片頭痛の治療 (急性期治療、予報的治療) 11/05/03
生活支障のある中等度以上の片頭痛には診断を吟味したうえでトリプタン系薬剤(以下、トリプタンと略記)を処方する。 本邦で使用可能なトリプタンはスマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン(発売順)の4種類がある。 製剤としては錠剤、口腔錠、点鼻液、注射液がある。 トリプタンの服用タイミングはアロディニア (中枢神経感作)の出現する前の早期服用が薦められている。 軽症の片頭痛であれば消炎鎮痛薬の早期服用でも対処可能である。 いずれの場合でも制吐薬を併用すると悪心・嘔吐が抑制でき、薬剤効果発現が早まる。 悪心・嘔吐で服薬が不可能な重症例にはスマトリプタン皮下注射あるいは点鼻液を使用する。 急性期治療薬(頓挫薬)を乱用すると薬物乱用頭痛を誘発する。 これを回避するために月10日以上頓挫薬を使用するケースに対しては片頭痛予防薬を使用する。 予防薬としては本邦では保険適応の関係から塩酸ロメリジンが第一選択であるが、ほかにβ遮断薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などが用いられる。 重要キーワード:慢性頭痛治療ガイドライン、トリプタン系薬剤、早期治療、アロディニア、片頭痛予防薬 昨今は片頭痛の病態生理解明がすすんでいる。 頓挫療法は約10年前のトリプタン 系薬剤の登場により、世界的に大きく変化した。 1999年にはカルシウム拮抗薬の塩酸ロメリジン(ミグシス・テラナス)が予防薬として登場した。 2000年には日本でもスマトリプタン(商品名イミグラン注3)が使えるようになった。 2003年にはトリプタンは4種類(イミグラン、ゾーミッグ、レルバックス、マクサルト)が使えるようになった。 剤形も経口薬(I,Z,R,M)、口腔錠(Z,M)、点鼻液(S)、注射液(S)と4種類がある。 I=イミグラン、,Z=ゾーミッグ、R=レルバックス、M=マクサルト) それにともないエルゴタミンの比重が低下した。 まさしく2000年は片頭痛治療元年migrainiumと位置付けられる。 1. 薬物療法 1)急性期治療(頓挫薬)⇒片頭痛の急性期治療参照 特異的治療(トリプタン、エルゴタミン) 非特異的治療 2)予防療法:カルシウム拮抗薬、β 遮断薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、ボトックス、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンⅡ受容体阻害薬、漢方薬など 2.非薬物療法:バイオフィードバック、鍼治療、頭痛体操、マッサージ、食事療法など 発作の回避法(⇒附属病院回避術 参照) 発作時の対処法(⇒附属病院応急対策 参照) 代替医療(ハーブ、マグネシウム療法、アロマテラピーなどがあります⇒附属病院 参照) 3.誘発因子の検索と除去 4. 患者教育 片頭痛に対する知識 片頭痛と他の頭痛の鑑別 治療薬の効果と副作用 急性期治療薬の適正使用(使用のタイミング、使用量、使用頻度) 予防療法の必要性、効果発現までにかかる時間 発作中の注意(静かな暗い場所で休む、痛む箇所を冷やすなど) 妊娠の有無の確認 頭痛の記録(ダイアリー) 非薬物的治療 片頭痛治療は、片頭痛の頻度、重症度、支障度、随伴症状、病型、合併する疾患の有無、妊娠の有無、患者自身の希望、経済性など種々の因子を検討し、 おのおのの患者に適した薬剤を選択する。 片頭痛の急性期治療薬のうち、エビデンスの高さと効果から片頭痛治療に関するガイドラインが一致して薦めるのはトリプタンである。 片頭痛は、三叉神経血管説によると、血管周囲の三叉神経終末から血管作動性ペプチドが放出されることにより惹起される血管の拡張と無菌性の炎症がその原因である。 トリプタン(5-HT1B/1D受容体作動薬)は、片頭痛に関係する血管、三叉神経に存在する5-HT1Bおよび5-HT1D受容体に選択的に作用する。 2000年4月のスマトリプタンの皮下注射剤(商品名イミグラン注3)から始まった。 