臨床疾患分類
内分泌、栄養及び代謝障害
甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症
甲状腺機能亢進症
はじめに
「甲状腺が甲状腺ホルモンを過剰に合成し、分泌し続けるため、血中に甲状ホルモンが過剰に存在する状態」を甲状腺機能亢進症 ( hyperthyroidism ) と呼ぶ。
甲状腺亢進症の起因となる疾患は数種類あるが、その中で、自己免疫性甲状腺疾患であるバセドウ病 ( Basedow disease ) が圧倒的に起因となる。それゆえ、以下に、バセドウ病を起因とする甲状腺亢進症について解説する。
バセドウ病の発症比率は訳1000人に1人の割合である。発症頻度は、20代~40代の女性が最も高い。
ちなみに、バセドウ病 ( Basedow disease ) はドイツ語由来の名称であり、英語圏ではグレーブス病 ( Graves disease ) と呼ばれる。
症状
甲状腺の肥大、頻脈、手の震え、体重減少、食欲亢進が起こる。
過剰な甲状腺ホルモンにより新陳代謝が活発なため、食べても食べても痩せていく。
眼球突出が甲状腺亢進症の症状としてよく言われるが、それは治療薬メルカゾールが認可される以前に起こっていた症状である。治療効力の高いメルカゾールが治療薬として使われるようになってから、眼球突出の症状はなくなったようである(2015年現在)。
病気のしくみ
正常な状態における、甲状腺ホルモン合成と分泌の仕組みは、以下の通りである。
| <視床下部において> |
甲状腺ホルモン(T4とT3)の血中濃度が増えすぎると、今度は、視床下部へのネガティブ・フィードバックにより、TRHの分泌量が減る。その結果、TSHの分泌量も減る。
しかし、バセドウ病になると、抗TSHレセプター抗体(※) ( TSH receptor antibody; TRAb ) がTSHに成りかわって(?)、TSHレセプターを刺激し続ける。
| ※抗TSHレセプター抗体 ( TRAb ) |
血中の甲状腺ホルモン(T4とT3)が増加すると、前述のとおり、視床下部へのネガティブ・フィードバックにより、TRH分泌量が減り、そしてTSHの分泌量も減っていく。
しかし、その努力むなしく(?)、TRAbがどんどんTSHレセプターを刺激するため、T4がどんどん分泌されていく。
治療
薬物療法
甲状腺ホルモンの合成を抑制する抗甲状腺薬を内服する。
<抗甲状腺薬>
チアマゾール(商品名:メルカゾール)
プロピルチオウラシル(商品名:チウラジール)
2か月程度で甲状腺ホルモン(T3とT4)の血中量は正常化する。しかし、TRAbが消えるのは2~3年後のため、それまで、抗甲状腺薬を内服する必要がある。
頻脈、手の震えがひどい場合は、交感神経β遮断剤を内服する。
放射線ヨード療法
放射性物質を使って甲状腺の組織を破壊する。10年以上経つと、逆に、甲状腺機能低下症になることがある。
甲状腺亜全摘術
一部を残して甲状腺を切除する。10年以上経つと、逆に、甲状腺機能低下症になることがある。
甲状腺機能低下症
はじめに
「甲状腺の甲状腺ホルモン分泌量低下により、血中の甲状腺ホルモンが欠乏している状態」を甲状腺機能低下症 ( hypothyroidism ) と呼ぶ。甲状腺ホルモンが組織に届かなくなることにより、様々な障害が起こる。
甲状腺機能低下症の起因となる疾患は数種類あるが、その中で、自己免疫疾患である慢性甲状腺炎 ( chronic thyroiditis ) が主たる起因となる。それゆえ、以下に、慢性甲状腺炎を起因とする甲状腺亢進症について解説する。
慢性甲状腺炎の発症頻度は、20~50歳の女性が最も高い。
ちなみに、慢性甲状腺炎は、最初に発見した橋本策(はしもとはかる)氏の名前を取って橋本病 ( Hashimoto’s disease ) とも呼ばれる。
症状
発症後のけ中甲状腺ホルモン濃度は正常であるが、加齢とともに甲状腺機能低下症になることが多い。
<全身>
寒冷過敏
嗄声(させい)【声がかすれ、太くなる。】
眼瞼浮腫、顔面浮腫
体重増加【水代謝の障害により水が体内に貯留するため。】
<交感神経>
疲労感、だるさ
<メンタル>
無気力
<皮膚>
乾燥
蒼白
無汗
脱毛
<内分泌・代謝>
月経異常
病気のしくみ
抗甲状腺抗体が作られ、自己の甲状腺組織を攻撃する。そのため、甲状腺は炎症を起こし、びまん性に腫大する。
| 甲状腺組織がウィルス感染などにより、変性する。 |
治療
薬物療法
甲状腺ホルモンを補充するため、甲状腺ホルモン薬を服用する。
<甲状腺ホルモン薬>
サイロキシン(商品名:チラーヂンS)
甲状腺ホルモン ( T3,T4 ) と甲状腺刺激ホルモン ( TSH ) を測定し、正常値を保てるようにしながら、長期的に服用する必要がある。