ダイエットに潜むトラブル(健康・精神・金銭的被害など)について、みなさんはどのようにお考えですか?
「私には関係ない」、「まだ若いから別に心配していない」と思っている方が多いのではないでしょうか。
実際、Googleで「ダイエット」が673,000回(12ヶ月間の月平均検索回数)も検索されているのに対して、「ダイエット トラブル」や「ダイエット 危険」になると、10~140回程度しかありません[1]。
「ダイエットに潜むトラブル」を心配する方は非常に少ないようです。
本当にこれで良いのでしょうか?
気をつけてトラブル増加中!
ダイエットに関連する苦情相談やトラブルについて、統計データに基づいて発生件数・健康&安全・契約の各側面から分析してみましょう。
なお、テレビ番組やインターネットなどから得た情報をもとに、ご自身でダイエットを実践した結果のトラブルについては、具体的な統計データを見つけることができませんでした。
しかし、ブログや質問サイトなどを閲覧してみると、「体重が減らない」・「逆に太った」・「なんだか体調がすぐれない」などの症状を感じている方は非常に多いのではないかと推測できます。
トラブル発生件数
独立行政法人国民生活センターが毎年発表している「危害・危険情報」[2]によると、化粧品・医療サービス・エステティックサービス・健康食品が、ほぼ毎年のように危害情報の上位を占めています。
そこで、ダイエットに関連するものとして「医療サービス」・「エステティックサービス」・「健康食品」の3つについて確認してみましょう。
【危害・危険情報】
- 医療サービス:年による変動が大きいのですが、約850~1,200件前後
- エステティックサービス:毎年600件前後
- 健康食品:毎年600件前後
【相談件数】
- 医療サービス
7,000~8,000件前後。
医療サービスに対する相談件数は毎年度増加しています。 - エステティックサービス
毎年度7,500~8,000件前後。
2009年度以前の11,000件前後よりは減少していますが、依然として相談件数が多い状態が続いています。 - 健康食品
12,500件程度(2010・2011年度)から28,085件(2012年度)、46,966件(2013年度)とほぼ倍増しました。
2014年度は18,099件と大幅に減少しましたが、それでも非常に多い状態が続いています。
なお、これらの危害情報および相談件数のすべてが「ダイエット」と直接的に関係したものではありません。
(当然ですが、ダイエット以外にもさまざまな原因があります。)
しかし、「痩せたい」・「きれいになりたい」・「カッコよくなりたい」などの消費者ニーズをきっかけにして、消費者自身が予想もしなかった健康被害や事業者との金銭トラブルなどに巻き込まれる可能性があることを十分に認識しておく必要があります。
健康&安全に関するトラブル
ダイエットを直接的な原因として心身のバランスを崩したり、身体的な危害を受けたりする場合があります。
摂食障害
ダイエットと健康被害との関連性を考える際、もっとも指摘されるのは「摂食障害」であり、「痩身願望が、摂食障害の中核的な特徴の1つであることは明らかである」[3]として、摂食障害の発生過程においてダイエット行動は無視することができない要因とされています。
厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス総合サイト」によると、
摂食障害は神経性食欲不振症(AN:Anorexia Nervosa)と神経性過食症(BN:Bulimia Nervosa)に大別され、そのどちらにも明確に分類されないものを特定不能の摂食障害(EDNOS:例えば、むちゃ食い障害)と定義しています。
1998年に全国の医療施設(23,401施設)を対象に実施した疫学調査によって、患者推定数はAN:12,500人、BN:6,500人、EDNOS:4,200人となっています。
男女比でみると、女性が90%以上を占めていました。
つぎに1980年と比較すると、約20年の間に摂食障害の患者数が約10倍に急増しました。
しかし、医療施設で受診した人は一部であると考えられるため、実際の患者数はもっと多いと推測されています。
さらに推定発症年齢の若年化も進んでおり、10代の占める割合が年々増加しています。
これらの調査結果から、摂食障害に苦しんでいる若年層の女性は非常に多いと思います。
疾病・ストレス過多
過度な食事制限(水分・糖質・脂質・タンパク質)や短期間の急激なダイエットによって、脱水症状による体調不良・熱中症・血栓・脳梗塞など以外にも、栄養不足による貧血・低血糖・ホルモンの合成・分泌不全、筋肉の減少などの危険性が高まります。
また「痩せるために食べるのを我慢しよう」という過剰意識が継続することで、ストレス過多に陥り心身に悪影響を及ぼします。
そして、ダイエットに励んだ結果、将来的に思いもよらない症状(疾病)に陥る危険性があります。
それが「サルコペニア肥満」と「骨粗しょう症」です。
サルコペニア肥満とは、筋肉量の減少に伴う体脂肪の増加のことをいいます[4]。
一見矛盾している感じがありますが、
「加齢と過剰な食事制限による筋肉減少⇒運動機能の低下⇒食事による体脂肪の増加」
が負のスパイラルとして循環していくことで、少しずつ症状が進行していきます。