2004年には4品目の経口剤、点鼻液、口腔錠(速溶錠・崩壊錠)の、のべ8製剤が薬価収載された。 トリプタンを中心とした片頭痛の治療アルゴリズムを■表■に示す。 ■表 片頭痛治療アルゴリズム ------------------------------------------------片頭痛の正しい診断(診断基準に準拠)を得る。 軽い片頭痛の場合(生活支障がない)は使い慣れた鎮痛薬を早期服用する。 中等症以上の片頭痛(生活支障がある)の場合は発作の早期にトリプタン製剤を服用する。 悪心・嘔吐を伴う片頭痛は制吐薬を併用、もしくはスマトリプタンの点鼻液あるいは皮下注射液を使用する。 トリプタンを片頭痛の予防に服用しない 片頭痛治療には制吐薬(例:ドンペリドン)を積極的に併用する。 緊張型頭痛と片頭痛が並存する場合は: 7-1. 頭痛の早期(片頭痛か緊張型頭痛か区別がつかない段階)には鎮痛薬を服用する(例:アセトアミノフェン)。 7-2. 鎮痛薬服用30~60分後に頭痛が増強してきたら、あるいは片頭痛と直感できた時点でトリプタンを服用する。 月に10日以上頓挫薬を服用する場合は片頭痛予防薬を併用する。 ------------------------------------------------ 注射剤はきわめて即効性であり(10分で効果発現)、群発頭痛にも適応を有し、悪心・嘔吐で経口剤が服用できない患者にも投与できるメリットがある。 医療機関に受診しないと投与が受けられない不自由さがある。 経口薬は患者の手元においていつでも服用できる点が最大のメリットである。 従来の抗片頭痛薬(消炎鎮痛薬、エルゴタミン製剤)は片頭痛のごく初期の服用は有用であったが、頭痛極期には無力であった。 トリプタンは本格化した激しい頭痛をも抑制し、患者のQOLをいちじるしく改善させる。 ただし効果の発現には早くて30分の時間を要する。 最近発売された口腔錠は水なしでも服用可能な点が特徴であり、いつ起こるかわからない片頭痛患者が「いつでも、どこでも服用できる」点がウリである。 点鼻液は投与後15分で効果を発現し、注射薬に近い即効性を持つ。悪心・嘔吐を伴う場合にも投与可能である。欠点は点鼻液が口腔内にまわり苦味があることである。 トリプタン経口剤は国際頭痛分類第2版による片頭痛診断基準により「片頭痛」の診断が行われた場合にのみ投与する。 片頭痛とは異なった頭痛および随伴症状のある患者は、くも膜下出血や脳腫瘍などほかの原因による頭痛の可能性があるので、頭痛の原因を特定してから投与する。 また家族性片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛(めまいなど脳幹症状をともなう片頭痛)あるいは眼筋麻痺性片頭痛の患者には投与しない。 経口製剤にはの6種類がある。スマトリプタン(イミグラン錠50)、 ゾルミトリプタン(ゾーミツグ錠2.5mg、 ゾーミツグRM錠2.5mg)、 エレトリプタン(レルパックス錠20mg)、 リザトリプタン(マクサルト錠10mg、マクサルトRPD錠10mg) 錠剤がスタンダートな剤形であるが、水なしでも服用可能な口腔錠も患者のニーズに応じて処方する。 スマトリプタンとゾルミトリプタンは2時間を空ければ一日4錠まで服用可能であるが、エレトリプタンとリザトリプタンは一日2錠までに制限されている。 1錠で効果が不十分である例には、次回は片頭痛発現時から1回服用量として2錠を経口投与することができる。 ただしリザトリプタンについては初回は1錠のみである。 あるトリプタンが無効でも他のトリプタンが有効のこともあるので、少なくとも3種類のトリプタンを試みる価値がある。 悪心・嘔吐の強く服薬が困難なケースはスマトリプタンの点鼻液を処方する。 一般にトリプタンや鎮痛薬を3ヵ月を超えて月10日以上使用するケースは薬物乱用頭痛を招来する可能性が高い。 トリプタンは安全性の高い薬ではあるが乱用例も報告されている。 1ヵ月に10日を超えてトリプタンを服用するケースは片頭痛予防薬を併用して服用の回数を減らす工夫が必要である。 