博多駅ビルの「顔」にベッキーを起用したワケ
博多駅ビルの商業施設「JR博多シティ」(福岡市)はなぜ広告モデルにタレントのベッキーさん(32)を起用したのか。昨年の不倫騒動で一時休業していたが、活動を再開。JR九州グループが駅ビルの“顔”に持ちかけた。「われわれも一緒になって第一歩を踏み出したい」(JR九州の青柳俊彦社長)という狙いはどこに?
■「賭けに出た」のか
広告業界では、1月24日の発表前からうわさになっていた。
「賭けに出た…」。福岡市内に拠点を置く広告代理店の担当者は、こんな見方を示した。不倫騒動でイメージダウンしたタレントの起用には「リスクがある」からだという。
実際、昨年4月には、日清食品がカップヌードルのテレビCMを中止した経緯もある。「消費者がどう反応するか、読み切れない」。それが、起用を「賭け」とした理由だ。
そんなリスクを負う分、注目度も大きい。別の広告関係者は「攻めの仕掛け」と評価した。
双方に「利点があった」とみる声も。「騒動前のベッキーさんのギャラはとてもじゃないが、地方の商業施設が払える額ではなかったはず」(広告営業マン)と、コスト事情を指摘。
その一方、「ベッキーさんも芸能活動を本格化していくに当たって、商業施設の広告塔はクリーンなイメージで、良い仕事だったはず」(同)とみる。
■ストレートな起用
こうした見立てに対し、JR博多シティは「いちかばちかというつもりはない」、「(ギャラも)以前の価格を知らない」と明確に否定する。
2011年3月の開業以来、業績は右肩上がり。直近の2015年度の売上高は1035億円と、初めて1000億円台を突破した。JR博多シティの仁後(にご)裕介取締役営業部長は「冒険しないといけないものはない」と説明する。
ただ、流通業界で危機感を失えば、たちまち業績が下がりかねない。
仁後氏も、「駅ビル業として『九州で一番』は当たり前。ここで満足しては、上はない。全国をみると、西日本、東日本、北海道など同じJRグループの(大規模な)駅ビルがある」と、目線を全国に向ける。
テナントから「あのビルに出てみたい」と思われる施設になるには、強い営業力が必要だ。
このため、2〜4月には、過去2番目の規模という46店舗を入れ替える大改装に踏み切る。
顧客層で多いのは30代女性。これまで広告塔は、3周年が「ウルトラの母」、5周年がラグビーの五郎丸歩選手だった。今回、32歳のベッキーさんは、初めて主な顧客層への「ストレートな起用」(仁後氏)になる。
■社長が読み飛ばす
親会社のJR九州の青柳社長はどう考えているのか。
起用の発表から1週間後の1月30日。JR九州本社で開かれた定例記者会見で、青柳社長は用意した発表案件10件のうち、ベッキーさんに絡む1件だけを読み飛ばした。
事務方が気付いて知らせると、青柳社長は「あっ、抜けてた?失礼しました。ごめん。追加させていただきます」と、修正した。
既に発表した案件のため、“油断”したのか。それとも、“リスク”に触れたくなかったのか−。
さまざまな臆測を拭い去るかのように、青柳社長は起用の理由を語った。
「ベッキーさんは新しい復帰の仕事を始めた。ひたむきに頑張っているところを、(われわれも)一緒になって第一歩を踏み出したい」
「(制作した)CMはベッキーさんの意気込みを感じた。博多シティに一番あった存在。本当に良い人選ができた」
そして、最後に語ったのが、こんな温かいエールだ。
「彼女の再出発がうまくいくようにしたい」
結局、JR博多シティも「どんなリアクションになるのか、フタを開けてみないと分からない」(幹部)状況だ。
「博多のみなさん これからよろしくお願いします。ベッキー」。直筆のメッセージを送ったベッキーさんのCMは2月24日から。関係者の期待と緊張が続く中、話題集めには成功しているようだ。
「バズマーケティングなのか」
JR博多シティの名付け親で、福岡市在住のプランナー・中村修治さんの話
そもそもベッキーさんは悪いことをしていない。
マスコミと大衆が「ゲス不倫」と騒いでベッキーさんを食い物にした。それこそ、「ゲス」だ。
CM公開後、どんなリアクションが起きても、JR九州は「ベッキーさんを応援する」と、徹底してほしい。不評を買ってすぐに降ろすなら、単なる話題狙いの「バズマーケティング(口コミマーケティング)だった」と言われても仕方ない。
この記事は2017年02月09日付で、内容は当時のものです。