そしてメタボリックシンドロームの進行に伴い、生活習慣病の発生リスクが高まります。
一方の骨粗しょう症とは「骨の代謝バランスが崩れ、もろくなった状態」[5]であり、原因は栄養不足(カルシウムやミネラル等、およびそれらを吸収するビタミンの不足)とされています。
高齢になった際、筋力低下と骨折で「寝たきり状態」になるのはイヤですよね。
介護不足の社会的問題もありますから、寝たきりにならないように注意したいと思います。
身体的危害
前述の「危害・危険情報」によると、身体的な危害を「皮膚障害」・「消化器障害」・「擦過傷・挫傷・打撲傷」・「熱傷」・「その他の傷病及び諸症状」の5つに分類しています。
「その他の傷病及び諸症状」については、「脱毛、切れ毛、頭痛、腰痛、発熱、精神不安定等が該当し、根本的な原因が明らかでないものが含まれる」とされています。
医療サービス・エステティックサービス・健康食品に関する身体的危害について確認しておきましょう。
【医療サービス】
「その他の傷病及び諸症状」・「皮膚障害」・「熱傷」が多いです。
危害発生の治療行為は多岐にわたると推測されますが、ダイエットに関連するものとしては脂肪吸引を代表とする医療痩身だと思われます。
なお、医療痩身については以下の指摘もあります。
医療事故が起きても、裁判に持ち込んでまで争う患者が少なく、ほとんどが示談で済ませてしまうという美容系医療業界に特有の事情がある。
(中略)
美容系医療におけるトラブルは実際にはメディアに取り上げられたものの数倍はある。
(出典)究極のダイエット,週刊ダイヤモンド,pp.57-61,2015/5/30号
【エステティックサービス】
「皮膚障害」・「擦過傷・挫傷・打撲傷」・「熱傷」が多いです。
これは脱毛(美容電気・美容ライト)による火傷や痛み、痩身と美顔のマッサージによる皮膚の腫れや湿疹などが原因と思われます。
【健康食品】
「その他の傷病及び諸症状」と「消化器障害」が多いです。
これは、健康食品の機能性(効果・効能)や含有成分名・含有成分量などよりも、インターネット上のブログや評価サイトを閲覧し、他人の意見や評価の方を優先したため、自分自身の体調や体質に合わない健康食品を摂取したことが原因だと考えられます。
これを裏付けるデータとして、内閣府(消費者委員会)が実施したアンケート調査があります。
それによると、「美容・ダイエット等を目的とした者の割合は14~15%と比較的低いものの、20代・30代の女性において、健康食品の購入に際してはランキングや口コミを重視する傾向がある」ことや「美容・ダイエット・老化予防を利用目的としている者は他の者に比べてインターネットの選択率が特に高い」とも指摘しています[6]。
ケガ・不慮の事故
ダイエットに関連するなかで、ケガや不慮の事故に遭う危険性が高いのは「運動」です。
貴重なデータとして、運動中に発生した突然死の統計データ(1984~1988年の5年間)がありますので、ご紹介します。
(種目別で件数が多い順:上位5つ)
・ランニング:165件
・ゴルフ:87件
・水泳:80件
・ゲートボール:45件
・登山:32件
(出典)公益財団法人長寿科学振興財団,運動中の突然死,2006,http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000400/hpg000000318.htm,2015/10/29引用
ランニングや水泳の突然死は、30歳代以下の若者世代が多いです。
双方の運動とも運動強度が非常に高く、若者世代の愛好者が多いことが原因と思われます。
一方、ゴルフやゲートボールは40歳以上の中高年で発生件数が多いです。
これについては、
ゴルフやゲートボールが危険を伴うスポーツかというとけっしてそうではない。これは、運動強度が低いため低体力者や有疾患者でも気軽に参加できることを示しており、潜在的な心疾患保有者が容易に参加できることから、事故が発生しやすくなるといえよう。
(出典)坂本静男(編),メタボリックシンドロームに効果的な運動・スポーツ,NAP,pp.202-203,2011
と指摘されています。
さらに、全国のフィットネスクラブでの内因性死亡事故およびニアミス事故(1989~1991年)の調査事例もあります[7]。
それによると、全400例のうち死亡12例(1例を除いてすべて40歳以上)、ニアミス28例であり、種目別では水泳が最も多かったのです。男女比でみると5:7で女性の方が多いという結果でした。
これからの調査結果から、心疾患や関連する疾病(生活習慣病など)の保有者はとくに注意する必要があり、医師に相談のうえ指示の範囲で運動を実践しましょう。
また種目に関係なく十分な食事と睡眠を心がけて、準備運動と整理運動をしてケガの予防に注意してください。
契約に関するトラブル
商品・サービスの購入や契約・解約時に事業者側とトラブルに遭うケースのほかにも、問い合わせ・購入履歴に基づく個人情報などを悪用されるケースが非常に多いです。
これらのトラブルはニュース番組や新聞などでもたびたび報道されていますが、被害者は後を絶ちません。
例えば、健康食品の場合、2012年度に顕著となった「送り付け商法」があります。
これは問い合わせ・購入履歴を悪用し、高齢者宅へ健康食品を勝手に送り付け、代金を請求するトラブルでした。