トリプタンは頭痛発現時にのみ使用し、予防的には使用しない。 前兆(閃輝暗点)を抑制する効果もない。 トリプタンは片頭痛のどのタイミングでも有効とされるが、やはり早期服用が有利である。 これまでトリプタンは片頭痛の極期に有効という前宣伝が行き届いたせいか、最盛期に服用するよう指導されがちであったが、これは適切でない。 片頭痛と見極めがついたら早期服用するのが得策である。 その理由はアロディニア である。 アロディニア(異痛症、 allodynia)が形成されると、トリプタンは効きにくくなる。 アロディニアとは中枢神経感作により、通常痛みを感じない程度の刺激でも痛みを感じる現象であり、片頭痛の75%の片頭痛に認められる。 中枢神経感作が起こると皮膚が過敏な状態になる(皮膚ア口ディニア)。 アロディニアの有無によりトリプタンの効果を95%予想できる。 アロディニアがないとトリプタン投与2時間後93%頭痛消失、あると15%と効果の上で明確な差が見られた。 片頭痛発症20分間以内では、アロディニアは出現しないとされているので、片頭痛の早期にトリプタンを服用することが勧められる。 早期服用のほうが有効率が高いことは実証されている。 アロディニアの判定は各医師の任されており、共通の評価方法がありませんでした。 Lipton RB, Bigal ME, Ashina S, et al. Cutaneous allodynia in the migraine population. Ann Neurol 2008;63:148-158.に紹介された アロディニアの判定表を標準としてお勧めいたします。 12項目アロディニア症状チェックリスト(ASC-12) Q.頭痛が重症化している時に下記の動作を行った場合、 どの位の頻度で皮膚に痛みや違和感を感じますか? 当てはまらない まったくない ほとんどない 50%未満 50%以上 0点 0点 0点 1点 2点 髪を梳かす 髪をあげる(例:ポニーテール) 髭を剃る 眼鏡をかける コンタクトレンズをいれる イアリングをつける ネックレスをする ぴったりとした服を着る シャワーを浴びる(シャワーの水が顔にかかっているとき) 枕に顔や頭を当てて休む 熱にさらされる (例:調理中、熱いお湯で顔を洗う) 冷たさにさらされる(例:アイスピックを使う、冷たい水で顔を洗う) 合計 総計 アロディニア 範囲 なし 0~2点 軽度 3~5点 中等度 6~8点 重度 9点以上
本剤投与によりまったく効果が認められない場合は、その頭痛発作に対しては追加投与をしない。 無効の場合はつぎの項目をチェックする。1. 頭痛診断は正しいか、 2. 緊張型頭痛のときに服用していないか、 3. アロディニア出現後に服薬していないか、 4. 悪心・嘔吐のために薬剤が十分に吸収されていないのではないか、 5. 月経時片頭痛ではなかったか、など。 経口剤(スマトリプタン)投与後にスマトリプタン注射液を追加投与する場合には、少なくとも2時間以上をあける。 その逆に、注射液投与後にスマトリプタン錠を追加投与する場合には1時間以上の間隔をおく。 異種のトリプタンまたはエルゴタミン製剤服用時には24時間を空ける。 ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット)はエルゴタミン製剤であり低血圧治療に使用されていることが多いので、うっかりトリプタンと併用されがちである。 消炎鎮痛薬とトリプタンの併用は差し支えない。 トリプタンの服用禁忌は虚血性心疾患、脳血管障害、一過性脳虚血発作(TIA)の既往、末梢血管障害、高血圧症などが挙げられている。 心電図の服用前チェックは義務付けられていないが、40歳以降は心電図を検査しておいたほうがよい。 エルゴタミン/カフェイン配合薬はカフェルゴット、クリアミンなどの薬品名で市販されている。 エルゴタミンは各種のセロトニン受容体をはじめ、アドレナリン受容体およびドパミン受容体に対しても親和性を持つため、 頭痛改善効果とは無関係な種々の作用、たとえば悪心・嘔吐や末梢血管収縮作用を発現する。 