長津田皮膚科に関する情報を発信していきます。

休診日や診療時間の変更、季節ごとのスキンケア、院内設備の紹介などを行っていきます。
スキンケア 第8回 保湿剤の選び方 ~乾燥肌とアトピー性皮膚炎~
乾燥肌とアトピー性皮膚炎ではどのように保湿剤を選択するのでしょう?

【乾燥肌】
 通常の乾燥肌の場合、理論上は前述の①保湿剤と②閉塞剤を主体とする外用剤をぞれぞれ使うのが望ましいです。
 例えば、①ヘパリン類似物質(例:ヒルドイドクリーム)や尿素(例:ケラチナミンコーワクリーム)と②ワセリン(またはプロペト)の二種類を同時に使うと高い効果が期待できます。しかし、複数の外用剤を使うのは煩わしく、また、外用剤の種類が多くなればなるほど、予期せぬ皮膚トラブルが生じやすくなります。このため、どちらか一方のみを使うことが多いです。
 なお、ヘパリン類似物質は出血傾向がある患者さんには使用できません。また、尿素製剤は塗る部位によっては刺激感が生じることがあります。ワセリンは安価、刺激感が少ない、多くの皮膚病に用いることができるなどの長所があります。しかし、皮脂が多い皮膚ではニキビの原因になりやすく、また高齢者の足底に大量に塗ると転倒の原因になりやすい、閉塞感や熱感などの不快感が生じやすいです。
 これら特徴を踏まえ、選択することになります。ちなみに、2000年の研究ではヘパリン類似物質と尿素、ワセリンを用いて保湿力にどれだけ差があるか、が調べられました。1週間調べた結果、尿素とヘパリン類似物質が保湿力が高く、それに比べるとワセリンは劣っておりました。(尿素とヘパリン類似物質のどちらが保湿力が強いかは、それ以外の文献を考慮しますと判断に迷います。)

【アトピー性皮膚炎】
 アトピー性皮膚炎患者の皮膚はセラミドや天然保湿因子の低下による保湿力の低下とバリア機能の低下が目立ちます。単に保湿力を注目するだけでは皮膚症状の改善には至りません。このため、単なる乾燥肌とは異なり、バリア機能の改善効果を持つ保湿剤を使用することがアトピー性皮膚炎治療の重要なポイントです。しかし、困ったことに「バリア機能を回復させる」と強く言える外用剤は極めて少なく、選択肢が少ないのが現実です。
 バリア機能を高めることが知られているものとして、ヘパリン類似物質や合成セラミドが有名ですが、尿素もバリア機能改善効果があることが示されています(2012年)。この中で、ヘパリン類似物質(ここではヒルドイドクリーム)と合成セラミドの2種について効果の違いを比較・研究されてました(2006年)。結果、合成セラミド含有クリームがヘパリン類似物質に比べて高いバリア機能改善効果を示しました。
 ただ、合成セラミドは保湿力に富み、高いバリア機能回復効果があるものの、残念なことに保険適応となる医薬品ではありません。合成セラミド含有の外用薬に関しては薬局や化粧品店で含有の製剤を探す必要があり、しかも高価であることが多いです。当クリニックで診察の際にお尋ね頂けましたら、含まれている製品をご案内致します。これらの理由から、保険適応の範囲内ではヒルドイドクリーム、ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドローションなどのヘパリン類似物質含有の製剤を処方することが多いです。

 さて、アトピー性皮膚炎に対する研究が進み、次のようなことが分かりました。
 まず、アトピー性皮膚炎の症状が治まった患者さんにステロイド外用剤の使用量を減らす代わりにヘパリン類似物質を外用したところ、皮膚炎の再発を減らせることがわかりました(2007年)。このため、皮膚炎が安定した患者さんには積極的にヘパリン類似物質を外用して頂くことで、使用するステロイド外用剤を減らすようになりました。
 また、生後1カ月から保湿剤を全身に外用する研究では、早期に保湿剤を使用することでアトピー性皮膚炎の重症化を抑制することが分かりました(2013年)。この研究で用いられた外用剤はDARDIAという保湿剤で保険適応は無く、処方はできません。しかし、この研究成果はアトピー性皮膚炎の発症メカニズムの一つ「経皮感作」という概念と合致し、アトピー性皮膚炎の治療では保湿剤を早期に使うことで皮膚バリア機能回復を重視すべきとの方向性を導きました。
 さらに、最近、乳幼児の食物アレルギーも「経皮感作」により生じる可能性が指摘されています(2008年)。すなわち、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の皮膚バリア機能障害と関連していると考えられております。食物アレルギーを改善するために保湿剤を中心としたスキンケアを行うことで、皮膚バリア機能障害を改善し、新たな経皮感作を起こさせないことがとても重要だとわかりました。
 参考:食物アレルギー、経皮感作、経口免疫寛容
 
 …皮膚の治療において、保湿剤は「おまけ」の処方薬では無く、積極的に処方すべき外用剤であることを知って頂けましたら幸いです。

次回予告:いつぬる?どうぬる?保湿剤を解説致します。長くなりそうでしたら、内容を分けるかもしれません。 
コメント
コメントする