2017-07-30 00:02:16

「告白」   町田康作  中公文庫

 

 なぜか、この作品に出会ってしまった。町田康の作品は「くっすん大黒」というやつを読んだことがあったが、その時は面白いがくだらない作品だぐらいにしか考えていなかった。

 この小説は凄い。作品自体の完成度がどうのというよりも、個人的に魂を揺さぶられる作品だった。

 読むのがつらくなった。それほどまでに感情移入した作品は久ぶりだ。

 800ページ以上ある分厚い長編なんだが、一晩で読み遂げた。

 最後のところで、まさに胸が痛く、思わず泣けてくるような作品だった。

 

 題材は明治初期の河内地方に実際起こった「河内十人切り」という、現代でも河内音頭のスタンダートナンバーにもある、無頼者の「熊太郎」の話である。

 世間に同化できずに、知らず知らずに道を踏み外し、さんざんな目に遭いながら、最後は凶悪犯にならざるをえない自己を持て余した愚か者の話だ。

 

 主人公、熊太郎は幼少から追いつめられる、彼が殺害したエグイ連中、強欲婆とかもけっして極悪人ではない、むしろ憎めない欲望人である。

 何が、彼を追い詰めたのか。これは悪意ある世間の人々、ごく普通の市井の連中である。

 

 この作品を読んだ時、日本のもっとも暗いネガティブな部分を感じてしまった。そして私が学生の時代から、それこそ何度も読み返した作品、まさに名作の域を有する高橋和巳の「邪宗門」を想起したものだ。

 邪宗門で描かれる世界観は、この河内の告白の熊太郎とは異なるが、その根の部分は同一のような気がする。

 そして、私は再び、「邪宗門」を読み返している。

 

 そして、曲を聴く。

 川島英五の名曲、「酒と泪と男と女」か。

2017-07-21 15:19:50

 久しぶりに、というか偶然にも、とても面白い映画に出会った。

 

 灼熱の昼過ぎ、早稲田通りを歩いていたら、昔からある「早稲田松竹」という名画座(これも今ではほとんど死語)で、上映されている映画の広告に惹かれるものがあった。

 というよりも、あまりにも暑くて、しばしの涼を取ろうとふらりと映画館に入ったのだ。

 平日の昼間から呑気なもんだと思われる方々もいるだろうが、明日、明後日と週末は朝から一日中仕事が立て込んでいるので、まあ、これくらいの休息は良いと思ったのだ。

 

 

 そこで観た映画が、「お嬢さん」という奇妙な作品だった。ミステリーの範疇に入るのだが、作品自体、その構成、映像、そしてお嬢さん役のキム・ミニの演技、すべて良かった。

 韓国映画、韓流ドラマも含めて、そんなに好きではないのだが、この作品は面白い。

 主演のキム・ミニの演技と書いたが、演技以前に彼女そのものが素晴らしい。

 

 機会があれば、ぜひ観て欲しいものだ。

2017-07-15 10:13:40

 2020東京オリンピックを控えて、観光施策に力が入るところだが、私はつねづね日本独特の習慣、それもおかしなマナーについて考えることがある。

 その代表的なもの。携帯電話の使用を控えろ!というものだ。

 お店でも、エレベーターでも、交通機関でも、携帯電話を使用することが、悪害のように考える習慣が日本においては定着している。

 そもそも、どのようないきさつでこうなったのかは不明だが、携帯電話が普及する当初からのような気がする。

 日本以外の海外では、このようなマナーは存在しない。だから誰でも大っぴらに自由に携帯電話を使う。(日本の街中でも外国人が携帯電話を堂々と使用している風景を目にすることも多いだろう)

 

 それなのに、日本では携帯電話の使用禁止が、全世界共通のマナーであるかのように思われている。

 なんせ、電車に乗れば、「携帯電話の使用を控えろだの、マナーモードにしろだの」、やたらアナウンスまで流す始末だ。

 私も公共の場でかかってきた電話に対して、小声でこそこそ話すことがあるが、これは本当に大きなストレスになる。

 

 これこそは改善しなければならない、日本のおかしなマナーだ。

 

 わざわざ、公共の場において携帯電話をかけることを控えるというのならば、それはマナーとして一定の理解もできる。

 しかし携帯電話という者は、時と場所を選ばずにかかってくるものなのだ。(電話をかけてくる相手は、こちらの状況など知る由もないのであるから当然とも言える)

 かかってくる電話に出ない、もしくは電源をオフにしておくということは、相手に対して失礼であるし、また仕事上の不都合を生じることになる。

 

 くだらない会話ならいざ知らず、重要な要件だってあるのだ。重要な要件であるから、わざわざ携帯にかけてくるのだ。

 女子高生がどうでもいい、彼氏の愚痴を話すとか、おばあちゃんが孫の自慢話を話すとか、くだらない会話については遠慮してもらうにしても、緊急を要する仕事の話であるならば、携帯電話での短期間の通話は容認されるべきというのが、私のかねてからの持論である。

 

 こんなことに眉をひそめる日本人の方が、感じが悪いというものだろう。