ、そういうとこ、あるよね、ラーヒーは昔からさ」「そう。だからさ、そういうのがいっぱい…いっぱい、積み重なってって、おれのなかに脂肪となってくっついてんのさ。そういうのも一緒に、痩せないかなあ〜って」そう言ってヒラはまたへらへらと笑う。その笑みがなんだか切ないように感じて、自分でもよく分からずにキヨは泣きそうになった。「…でも、痩せてきてるよ。頑張ってるもんね、ヒラ。」「うん。…あと、もうちょっと、もうちょっとだけ痩せたら何かが変わったりすんのかなあ」「どうだろ」「心が軽くなったら、キヨとかみたいにさ、明るくなれんのかなあ?」ますますなんだか泣きそうになって、キヨは掠れた声で「違う」と呟く。「え?」「俺はお前が思ってるよりも明るい奴なんかじゃないよ。」「え〜?」「ラーヒーは痩せたいって言ったじゃん?」「うん、言ったね」「俺は太りたいんだよな。」ヒラは頭にはてなを浮かべる。“太りたい”痩せたいと思うヒラにはその言葉の意味が全く理解出来なかった。「なんかさあ、空っぽなんだよね、俺。ラーヒーの心がいっぱいなようにさ、すっからかんなんだよなあ。」「だから、太りたいの?」「うん。食べてたらさ、なんか、満たされるかなあって。そう思ってすっげえいっぱい食べるんだけど全然満たされなくてさあ」「わかる、順調に痩せてってるはずなのに心は全然痩せてくんないの」「そうそう、食ってんのにぜんっぜん意味ねぇんだわ」意気投合して盛り上がるふたり。はたから見れば、こんな話の内容で盛り上がっているふたりは変なのだが、キヨとヒラの間ではそれがなんだかすごく可笑しくて仕方なかった。「…キヨがそんなこと考えてたなんて思ってもみなかったな。」「それはこっちの台詞だわ」「…キヨー、」「んー?」「太れるといいね。」「おう、」そう言ってふっと微笑んだ。キヨはヒラのそのひとことで、少しだけ太れたような気になった。「…あ、すみませーん」ヒラはたまたまそこに通りかかったウエイトレスを呼び止める。「これと、あとこれ追加で。」「かしこまりました。」ぺこりとお辞儀をして、ウエイトレスは去っていった。「おい、いいのかよ。ダイエットしてたんじゃねぇの?」「うん?いいのいいの。ちょっとさ、痩せたから」けらけらと笑うヒラを見て、ダイエット成功の道はまだ遠いな、なんて思うキヨ。「それにさ、」「うん?」「なんかおれも満たされたくなっちゃった。」「そうかよ」と素っ気なく返事をする。キヨはなんだかまた泣きそうになって、それごと呑み込むように口いっぱいに飯を含んだ。