巷にはさまざまなダイエット情報が溢れています。ネットで検索すれば、たちどころに数百種類以上のダイエット法やダイエット食品などがみつかります。あまりにも多過ぎて、本当に有効な方法を見つけ出すのは至難の業のようにみえますが、実はそうでもありません。ダイエットの基本となるいくつかの原則を知っていれば、実際に有効と思われる方法とそうでない方法は、簡単に区別することができるようになります。これらの原則は、栄養学の科学的な根拠に基づいたもので、もっとも客観的で信頼性の高い情報といえます。
ダイエットに関する4つの基本原則
もちろんダイエットのすべてがそれでわかるわけではありません。でもダイエットについて客観的に考えてみようとすれば、誰もが最初に考えなければならない基礎となるものです。実のところ、この原則を知っていれば、ダイエット法やダイエット食品の多くには、なんの根拠も存在しないことがわかります。根拠が存在しないからといって、効果がないことにはならないのですが、それは重要な手掛かりにはなるでしょう。
その原則とは以下の4つです。
これらは人間を対象にした多くの科学研究の結果から抽出されたものであり、それをサポートする実証的な研究が数多く存在しています。ただ科学研究の常で、そこにはいつも反論の余地が残されています。例えば、これらの原則は、いままで検討された科学研究についてまとめたものなので、「いままでに検討されていない科学研究」によって覆る可能性のあることは承知しておく必要があります。とはいえ、そんなことを言い始めたらきりがありません。研究者でもだれでも一定の基準を持たずにはなにも判断できません。そういう意味でこれらの原則は、最も無難な原則ということができるでしょう。
ダイエット理論を見極める2つの補助則
ところで、ダイエットの方法や食品の中には、きわめて突飛なものが多く存在します。ブームになるものにはそういうものが多いようです。そのような突飛なものでも上記の原則を当てはめてみれば、たいていは原則1のところで判断終了ですが、突飛なダイエット法や食品は、しばしば突飛な理論をもっています。つまり、カロリー摂取とカロリー消費のバランスを大きく崩せるからダイエットできるのだ、というような理屈です。こういう場合には、水掛け論になってしまう危険性が高いので、次のような補助則を導入します。
補助則1:科学的判断
ダイエット法が科学法則に反する、あるいは科学と相容れない法則などに基づく場合には、それを科学的に立証または反証することはしばしば困難です。現在の科学知識によって説明することができないものは、疑似科学的であると考えて、科学的に証明されるまで判断保留とします(ただし、これには相当程度の専門知識が必要かもしれません)。
補助則2:疫学的判断
ダイエットの有効性がもしあるとしたらヒトを対象にした調査研究において疫学的に証明できるはずです。したがって、証明されていない場合の判断はふたつしかありません。つまり、証明できないのか、もうすぐ証明されるのかのどちらかということです。新しいダイエット法を公表した者が、それを証明したくないなどということは通常は考えにくいので、仮にもうすぐ証明されるのだと考えれば、証明されるまで数年の猶予はあることになりそれまでは判断保留とします(疫学研究ではそれくらいの期間は必要である)。したがって、発表から数年たっても証明されそうにないものは無効と考えて良いでしょう。
基本原則・補助則の使い方
たとえば10年ほど前に一世を風靡した「にがりダイエット」というものがありました。このダイエットは、ダイエットの原則1に基づいて、カロリーのバランスに影響を与える要素がないことから、有効でないことがわかります。けれども、おそらくそこで多くの人が想定していたのは、にがり(塩化マグネシウムが主成分)の摂取によって、体内における摂取カロリーと消費カロリーのバランスが大きく変動するということでしょう。しかし、これは補助則1によって、既存の科学知識とは反するものなので、これも否定されます。さらに、疫学的な証明も存在しなかったので、補助則2においても否定されます。
これは推測に過ぎませんが、当時国立健康・栄養研究所という国の機関が「にがりダイエットに効果はない」と発表してブームに水をさしたのは、そのような栄養学研究者が信じる一般的原則に照らしてのことでしょう。残念ながら、その後現在に至るまで、にがりダイエットの効果を証明した科学研究は報告されておらず、発表の正しさが裏付けられた格好になりました。
もっともこれは「にがりダイエット」に限ったことではありません。「納豆ダイエット」など日本でブームになるダイエットにはそういうものが特に多いように思います。
次回からは、一般に有効性が認められるダイエットを取り上げ、原則の各項目について詳しくみていくことにしましょう。