「送り付け商法」に関するトラブル件数は13,675件と前年度比で約5倍に増加し、そのうち高齢者からの相談件数が11,133件で、全体の8割強を占めていました[8]。
さらに、最近は「お試し価格」に関する相談が急増しています。
お試し価格で1回だけ注文したはずが、定期購入の契約になっていたというものです。
相談者の多くは女性で、なかには中学生の未成年者も含まれています[9][10]。
一方、エステティックサービスの場合、契約・解約のほかに、事業者の倒産や店舗の閉鎖に伴うトラブルが多く発生しています。
前述の「PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)」で相談内容を調べてみると、
クーポン雑誌を見て体験の痩身エステに行くと、継続をしないと効果が無いと長時間勧誘され、チケットを購入したが解約したい。
痩身エステの継続契約をしたが店の対応に不審な点があり、脚に発疹がでたのでクーリング・オフしたい。手続き方法を教えて欲しい。
(国民生活センター 消費者生活相談データベースより)
などがあります。
エステティックサービスは、特定商取引法の規制対象となる「特定継続的役務提供」の一つに指定されています[11]。
この特定継続的役務提供に指定されると、契約内容に関する書面の交付や誇大広告の禁止、クーリング・オフ制度(契約の解除)などが義務付けられています。
なお、特定継続的役務提供は全部で6つ指定されています。
エステティックサービスのほかには、語学教室・家庭教師・学習塾・結婚相手紹介サービス・パソコン教室があります。
それから、最近はエステティックサービスとは異なる新しいサービスとして、「ダイエット専門ジム」や食事・運動を指導する「パーソナルトレーニング」などの「スポーツ・健康教室」があります。
残念ながら「スポーツ・健康教室」に関する相談件数も少しずつ増えてきています。
(2010年度:1,741件、2014年度:2,118件)
相談内容をみると、例えば、
「2か月で15キロの減量保証をうたうジムに通ったが効果がない。返金を申し出たがジムは応じないかもしれない。対処法はないか」
「痩せるためのプライベートジムでサプリメント購入も含め約60万円の契約をしたが、希望の日に予約がとれないので止めたい」
(国民生活センター 消費者生活相談データベースより)
があります。
また、2015年初夏には「全額返金保証」が話題になりましたので、記憶に新しい方も多いと思います。
参考文献
[1] Googleのキーワードプランナーによる計測値。過去12ヶ月間で検索された月平均検索回数(2015/10/29現在)[2] 独立行政法人国民生活センター,2014年度のPIO-NETにみる危害・危険情報の概要,2015
[3] 馬場安希・菅原健介,女子青年における痩身願望についての研究,教育心理学研究,48,pp.267-274,2000
[4] 久野譜也,寝たきり老人になりたくないならダイエットはおやめなさい,飛鳥新社,2015,pp.72-82
[5] 厚生労働省,骨粗しょう症,e-ヘルスネット,2008
[6] 内閣府(消費者委員会),消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査(アンケート調査),2012
[7] 坂本静男(編),メタボリックシンドロームに効果的な運動・スポーツ,NAP,pp.202-203,2011
[8] 消費者庁,平成25年版消費者白書,2013
[9] 東京都,憧れのモデルお薦めの健康食品・・・「お試し」のつもりが継続購入に!,東京くらしWEB,2015/7/3更新
[10] 日本経済新聞社,「お試し価格」相談急増 健康食品通販、条件巡りトラブル,日本経済新聞,2015/8/7更新,http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H2B_X00C15A8CR8000/
[11] 消費者庁,特定商取引法ガイド,2011
まとめ
ダイエットに潜む「影」の部分に焦点を当てて、ご紹介いたしました。
健康的に痩せることで容姿も大きくかわり、周囲からの「羨望のまなざし」とともに、自分自身にも「自信」が持てるようになります。
あなたの生活をさらに前向きにさせてくれるでしょう。
ところが、ダイエットは長期的な継続が必要であり、ストレスとの闘いを強いられるとともに、予期せずに身体的・精神的・金銭的なトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
その危険性を正しく理解し未然防止に努めることができれば、安心してダイエットに励むことができますので、ダイエットの成功がぐーんと近づきます。
護身術①:知る
ダイエットに潜むトラブルは日常茶飯事に発生していることを認識しましょう。
とくにニュース報道や国民生活センターなどからの発表情報を確認しましょう。
護身術②:調べる
成功例や失敗例など双方の意見を確認し、「本当に自分に適したダイエット方法なのか」、納得できるまで調べましょう。
護身術③:相談する
ダイエット情報はなかなか自分ひとりでは理解できません。
家族や友人、専門家(医師・栄養士・スポーツインストラクターなど)に相談してみましょう。
ここまで読んでくれたあなたであれば、もう大丈夫ですね。
さぁ、さっそくダイエットに取り組んでみましょう。