また月10日以上服用すると薬剤誘発性頭痛をひき起こす。 エルゴタミン製剤は歴史が古いが、エビデンスは乏しく米国神経学会の片頭痛治療ガイドラインではグループ3(臨床試験、効果のいずれかが不足)に分類されている。 トリプタン時代の今となってはもはや片頭痛治療薬の主流からは外れた。 エルゴタミン製剤はトリプタン無効例など、投与すべき片頭痛患者は限られるが、片頭痛発作の初期に用いればある程度有効な薬剤である。 しかしトリプタンとは24時間併用禁忌なのでトリプタンを使う可能性のある例にはあえて処方しない。 鎮痛薬は片頭痛の初期に服用するとある程度の効果が期待されるが、片頭痛の極期には無効であるばかりか、消化管障害を惹起し、患者をかえって苦しめる結果となっていた。 消化管障害が少ないという点ではアセトアミノフェンが推奨される。 厚労省のガイドラインでは片頭痛の軽症例には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が勧められている。 アスピリンは小児の発熱時に使用するとライ症候群(脳症)を起こす可能性があるので小児には禁忌であり、アセトアミノフェン製剤が第一選択となる。 メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン、口腔内崩壊錠のドンペリドンなど)の胃蠕動亢進性制吐薬は、ドパミンD2 拮抗作用を有する。 単独の片頭痛治療薬としては、有効性は限られるが、片頭痛のつらい随伴症状である悪心・嘔吐には効果がある。 特にNSAIDs、エルゴタミンの併用薬として有用性がある。 制吐薬はつぎの三つの効用があり、片頭痛急性期治療において積極的に併用されるべきである。1. 頓挫薬の吸収を早め有効率を高める 2. 悪心・嘔吐を鎮める 3. 片頭痛の頓挫が期待できる。 頭痛の急患 を治療する場合、まずくも膜下出血など症候性頭痛との鑑別が急務である。片頭痛発作重積 では、静脈を確保し、水分・電解質の補給を行うとともに、制吐薬の非経口投与、鎮静剤、スマトリプタン皮下注射、コルチコステロイドなどを組み合わせる。重度の妊娠中 の片頭痛発作には、頓挫薬としてアセトアミノフェンが勧められる。 妊娠初期におけるトリプタンの安全性は確立していないが、有害事象の増加は報告されていない。 多くの片頭痛患者は妊娠中には片頭痛発作の頻度が減少するため、予防薬が必要となる患者は少ないが、必要な場合にはβ遮断薬があげられる。 授乳中 にトリプタンを使用しても24時間後には授乳が可能である。イミグランは「12時間」と明記さている。月経 周期に関連して起こる片頭痛発作にはトリプタン系薬剤が推奨される。月経時片頭痛の予防療法としては、期間を限定して予防薬を使用する。 トリプタンや消炎鎮痛薬を数日間服用する方法も報告されている。 ホルモン療法としては、エストラジオール投与の効果を示すエビデンスがある。 小児 の片頭痛の急性期治療には、イブプロフェンとアセトアミノフェンが効果的な頭痛薬である。トリプタンは他の方法で効果がない片頭痛発作に対して使用が考慮される。 小児片頭痛予防療法についてはエビデンスが乏しい。 Silberstein SD: Practice parameter: Evidence-based guidelines for migraine headache (an evidence-based review): Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology 55:754-762, 2000. 日本神経学会治療ガイドライン AdHoc委員会: 慢性頭痛治療ガイドライン2002. 臨床神経学 42:322-362, 2002. 鈴木則宏: 片頭痛の発生機序と新しい治療. 脳神経 52:287-295, 2000. 間中信也: トリプタンの使用経験. 脳と神経 ;56(9)739-745, 2004. 荒木信夫: 病態解明と治療の進歩、片頭痛. 日医雑誌 128:1620-1624, 2002. 