【踊りと歌の関係】
T:ヘレスはカンテ・フラメンコのふるさとということで誰も異論はないと思うのですが、踊りの位置付けはどうだったのでしょうか?ソレアやアレグリアスなどいわゆる踊ることのできる曲種も常々歌われたと思うのですが。
G:セビージャは素晴らしい踊り手を多く輩出した地ですが、一方ヘレスはブレリアを除いてあまり踊りは存在しませんでした。
T:セビージャなど他の地から来た踊り手がヘレスの歌い手に合わせて踊り出すといったようなシーンを見たことはありますか?
G:唯一思い浮かぶのはマヌエラ・カラスコです。ヘレスの人に愛された存在でした。でも踊るときはやはりボケロンなど自分のクアドロを引き連れて踊っていたのみだったように思います。

【全部いいのはフラメンコじゃない】
T:時は変わり、今ではヘレスにもアカデミア出身の踊り手が増えましたね。
G:それに伴い当然歌い手の仕事も踊り伴奏に変わってきました。まず仕事として歌いたければ伴奏を勉強しないと。息子もそうですが(パコ・エル・ガソリナ・イホのこと)練習を重ねて舞台に上がるようになり、無難なそつのない安心感と引き換えに野性味はなくなりました。でも、本来は1+1が2じゃないのがフラメンコなんです。
T:どういうことですか?
G:例えば、私はマヌエル・アグヘータの大ファンですが、彼とて6つくらい歌ってようやくそのうち1ヶ所くらい心に突き刺さる瞬間がある。でもそのすごさたるや一生忘れないくらいなんです。逆に全部いいのはフラメンコじゃない。
T:なるほど。
G:テレモトだっていつもいい歌を歌っていたわけではなく、時にはレンガで口を押さえつけてやりたくなるくらいひどいときもありました(笑)。ある時レブリーハのカラコラでの舞台がまさにそうでした。仕事で不完全燃焼だったテレモトですが、その後皆でその日ちょうど誕生日だったペラータの家に誘われて行き、彼女に入れてもらったおいしいコーヒーを飲み、テラスで朝日を浴びながら思いがけない瞬間に素晴らしいシギリージャを歌いました。あまりの熱唱に同席したアントニオ・マイレーナが感動し、手にしたウイスキーの入ったグラスを床に投げつけ「オレエエーーー!」と叫んだこと、今でも忘れられません。
T:凄いですね。

【思い出に残るアーティストとの出会い】
T:マヌエル・アグヘータのファンということなんですが、彼にまつわる思いではありますか?
G:彼は舞台で歌うようになったのはだいぶ年を重ねてからです。初めて会ったのはアスンシオン地区の市場併設のバルで、急に素晴らしい歌声が聞こえてきたので驚いて見てみたら、そこに若い黒ずんだ裸足のヒターノがいました。それがマヌエルでした。その足でボラピエに飛んでいき、「今若いのですごい歌を歌うやつがいた!マイレーナよりすごいぞ!」と息巻いたんですがマイレーナ命のルイ・パコーテをはじめ皆に信じてもらえず笑われたものでした。でも時の流れとともに次第に彼の存在は衆知のものとなり、誰もが認める一流のカンタオールとしての座を揺るぎないものにしました。ただ、ボデガのセニョリートにゴマをするようなことができない野生児だったので、仕事として成功することはなかったようですね。
T:他にはどんな出会いが印象に残っていますか?
G:徴兵の時にセウタ出身の怖い軍曹がいて、ある日夜中に呼び出されました。車で連れ出され、「何だろう」と思いきや、着いたところはサン・フェルナンドのベンタ・デ・バルガス。何かのきっかけで自分がフラメンコの歌い手であることを知って、仲間内のフィエスタに連れてきてくれたのでした。そこには若かりし日のカマロンがいて、そのすばらしさは当時から光っていましたっけ。
T:カマロンはよくヘレスにも遊びに来たそうですね。
G:大体ルイ・デ・ラ・ピカやトルタと一緒でした。ある時トルタが彼にこう言ったそうです。「おいカマロン、俺はソレアを歌わせたらお前の40倍くらい巧いぞ」。そしたらカマロンはおとなしい人だったんですがなんて返したと思います?
T:さあ?
G:「そうだろうね。それでも・・・・俺はカマロンだよ」(笑)。
T:本当にアルテ溢れる時代でしたね(笑)。今日は貴重なお話をありがとうございました。

(この後チョサのブレリアを一曲歌っていただき、閉会となりました。)

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