慢性蕁麻疹には、一般的な治療法では治りにくい人がいる

 慢性蕁麻疹の場合、種類を変え、多少時間がかかっても、完全に蕁麻疹を抑えられる内服薬を見つけられた患者さんはまだいいのです。いろいろな薬を試してみたものの、蕁麻疹を抑えきれず、どの薬もあまり効かないという方が時々います。

 こうしたどの薬もあまり効かないタイプの患者さんには、興味深い共通点があります。それは、最終的に蕁麻疹を抑える薬に出会えた患者さんたちの平熱が36℃台だったのに対し、どの薬もあまり効かない患者さんたちの平熱が、たいてい35℃台だということ。

 また、薬が効いて蕁麻疹を抑えることができた場合でも、徐々に薬を減らし、最終的に薬を中止しても蕁麻疹が再発しない状態にすることが目標なのに、薬を減らそうとすると蕁麻疹が出てしまい、減薬できない、もしくは中止できない患者さんもいます。こうした皆さんにも共通点があるんです。それが、「お腹の谷折り線」。線の長い方、短い方、もしくは線とならず、シワシワと折曲っている方などさまざまですが、いずれにしても「お腹を潰して座っている」ことが分かります(連載第3回参照)。

身体の熱は何が作っている?

 ところで、身体の熱(体温)を作っているのは何だと思いますか? 温かい食べ物・飲み物を摂取してすぐに体温が上がったという経験はたいていの人があるでしょう。また、温かいお風呂に入るのも、身体の外からの熱で、体温を上げてくれますよね。

 では、外側からの要因ではなく、内側から身体を温めるものは何かというと、熱を最も作り出すのは、筋肉です。寒いときに身体を動かすと温まるように、筋肉は、いわば身体の“熱産生工場”なのですね。

 男性に冷え症が少ないと言われるのは、男性は一般的に女性よりも筋肉量が多いからだと思われます。

 平熱が低いということは、身体の熱量が足りないということ。そうなると、身体を冷やさないようにと、服装や食事など、外からの要因にばかり気を配りがち。でも本来は、内側から身体を温める筋肉に、気を配る必要があるのです。

 つまり「筋肉量を増やし、筋肉を動かすこと」が大切。

 運動して筋肉を動かせば熱が発生しますし、熱量を増やすためには筋肉量を増やす必要もあります。最近では、菜食主義でタンパク質不足の方もいらっしゃるようですが、体温を保つためにも、ある程度の筋肉を作るためのタンパク質は必要ですのでご注意を。

体温が低い状態が身体に良くない理由

 ところで、「体温が低いと身体に悪い」というのが定説ですが、その理由は何でしょうか? 例えば「体温が低くなると免疫力が下がる」とか「体温が下がると基礎代謝が下がる」などと聞いたことがある方も多いでしょう。

 では体温の低さと血流にはどんな関係があると思いますか?

 地球上の物質は、すべて、固体・液体・気体という「物質の三態」の形をとります。例えば水は0℃以下になると氷という固体になり、0~100℃の間では液体の水、100℃を超えると沸騰(ふっとう)して水蒸気になります。

 これが動物性油脂の場合、豚などのパルチミン酸など飽和脂肪酸を多く含むため、常温では固体です。ところが、魚介類に多く含まれる油はEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの高度不飽和脂肪酸(オメガ3系(n-3系)脂肪酸)のため、魚の油は常温で液体です(飽和脂肪酸は融点が高く、不飽和脂肪酸は融点が低いとされています)。

 冷たい水の中で生活する魚の油が「血液をサラサラにする」とよく言われるのは、オメガ3系脂肪酸の融点(固体が液体になる温度)が人間より低く、人間の体温では固まらないからなのですね。

 肉も魚も食べる“雑食”の人間ですが、体温が低くなると融点の問題で血液がドロドロと固まりやすくなります。全身のすみずみにまでしっかりと血液を流すためにも、外からのウイルスなどに対抗する免疫力を保つためにも、理想とされる36.5℃の体温を維持できるようにしたいものですね。

 さてここまでは、慢性蕁麻疹が治りにくい人の特徴と、その特徴の1つである体温の低さの理由についてみてきました。後編ではストレスと蕁麻疹の関係を考え、アトピー発症機序理論を応用して慢性蕁麻疹にどう対処するか、解説していきます。

(後編に続く)

著者

山本綾子(やまもと・あやこ)

皮膚科専門医。金沢大学医学部卒業後、金沢大学皮膚科学教室入局。多くの重症アトピー性皮膚炎の治療経験から、湿疹の出る部位と姿勢・歩き方の関係に気づき、「アトピー発症機序理論」と「運動療法」を導き出す。現在、「治らない病気」とされてきたアトピー性皮膚炎を「根治できる病気」として、全国から集まる患者を、改善・根治に導き、アトピー撲滅をライフワークとしている。
病院外でも、アトピー発症機序理論の勉強会・運動療法のワークショップを実施。これまでに東京をはじめ日本全国で開催。
オフィシャルブログは「皮膚科専門医 山本 綾子 のアトピー撲滅プロジェクト」 、Facebookページは、「現役皮膚科医が教える、アトピー卒業の方法