国際頭痛学会(頭痛分類委員会)・厚生労働科学研究(慢性頭痛の診療ガイドラインに関する研究班): 国際頭痛分類第2版(ICHD-II). 日本頭痛学会雑誌 31:13-188, 2004. Burstein R, et al.: Analgesic triptan action in an animal model of intracranial pain: a race against the development of central sensitization. Ann Neurol 55:27-36, 2004. Cady RK, et al: Effect of early intervention with sumatriptan on migraine pain: retrospective analyses of data from three clinical trials. Clin Ther 22:1035-1048, 2000. Volans GN: The effect of metclopramide on the absorption of effervescent aspirin in migraine. Br J Clin Pharmacol 2:57-63, 1975. 鈴木則宏:片頭痛、発作予防薬. 脳の科学 23:495-505, 2001. 片頭痛の頓挫薬(NSAIDs、エルゴタミン、トリプタン)を連日のように3ヵ月を超えて服用すると薬物乱用頭痛を招きかえって頭痛がこじらせる。 片頭痛が慢性化したものを変容性片頭痛という。 これを防ぐには頓挫薬を月10日以内に抑えることである。 10日以上の頓挫薬服用を要する例には片頭痛予防薬を用いる。 予防療法を行うよう勧められる片頭痛には、片頭痛発作が月に 2 回以上ある患者で、次のような要件を満たす場合である。1. 急性期治療のみでは片頭痛発作による日常生活の支障がある場合、 2. 急性期治療薬が使用できない場合、 3. 永続的な神経障害をきたすおそれのある特殊な片頭痛。 これまで片頭痛予防薬には数十種類の薬剤が知られている。 なかでもエビデンスがあるのはアミトリプチリン(トリプタノール)、パルプロ酸(デパケン)、プロプラノロール(インデラル)であるが、これらはいずれも保険適応外である。 本邦ではカルシウム拮抗薬の塩酸ロメリジン(ミグシス・テラナス)が片頭痛に保険適応を取得しており、これが実質的に第一選択となる。 塩酸ロメリジンは1錠5mgを2~4錠分2で使用する。 2ヵ月間の投与の上で効果を判定する。 無効の場合はほかの予防薬の使用を考慮する。 β遮断薬(プロプラノロール)は30 mg/日から開始し30~60mg/日の用量とする。 バルプロ酸は500mg~600mg/日の内服が勧められる。 アミトリプチリンは低用量(10~20mg/日、就寝前)から開始し、効果を確認しながら漸増し10~60mg/日の投与が推奨されている。 バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)の公開 2011/5/9 バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)を公開しました (リンク先: http://jhsnet.org/bpgl_20110329.html) β遮断薬 プロプラノロール(インデラル )(有効率 51.6%)30~90mg/日 高血圧をもつ場合は第一選択。 抗うつ薬 塩酸イミプラミン(トフラニール) 抗コリン、遊離モノアミン再取込抑制 排尿困難、眼圧亢進、視調節障害、血圧異常、頻脈、不整脈、心筋梗塞、痙攣、幻覚、譫妄、精神錯乱、悪性症候群、ホルモン分泌異常など 抗セロトニン剤 メシル酸ジメトチアジン(ミグリステン )1錠20mg 60mg~90mg/日 塩酸シプロヘプタジン(ペリアクチン )1錠4mg、4~12mg/日 小児片頭痛によい。小児には0.3~0.5mg/kg. メチセルギド*(有効率 58.3%)本邦では入手不能 抗血小板凝集剤 麦角剤 メシル酸ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット )3mg/日 緩やかな血管収縮により、片頭痛を防ぐ。 