異性化糖
異性化糖製品は日本農林規格 (JAS) で以下のように制定されている。
- ブドウ糖果糖液糖
- 果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が 50 % 未満のもの。
- 果糖ブドウ糖液糖
- 果糖含有率が 50 % 以上 90 % 未満のもの。
- 高果糖液糖
- 果糖含有率が 90 % 以上のもの。
- 砂糖混合異性化液糖
- 上記の液糖に 10 % 以上の砂糖を加えたもの(その液糖がブドウ糖果糖液糖であれば、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖)。
- 糖化 — 液化終了後に 55 ℃ 程度まで冷却し、グルコアミラーゼを加える。この反応で、糖はさらに細かく分解され、ブドウ糖になる。
- 異性化 — 60 ℃ で異性化酵素のグルコースイソメラーゼを加え、約半分のブドウ糖を果糖に変化させる。異性化糖の名称はこの反応(ブドウ糖が果糖に異性化する反応)に由来している。
- 精製・濃縮 — 異性化後、液糖をろ過機やイオン交換装置で精製し、水分を蒸発させて濃縮することにより、果糖分 42 % のブドウ糖果糖液糖が得られる。さらに、クロマトグラフィーによって果糖純度を高めることができ、果糖分 90 - 95 % の高果糖液糖を作ることができる。これを果糖分42 %のブドウ糖果糖液糖とブレンドすることで果糖分55 %の果糖ブドウ糖液などが作られる。
砂糖の甘味度(甘みの強さ)を 100 とすると、ブドウ糖の甘味度は 65 – 80、果糖は 120 – 170 で、甘味度の強さは 果糖 > 砂糖 > ブドウ糖 の順である。そのため、果糖分 42 % のブドウ糖果糖液糖の甘味度は 70 – 90、果糖分 55 % の果糖ブドウ糖液糖は 100 – 120 である。ただし、果糖は高温では砂糖の 60 % の甘味度しかなく、40 ℃ 以下でないと砂糖よりも甘くならないので、異性化糖の甘さは温度によって大きく左右される。
- 砂糖より甘みが口中に残りにくく、低温下で甘味度を増すので、清涼飲料や冷菓などに多く使われている。また、異性化糖は価格も安い(果糖分 55 % の果糖ブドウ糖液糖は砂糖の7割程度)ので、他に缶詰、パン、みりん風調味料などにも使われている。
- 低温での利用に向いている半面で、熱に弱く、加熱すると着色してしまう(このときメイラード反応が起きる)。
- 粘性が少ないため、取り扱いやすく、タンクローリー等により大量に運送したり、タンクに保存・貯蔵したりすることが容易である。
- 液状のため、固形化や粉末化するのが難しく、一般消費者向けにはほとんど販売されていない(果糖ブドウ糖液糖はガムシロップとして市販されている)。
異性化糖は主に工業国において生産される。普及の割合には、各国の農業政策と密接な関係がある。なお、補助金制度等は現在の農業自由化の流れの中で変化しつつある。
- 日本においては、国内で余剰気味のサツマイモ等などを原料とした糖類を作る技術が求められ、農林水産省および通商産業省(通産省)管轄下の研究所で競って研究が進められた結果、1960年代後半から1970年代にかけて技術が確立された。現在の製法は通産省工業技術院(現産業技術総合研究所)の高崎義幸博士らのグループにおいて開発されたものである(特公昭41-7431)。日本においては普及は急速ではなかったものの、清涼飲料水において普及が進み、今では砂糖類の需要の4分の1程度となっている[1]。また、日本においてもデンプン源として主に使われるのは今はトウモロコシであるが、農業振興のため、一定量の国内産デンプンの引き取り義務がある。
- アメリカ合衆国ではコーンスターチ(トウモロコシから作られたデンプン、現在では原料には低コスト生産のため病害虫耐性を高めた遺伝子組み換えトウモロコシが主に使用される)を原料に使っているため HFCS (high-fructose corn syrup) と呼ばれている。通商産業省工業技術院(現産業技術総合研究所)は、1966年に再実施権付きの独占実施契約を、コーンスターチの5大メーカーの一であったStandard Brands Inc.(現ナビスコ)と締結している。この契約は国有特許の輸出第一号になったものである。FDAの審査を経た後、開発された直後の1970年代に急速に受け入れられ、今では糖類の需要の半分近くを占め、世界の生産量、消費量の7割を占めており、直接ないし清涼飲料水の形で周辺国へ輸出もしている。これにはキューバ革命によってキューバからの砂糖の輸入が途絶え価格が高騰したこと、液糖を使う素地が元々あったことが考えられる。普及に伴い、肥満の原因としてやり玉に挙げられることが多くなり、大きな論争の種となっている。