発疹、掻痒、胃腸障薯、眠気、手指冷感、心悸亢進 禁忌:閉塞性血管障害、狭心症、冠動脈硬化 α作働薬 塩酸クロニジン(カタプレス) (有効率 40.9%)高血圧をもつ患者によい MAO阻害剤 本邦ではサフラ(小野)は発売中止。エフピー(塩酸セレギリン)が国内で唯一のMAO阻害型抗うつ薬である。赤ワイン、チーズなどチアミンを含む食品は不可) 文献:内科81:639,1998などから作成 ■ 長期予防について 片頭痛発作が1か月に2回以上ある場合、前兆がひどい場合、鎮痛薬を月10回以上服用する場合に適応となる。 予防的治療は少なくとも1ヵ月できれば3ヵ月は続ける。 第一選択は、塩酸ロメリジン(ミグシス・テラナス)2錠(⇒塩酸ロメリジン のページ参照) 以上で効果が不十分もしくは不適当な場合 緊張型頭痛(昔の筋収縮性頭痛タイプの)を伴う場合 不眠を伴う場合はデパス0.5を眠前分1、あるいはデジレル25 1錠分1やほかの睡眠導入薬を加える。 片頭痛の時間が長い、低血圧がひどくない患者はβ遮断薬 を使用。インデラルLA(60) 1錠 分1 頻度の多い片頭痛、うつ傾向、緊張型頭痛と合併する片頭痛の場合 トリプタノール(10) 1~2錠 眠前分1 50歳以降はSSRIのパキシル10 2錠分1(夕)(10mgから開始する)。 小児の片頭痛にはペリアクチン 1回4mg 1日1~3回、 シロップ:1日1~3回投与 1回投与量 2~3歳:3mL、4~6歳:4mL、7~9歳:5mL、10~12歳:6.5mL 上記でコントロールできない場合。緊張型頭痛合併例、脳波異常を伴う片頭痛 デパケンR(200) 2~3錠 分1~2(血中濃度が50~100μg/dlとなるよう) 若年者で低血圧が著明な場合はジヒデルゴット1 3錠 分3 を用いることもあります。 この場合は24時間トリプタン(イミグラン、ゾーミッグ、レルバックス)と併用できません。 塩酸ロメリジンとインデラルLAの併用は可能 漢方薬(⇒東洋医学診療部 )は効果を否定はしませんが、学長の経験が少ないため、標準的治療に加えておりません ■ 短期予防 頭痛発作が予期される場合(月経中、季節、週末、ストレスの多い時期)などに限って服用する。 あるいは原因がはっきりしている場合(スポーツ、買い物、会議) 塩酸ロメリジン(ミグシス・テラナス)2錠、3日~1週間服用 消炎鎮痛薬(例えばナイキサン)を2~3錠、3日~1週間程度(胃保護剤ムコスタなど併処) ■ 心覚え エルゴタミンを片頭痛の予防に用いるのはよくない(かえって頑固な頭痛を起こす) 一般に抗セロトニン剤は、食欲増進、肥満、脱毛のリスクもある。 β遮断薬はISA:内因性交感神経作動性のないものに片頭痛予防効果がある。 ワソラン、ヘルベッサーとβ遮断薬との併用は可能な限り避ける。非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるジルチアゼム(ヘルベッサー)やベラパミル(ワソラン)は 心抑制作用を有するため、β遮断薬(インデラルなど)との併用により著明な徐脈を来すこともある。 抗不安蘂(ペンゾジアゼピン)は、一時的な不安不眠に使用するのはよいが、片頭痛予防目的に長期連用するのは適当でない。 多くの二重盲検のデータをまとめて下記の有効率を示したもの。 Spierings/寺本純訳「片頭痛の治療」1997より。 プロプラノロール(インデラル) 55% 他のβブロッカー 50~70% アミトリプチリン(トリプタノール) 60% フルナリジン(フルナール) 50% ワソラン 50% バルプロ酸(デパケン) 55% クロニジン (カタプレス) 30% 実際の有効性は、推定プラシボ効果である20%が上積されている。 (参考)塩酸ロメリジン(ミグシス) 67% ワソラン 心伝導ブロック フルナリジン 、眠気、抑うつ、体重増加、パーキンソン症候群 インデラル 徐脈、低血圧 ジヒデルゴット 悪心・嘔吐、眠気 トリプタノール 口渇、ふらつき、めまい デパケン 肝障害、振戦、眠気、脱毛 ミグリステン 口渇、眠気、光線過敏症 カルシウム拮抗剤 カルシウム拮抗薬の主作用は Ca2+の細胞内への流入により生じる血管平滑筋収縮を抑制すること これが片頭痛の初期に起こる「血管収縮過程」を阻止する(神経内科45:107,1996) ミグシス 血管収縮抑制 拡延性抑制改善 血管透過性改善(神経原性炎症抑制) 血小板凝集抑制により5-HT2遮断 フルナリジン(フルナール) 拡延性抑制を抑制する 血管平滑筋に直接働き血管を拡張させる作用はない 血管脳関門を通過する。 神経伝達物質(dopamineやmet-enkephalinなど)遊離調節に働き 中枢神経系作用を発揮する (神経内科45:107,1996) フルナリジンは、 ドパミン、5-HT、ノルアドレナリンやヒスタミン受容体にも親和性をもつ. (内科81:639,1998) ベラパミル(ワソラン ) セロトニン受容体との親和性がある(5-HT2受容体拮抗作用) (神経内科45:107,1996)、(Peroutka1988)、(下村登規夫:片頭痛の発症機構・分子生物学と治療. 内科専門医会誌 1998;10:387-92)。 β遮断薬 作用機序は不明。経験的に予防効果が発見された。 一般的に 1. 血管拡張防止 2. エピネフリンによる抗血小板凝集作用 3. 血小板へのセロトニン取り込み阻害 4. 脳内セロトニン受容体に対する拮抗作用 プロプラノロール(インデラル) カテコールアミンが脂肪細胞のβ受容体に作用する段階で、 遊離脂肪酸放出を抑制して頭痛を起りにくくする。 抗セロトニン剤 血管に作用して疼痛閾値を下げP物質を放出する段階を抑える シプロヘプタジン メチセルギト 5HT2A、5HT2Cの拮抗剤。片頭痛発作予防に有効。 消炎鎮痛薬 アスピリン 血小板凝集を抑制することにより片頭痛を起りにくくする。 シクロゲナーゼを阻害してトロンボキサンA2産生を抑制する。これにより血管拡張を抑制する。 無菌性血管炎に関係するプロスタグランディンを抑制する。 抗不安薬 痛みと不安の悪循環[痛み→心配→不安→痛みの感受性亢進→痛み]を遮断する。 バルプロ酸 GABA-A受容体を介して、神経性炎症を抑制 詳しくは⇒バルプロ酸 三環系抗うつ薬 三環系抗うつ剤はセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害して、アミンの作用を高める 下行性抑制系の機能を賦活、鎮痛効果を発揮 下行性抑制系:延髄大縫線核(セロトニン作働性ニューロン)と橋外側被蓋のノルアドレナリン作働性ニューロン)→脊髄後角・三叉神経脊髄路核→痛覚伝達)を抑制 かくしてトリプタノールはうつ病と疼痛閾の上昇に役立つ。 トリプタノール 5HT2A、5HT2Cの拮抗剤である。 (以下は文献4より) 5HT2受容体遮断作用 5HT再取り込み抑制作用 (アミトリプチリン予防効果の実験的根拠)アミトリプチリンの低用量の慢性投与後のネズミ脳幹縫線核の中のセロトニン合成率の選択的な減少:抗片頭痛効果に対応する効果T Pringsheim, et al. Selective decrease in serotonin synthesis rate in rat brainstem raphe nuclei following chronic administration of low doses of amitriptyline: an effect compatible with an anti-migraine effect. Cephalalgia 2003;23(5):367 片頭痛と共存する疾患があるときにお勧めできる予防薬です。 高血圧/狭心症 β-遮断薬、カルシウム拮抗薬 うつ病/三環系抗うつ薬、SSRI 難治性うつ病/モノアミン酸化酵素阻害薬 躁病/divalproex sodium てんかん/divalproex sodium 不安/divalproex sodium、三環系抗うつ薬、SSRI、β-遮断薬 不眠、沈静/三環系抗うつ薬を鎮静している 関節炎/ 消炎鎮痛薬 喘息/カルシウムチャネル拮抗剤、divalproex sodium 以上、出典 Silberstein SD et al. Neurology 2000;55(Suppl 2):S46-S52 三環系抗うつ薬は抑うつ気分、不安、怒り、パニック発作、フラッシュバック、不眠、悪夢に プロプラノロールは恐怖や驚愕反応を伴う自律神経系の過活動 炭酸リチウムは悪夢、驚愕反応、自律神経系の過活動 抗不安薬は不安、悪夢 Medical Tribune[2005年4月14日 (VOL.38 NO.15) p.03] ■β遮断薬(交感神経系を抑制) ○パニック発作,振戦,高血圧,異常発汗 ×スポーツ選手,低血圧,レイノー病,筋有痛性攣縮,勃起障害 低血圧を悪化させることが少ないのはビソプロロール=メインテート ■Flunarizine ○拒食症,睡眠障害,てんかん ×過体重、倦怠感、抑うつ ■抗てんかん薬 バルプロ酸ナトリウム ガバペンチンは前兆を防ぐが,片頭痛そのものを予防する効果はない。 トピラメートはプロプラノロールと同等の効果がある 約50%の患者で手足の異常感覚が生じることに注意を要する。 その場合,この不愉快な副作用をなくすためにカリウム製剤が必要となる。 副作用(用量依存性) 健忘失語症もしくは知的機能障害 片頭痛の予防には,1 日50~100mgで十分である。 ■予防の適応 (1)月 3 回以上の片頭痛発作がある (2)急性期治療の副作用が強く,耐容できない (3)48時間以上発作が続く (4)片頭痛の発作が耐えられない (5)合併症のある片頭痛発作がある(局所神経症候が 7 日間以上続く) ■予防投与の継続 3 か月以上続ける 予防的投与を 9 ~12か月続けた後に,断薬を試みてもよい。 予防効果は長期間持続することがある。 ■予防失敗の原因 (1)誤診 (2)用量が正しくない(初期用量が多すぎる,または維持用量が低すぎる) (3)予防投与期間が短すぎる( 4 週間以下),あるいは逆に長すぎる( 9 か月以上) (4)副作用や効果発現までに時間がかかることについて患者への説明がない (5)非現実的な期待 (6)薬剤の誤った選択 ■行動療法などの非薬物治療 片頭痛の予防に効果があることが確認されている。 鍼療法により片頭痛発作が70%減少するとの報告もある ■生理中の片頭痛 (1)生理の 4 日前から 3 日後までナプロキセン500mg/回を 1 日 2 回 (2)ホルモンの量が減る時期にエストロゲンプラスター(100μg) (3)低用量のトリプタン系薬剤 スマトリプタン25mg/回を 1 日 2 回 naratriptane 1mgを 1 日 1 回 flovatriptane 2.5mg/回を1 日 2 回 Goadsby PJ, Fields HL:On the Functional Anatomy of Migraine. Ann Neurol 1998;43:272 片山宗一【編】臨床医のための片頭痛エッセンス―基礎から臨床まで。ライフ・サイエンス (2000-05-25出版) 濱田潤一・福内靖男.頭痛の最新治療とトリプタン系薬剤の位置付け. 医薬ジャーナル2000;36:3047-79 藤木直人、田代邦雄.片頭痛・群発頭痛の病態と新しい薬物療法:片頭痛の治療. 医薬ジャーナル2000;36:87-92. Codispoti JR et al. Efficacy of Nonprescription Doses of Ibuprofen for Treating Migraine Headache. A Randomized Controlled Trial. Headache 2001;41:665-79 Spierings/寺本純訳「片頭痛の治療」1997 山根 清美 発作時治療薬の使い方. 日本内科学会雑誌 2001;90:601-606 片頭痛総説 鈴木則宏:片頭痛、急性期治療(発作頓挫治療)。脳の科学、23:409-418,2001. 武井和夫・他.片頭痛 予防薬の使い方. 日本内科学会雑誌 2001;90:613-619.